世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第260回 東京都とシンガポール
シンガポールの人口1人当たりのGDPは、2016年の数値で約5万2000ドル。日本国民1人当たりのGDP('16年の数値で約3万9000ドル)を上回っている。
GDPとは、その国の国内の生産の合計(=国民総生産)である。とはいえ、所得創出のプロセスにおいて、われわれ国民が、
「モノやサービスを『生産』し、誰かがモノやサービスに『支出』し、『所得』が創出される」
以上、生産、支出、所得の3つは必ずイコールになる。GDP、国内総生産は確かに国内の「生産」の合計だ。もっとも、生産、支出、所得がイコールになるため、実はGDPとは「生産の合計」であり、同時に「支出の合計」「所得の合計」でもあるのだ。
内閣府は、国民経済計算として「生産面のGDP」「支出面のGDP」そして「(所得の)分配面のGDP」と、3つの「面」のGDPを公表する。3つのGDPの面は必ず総額が一致する。これを「GDP三面等価の原則」と呼ぶ。1人当たりのGDPとは「1人当たりの所得」をも意味するのだ。
シンガポールの国民1人当たりのGDPが日本を上回っているということは、
「国民1人当たりで稼ぎ出すGDPが、シンガポールは日本よりも大きい」
という話になる。
ということは、シンガポール国民は日本国民よりも豊かなのか。話は、それほど単純ではない。
実は、東京都のGDPは'16年の数値で94兆3667億円。同年の東京都の人口が約1351万人であるため、1人当たりでは約6万3512ドル(1ドル=110円で計算)。東京都に限ると、1人当たりのGDPはシンガポールを上回るのである。
東京都とシンガポールは、実によく似ている。人口が「外」から流入し続け、膨張する人口を活用し、主に「サービス産業」で経済成長を遂げた。サービス産業とは、農業、鉱業、製造業以外の産業を意味する。小売、卸売、飲食、不動産、金融、保険、医療、介護、運送、教育、観光などに加え、実は土木業、建設業もサービス産業に含まれる。
東京都のGDPを「生産」で見ると、製造業が占める割合は6%。日本全体で見ると、製造業がGDPに占める割合は21%。東京都の製造業が全体に占める割合は、著しく低い。東京が「サービス業」中心の経済を成り立たせていることが、理解できるだろう。
サービス業には、製造業とは異なる特徴が複数ある。具体的には「生産と消費が同時に行われる」「在庫や運送が不可能」などだ。例えば、東京ディズニーランドやディズニーシーが提供してくれる「エンターテインメント」のサービスは、舞浜以外で消費することはできない。無論、サービスを在庫し、運送することも不可能だ。
別の見方をすると、サービス産業中心で経済成長を達成したいならば、人口が集中していればいるほど都合がよいという話になる。何しろ、日本の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は人口3700万人を超す、世界最大のメガロポリスである。人口が膨張し、東京都、あるいは東京圏は、「人口が集中している」ことでメリットを受けるサービス産業を中心に繁栄した。
シンガポールも同じなのである。実は、シンガポール国民の合計特殊出生率は、1.2台前半と、日本よりも低い。シンガポールは日本以上に少子化が進行している。それにも関わらず、「人口が集中している」ことが望ましいサービス産業を中心に成長している。なぜなのだろうか。もちろん、シンガポールには「移民」という形で、外国人が流入し続けているためだ。すでに、シンガポールの移民人口比率は4割を超えている。
「外」から人々が流入し続け、サービス産業中心に経済成長を遂げている。ここまでは、東京都とシンガポールは、まるで双子のように似ている。
とはいえ、東京都とシンガポールには二つ、決定的な差異があるわけだ。
GDPとは、その国の国内の生産の合計(=国民総生産)である。とはいえ、所得創出のプロセスにおいて、われわれ国民が、
「モノやサービスを『生産』し、誰かがモノやサービスに『支出』し、『所得』が創出される」
以上、生産、支出、所得の3つは必ずイコールになる。GDP、国内総生産は確かに国内の「生産」の合計だ。もっとも、生産、支出、所得がイコールになるため、実はGDPとは「生産の合計」であり、同時に「支出の合計」「所得の合計」でもあるのだ。
内閣府は、国民経済計算として「生産面のGDP」「支出面のGDP」そして「(所得の)分配面のGDP」と、3つの「面」のGDPを公表する。3つのGDPの面は必ず総額が一致する。これを「GDP三面等価の原則」と呼ぶ。1人当たりのGDPとは「1人当たりの所得」をも意味するのだ。
「国民1人当たりで稼ぎ出すGDPが、シンガポールは日本よりも大きい」
という話になる。
ということは、シンガポール国民は日本国民よりも豊かなのか。話は、それほど単純ではない。
実は、東京都のGDPは'16年の数値で94兆3667億円。同年の東京都の人口が約1351万人であるため、1人当たりでは約6万3512ドル(1ドル=110円で計算)。東京都に限ると、1人当たりのGDPはシンガポールを上回るのである。
東京都とシンガポールは、実によく似ている。人口が「外」から流入し続け、膨張する人口を活用し、主に「サービス産業」で経済成長を遂げた。サービス産業とは、農業、鉱業、製造業以外の産業を意味する。小売、卸売、飲食、不動産、金融、保険、医療、介護、運送、教育、観光などに加え、実は土木業、建設業もサービス産業に含まれる。
東京都のGDPを「生産」で見ると、製造業が占める割合は6%。日本全体で見ると、製造業がGDPに占める割合は21%。東京都の製造業が全体に占める割合は、著しく低い。東京が「サービス業」中心の経済を成り立たせていることが、理解できるだろう。
サービス業には、製造業とは異なる特徴が複数ある。具体的には「生産と消費が同時に行われる」「在庫や運送が不可能」などだ。例えば、東京ディズニーランドやディズニーシーが提供してくれる「エンターテインメント」のサービスは、舞浜以外で消費することはできない。無論、サービスを在庫し、運送することも不可能だ。
別の見方をすると、サービス産業中心で経済成長を達成したいならば、人口が集中していればいるほど都合がよいという話になる。何しろ、日本の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は人口3700万人を超す、世界最大のメガロポリスである。人口が膨張し、東京都、あるいは東京圏は、「人口が集中している」ことでメリットを受けるサービス産業を中心に繁栄した。
シンガポールも同じなのである。実は、シンガポール国民の合計特殊出生率は、1.2台前半と、日本よりも低い。シンガポールは日本以上に少子化が進行している。それにも関わらず、「人口が集中している」ことが望ましいサービス産業を中心に成長している。なぜなのだろうか。もちろん、シンガポールには「移民」という形で、外国人が流入し続けているためだ。すでに、シンガポールの移民人口比率は4割を超えている。
「外」から人々が流入し続け、サービス産業中心に経済成長を遂げている。ここまでは、東京都とシンガポールは、まるで双子のように似ている。
とはいえ、東京都とシンガポールには二つ、決定的な差異があるわけだ。