土地の所有者名や住所は通常、不動産登記簿などに書かれている。しかし、それらの所有者台帳を調べても、所有者が判明しない、あるいは連絡が取れない土地は「所有者不明土地」と呼ばれている。

例えば、登記名義人が死亡してからも数代にわたり相続登記がされておらず、相続人が多数存在しているのに、所在の探索が困難となっている土地があげられる。

そんな所有者不明の土地調査をめぐって、法務局の登記官に所有者を特定する調査権限を与える検討に入った、と報じられた。

そこでJタウンネット編集部は国土交通省土地・建設産業局に2018年5月28日、所有者不明土地の現状について聞いてみた。

所有者不明土地が多いと、どんなデメリットが?

James Hoさん撮影、Flickrより

国土交通省の「地籍調査における土地所有者等に関する調査」によると、2016年度時点で所有者不明土地は全体の20%(調査対象は地籍調査を実施した全国で、1130地区558市区町村の約62万筆)に及ぶという。「筆」とは土地の単位のことだ。

地籍調査とは、もともと土地の境界線を決める調査のことで、「所有者不明土地だけに絞った調査は行われていません」(担当者)。調査の一環として、隣の住民同士で立ち合いを求めるのだが、その通知はがきを送っても既に所有者が住んでいないなどの理由で返ってくることがあるそうだ。

所有者不明の土地が具体的にどれくらいの面積なのかは把握されていないが、現在の「全体の2割」は九州地方に匹敵すると見込まれており、将来的には北海道に匹敵するほど拡大するのではないかとされている。

所有者不明土地があると、不法投棄、土地の再開発利用が進まなくなる、といった問題が生じやすくなるという。

担当者は「所有者不明土地が原っぱのような場所だと、雑草が伸び続け、虫がわいたりごみが捨てられるなど不法投棄の温床となりやすくなります。また、住居が建てられなくなったり、土地の一部で起きると、再開発工事や土地開発利用がストップするといった問題も起きます」と説明した。

所有者の死後、相続人が地元を離れ...

そもそも、なぜ所有者不明の土地が生じてしまうのか。

「一般的に、地方の山間部で不明土地が多いと言われています。その理由として、土地の所有者が亡くなった後、その所有者の息子や孫が地元を離れたことで登記を済ませていない、といったケースが主な原因です」

現在、所有者不明の土地問題を解決しようとする「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」が国会で審議されている。18年3月に閣議決定された。

土地を借りたり買ったりするには、事前に所有者へ連絡をし、許可を得る必要がある。だが所有者がわからないと、土地活用がスムーズにできなくなっていた。今回の法案が通ると、公益性・公共性といった一定の条件をクリアすれば、各都道府県知事が利用権を設定し、土地を利用できるようになる。

担当者は「現在審議中の法案も含め、そもそも所有者不明土地が新たに発生しないように今後政府で検討していく予定です」と話した。