風が吹いただけでも痛い「痛風」 今から予防できること
執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
突然足の親指の付け根などの関節が赤く腫れ、激しい痛みに襲われるのが
「痛風」
の特徴です。
これは発作的に起こる症状で
「痛風発作」
ともいいます。
「痛風」は“風邪が吹いても痛い”ほどの激痛をともなうため「痛風」と呼ばれるようになったそうです。
どのような病気なのでしょうか?
痛風の症状
痛風の典型的な症状は、ある日突然関節に生じる痛みと腫れです。
もっとも痛風発作が起こりやすいのは足の指の付け根の関節です。
ほかに、足関節、足の甲、アキレス腱の付け根、膝関節、手関節などにも発症します。
また、耳の耳介に小さなコブ状の痛風結節ができたり、腎臓に尿路結石が生じたりすることもあります。
痛風発作の痛みは激烈で、足に生じると歩行困難になることさえあります。
痛風発作は夜間や明け方に起こることが多く、激しい痛みの後2〜3時間すると患部は赤く腫れます。
発作が始まってからおよそ24時間以内に痛みがピークに達します。
痛みや腫れは7〜10日ほどで引いて、治まると無症状になるという特徴もあります。
しかし、この無症状は痛風が治ったわけではないのです。
「間欠期」
と呼ばれ、放置すると次の発作につながりやがては慢性関節炎に移行していきます。
推計患者数は2013年には100万人を超え、増加の一途をたどっているとのこと。
圧倒的に男性の患者が多く、昔は年配の富裕層男性に多かったのですが、最近では20〜30代の若い男性も増えています。
痛風の前兆:前ぶれ症状
初めての痛風発作は、何の前ぶれもなく突然起こることが多いようです。
しかし、一度経験すると次の発作が起こる前に前兆を感じる人も多いといいます。
たとえば、関節がムズムズする、ピリピリする、しびれやほてり、どこかにぶつけたような鈍い痛みを感じるなどの違和感です。
前ぶれの現れ方は個人差があるものの、この段階で対処ができれば重症化せずに済むことも多いのです。
原因となる物質:尿酸
痛風の関節炎などを生じさせる原因は、体内に蓄積された
尿酸
の結晶です。
尿酸は
プリン体
が体内で分解されてできる「燃えカス」です。
プリン体は運動や新陳代謝の過程で、体内で作られたり食品から取り込まれたりします。
肝臓で分解されて尿酸となり、一時的に体内に溜め込まれた後、通常は便や尿で排泄されます。
1日に体内で約700mgの尿酸が作られ、700mgが排泄されています。
尿酸は体内で一定量溜められていて、これを
「尿酸プール」
(体内に溜めている尿酸の総量)といい、健康な成人男性の場合約1,200mgです。
しかし、この尿酸プールが溢れてしまった状態が
「高尿酸血症」
で、痛風の原因になるのです。
数値で見ると、血液中の尿酸値(血清尿酸値)が7.0mg/dL以上になると高尿酸血症と診断されます。
また、腎臓から尿酸を排泄する機能が弱い人は尿酸値が上がりやすく、痛風になりやすいこともわかってきました。
さらに、次のような要因も尿酸値を上げやすいと指摘されています。
肉や魚介類をたくさん食べる:痛風は大食いの人に多く、患者の60%が肥満
アルコールを好む
激しい運動を好む:とくに短距離走や筋トレなど短時間に強い負荷をかける無酸素運動
精神的ストレス:食べたり飲んだりしてストレス解消するケースに多い可能性がある
腎臓病、悪性腫瘍、利尿剤や抗結核薬や免疫抑制剤など薬剤の影響
痛風の治療について
痛風発作が起こったときは、消炎鎮痛薬を用いたり、局所麻酔剤入ステロイドを関節に注入したりするなどして、薬物療法で患部の痛みや腫れを取り除く治療をします。
そして、発作が治まった後は、慢性化を防ぐため尿酸値をコントロールする薬の長期的な服用が必要です。
さらに、前述の前兆症状には、炎症反応を抑える「コルヒチン」という薬が有効とされています。
痛風予防のポイント
次のようなことに気をつけましょう。
肥満を解消する:とくに内臓脂肪型肥満(メタボ)は、リスクが高くなる
軽い運動習慣:激しい無酸素運動は尿酸値を高めることがあるので軽めの有酸素運動がおすすめ
アルコール飲料の飲み過ぎを止める:とくにプリンタ体を多く含むビールは要注意。また、ビールを焼酎に変えるといった対処も、飲み過ぎには注意が必要
水分補給を十分にして腎臓のはたらきを万全にしておく:尿量を増やして尿酸を排泄する。ただし、甘い飲み物は尿酸値を高めるので、水やお茶を推奨
ストレス解消にやけ食い・やけ飲みをしない
また、次のような調査結果も報告されています。
コーヒーの摂取量が多いと痛風になりにくくなる
乳製品の摂取量が多いと痛風発症のリスクが下がる
ランニング距離が長いと発症リスクが下がる
アルカリ性食品の摂取は尿酸の排泄に有効(海藻類、野菜類、イモ類、果物類、大豆、キノコなど)
痛風の治療は、内科で診察を受け必要に応じて痛風外来やリウマチ科などを受診していくことがすすめられています。
関節などの炎症の場合は整形外科の受診が良いでしょう。
「痛風」は近年若年層や女性にも増えているといいます。
若いから、女性だから大丈夫…というこれまでの傾向に捉われず、食生活を中心にライフスタイルを見直してみましょう。
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供