「人生100年時代」を考える リタイア層と壮年層、意識の違いとは
1950年代、60歳前後だった平均寿命。それから70年弱が経とうとしているいま、男性は80歳を超え、女性は90歳に手が届こうかというところ。さらに、2050年には100歳以上の人口が現在の10倍になるという見方もあるなど、「人生100年」というのもあながち冗談ではなくなってきている。
いま、そうした人生の長期化に備えて企業が動くプロジェクトも多い。その1つが野村不動産と関電不動産開発が横浜市港北区で取り組む街のイノベーション計画「日吉大規模複合開発プロジェクト」(仮称)だ。
「理想的な人生を探求できる時代」を考える
「日吉大規模複合開発プロジェクト」は、総計画戸数として1320戸を擁し、2020年3月下旬以降の入居を予定している。公式ホームページでは物件のエントリーなども行う。
そして、このプロジェクトに関するニーズを調査し、アイデアを共創、発信するのが「人生100年時代を考えようLAB」(以下、100LAB)だ。「人生100年時代」の到来を「理想的な人生を探求できる時代」としており、有識者や企業、近隣にキャンパスを構える慶應義塾大学などの教育機関と議論をし、アイデアを集め、プロジェクトで行う次世代・多世代・多機能循環型の街づくりにかかる情報を提供する。
その情報提供の一環として、2018年5月17日に20〜60代以上の男女1000人を対象として行ったWEBアンケート調査(3月15日実施)の結果が発表された。
60代以上は期待膨らみ、40代は不安大きく
調査によると、「人生100年時代」の到来について、60代以上の男女では「新しい仕事や複数の仕事へチャレンジできるので期待」「柔軟に生きられそうなことに期待」があるとした人が60%前後となった。20〜50代の平均が45%前後であることを踏まえると、60代以上の男女は「人生100年時代」に対し、前向きに期待する声が相対的に多く上がっていることがわかる。
逆に、「柔軟に生きられるかどうか不安」「家族の面倒や介護の負担が増えそう」といった後ろ向きな不安が相対的に多くなったのが40代、とりわけ女性だ。この理由について100LABは、就職氷河期にあたる世代でもあることから、「非正規雇用などで雇用条件や生活が比較的厳しく、他の世代に比べると将来に希望を持ちにくい人が多い」と分析している。
そうした状況もあってか、他の項目での「不安」に関するヒアリングで、40代男女は「雇用環境」「医療環境」「住宅環境」への不安が大きく、教育環境や政府財政といったマクロな側面の不安は、他の世代と大きく変わらない結果となっている。
不安の有無がカギを握る
調査のまとめとして、「人生100年時代を考えようLAB」は60代以上について「ローンの返済も終え、年金収入も期待できる」ことから不安が少ないとしており、一方の30、40代については資産形成が難しいなかで、「ローン返済や子どもの育児・教育費も負担」「非正規雇用者の場合はより経済的な余裕が無くなる」うえ、「将来の年金収入も不透明」なことから不安が募っていると結論付けている。
将来に不安が募る30〜40代(画像はイメージ)
いずれにせよ、経済的に余裕があるかないかが「人生100年時代」への不安の有無のカギになっていることがうかがえる。目の前の生活に対する不安がどうにもならなければ、先の見通しが明るくならないのが実態としてあるのだろう。長生きであることを「リスク」だと感じさせないよう、何ができるのかを考えなくてはならない。