SLIDE SHOW FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN FULL SCREEN 1/14パイロットが「ツポレフ Tu-154」のエンジンカヴァーを外している。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 2/14する仕事がない搭乗員は外の景色を眺めている。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 3/14平壌国際空港には、「イリューシン IL-62」と「ツポレフ Tu-154」の前に金日成主席と金正日総書記が立つ様子を描いたモニュメントがある。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 4/14パイロットたちが「イリューシン IL-76」に乗り込む様子。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 5/14客室乗務員が「イリューシン IL-62」のファーストクラスの通路を歩いている。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 6/14パイロットがフライト前のチェックをしている。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 7/14「ツポレフ Tu-134」のコックピットにいるパイロット。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 8/14パイロットたちが「イリューシン IL-76」に搭乗する準備をしている。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 9/14ヘリコプター「ミル Mi-17」のキャビンは花柄のカーペットで飾られている。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 10/14メビウスのことを撮影してくれたパイロット。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 11/14平壌国際空港から葛麻(カルマ)新国際空港までのフライト後、「ツポレフ Tu-154」のエンジンカヴァーの点検をするパイロットたち。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 12/14「ツポレフ Tu-134」のフライト中、フロントキャビンから振り返ったキャビンアテンダント。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 13/14高麗航空の40周年を記念し、平壌のパーティで歌う客室乗務員たち。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS 14/14「ツポレフ Tu-134」の窓から眺める、平壌国際空港に止まっている「ツポレフ Tu-154」。PHOTOGRAPH BY ARTHUR MEBIUS Prev Next

北朝鮮は、核爆弾の開発[日本語版記事]や、破壊的なサイバー攻撃[日本語版記事]、さらにはミサイル発射[日本語版記事]ができる技術力をもつ。しかし航空路線については、冷戦時代のロシア機に大きく依存しないと維持ができないようだ。

「旧ソ連のヴィンテージ機が飛ぶ北朝鮮の空の旅──それは飛行機ファンにとっての「天国」だった」の写真・リンク付きの記事はこちら

高麗(コリョ)航空の航空機は、レトロを極めているという意味ではクールだし、遊覧飛行を楽しむ熱心な航空マニアたちもいる。「本当に美しい。機内は当時のままなんです」と、アーサー・メビウスは語る。

国営の高麗航空は1950年、平壌・モスクワ間で運航を開始した。ソ連が崩壊すると、制裁と資金不足で新しい飛行機をあまり買えなくなった。いまの飛行機は金正恩のお気に入りである「イリューシン62」を含む総勢15機。2006年には安全性とメンテナンス面の懸念から欧州で運航が禁止され、バンコク便、クアラルンプール便、クウェート便も16年に終了した。しかし、中国とロシアにはまだ定期便がある。

大半の飛行機が1960年代製で(「ツポレフTu-204-300」など、比較的新しい機種も数機ある)、サーヴィスが不安定で、食べ物もひどい。高麗航空を「1つ星航空」と呼ぶ声があるのもわかる。しかし、メビウスのような飛行機旅行の愛好家たちは、高麗航空でのフライトを空の旅の黄金時代を思い起こさせるものとしてとらえている。

ミステリアスな飛行体験

メビウスは15年に高麗航空のヴィンテージ機について知り、英国にある北朝鮮旅行の代理店チュチェ・トラヴェルを通じて1,600ドルのツアーを予約した。アムステルダムから北京に飛び、高麗航空の平壌便に乗り換えた。彼はこの旅をとても気に入り、それから2回リピートした。

これまでにメビウスは10種類の航空機で24回飛んだが、大半は客がほとんどいなかった。遊覧飛行は1回約200ドル。ときおり観光があるが、名物となるのはなんといっても飛行機そのもので、離陸だけでもなかなかの見ものだ。

バイロットが飛行前のルーティンとしてタイヤをつついて膨らみを確認する。旧式の制服を着た客室乗務員たちが、乗客を案内する。そしてついに、耳をつんざくような轟音とともにエンジンが動き始める。「ちょっと怖いくらいです」とメビウスは述べる。「音。旧式のデザイン。この不思議な共産主義国。そのなかで“パーティー”が始まるんです」

離陸後、メビウスはカメラ「FUJIFILM X100T」を持って機内を歩き回る。搭乗員に写真撮影の許可を求めるのは、自然なショットを撮影できなくなるのでやめてしまった。「北朝鮮の人たちにとって、いい写真というのは、カメラをじっと見ている写真、ポーズをとって誇らしげな写真、カメラを意識した写真なのです」と彼は語る。「もちろん、わたしが撮りたいのはそういった写真ではありません」

太陽の下で撮影されたメビウスの静謐な写真は、まるで何十年も前に撮影されているかのようだ。それは、もともと過去からやってきたかのようなこの国のミステリアスな雰囲気を、さらに強めている。

なお、メビウスの一連の写真は2017年6月20日に写真集『Dear Sky』として発売されている。

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