ほっともっとは今2018年2月期に入ってから、既存店売上高の前年割れが続いている(編集部撮影)

持ち帰り弁当チェーン「ほっともっと」を全国展開するプレナスが、出店戦略の見直しを迫られている。

同社は今2018年2月期において、ほっともっとの新規出店を年間206店舗とする計画を期初に描いていた。だが、もくろみどおりには出店が進まず、上半期末に当たる2017年8月末時点で、期初計画の半分以下となる年間102店舗に下方修正。同年12月末時点で74出店にとどまっている。年間ベースで修正計画を超えられるか微妙なところだ。

退店についても、期初では年間15店舗を計画していたものの、上半期末時点で年間29店舗に見直した。ただ、昨年末時点での退店数は33店舗となり、すでに修正計画を超過している状況だ。

小型店の出店を加速するはずが・・・

近年、プレナスはほっともっと不採算店舗の整理を優先してきた。2016年2月期は出店64、退店106。続く2017年2月期も出店56、退店91と、出店数を退店数が上回っていた。店舗整理をほとんど終えたと判断した同社は、今期に入って再び積極出店へとアクセルを踏み込むはずだった。

注力しようとしていたのが、「Mタイプ」と称する小型店だ。通常店舗が24〜25坪であるのに対し、Mタイプ店は19〜20坪程度。少人数での店舗運営が可能で損益分岐点が低い。そのため、売り上げが拡大すれば全体の収益性を向上させることができる。

ところが、この小型店は「ちょうどよい坪数の物件が、なかなか見つからない」(プレナスのIR担当者)。閉鎖されたコンビニエンスストアの跡地を狙ってみたものの、そういった物件は競争が厳しく、他社の手に渡ってしまう。少し広めの物件でコインランドリー業者などとの共同出店を模索したが、うまくいかなかった。

2017年10月に行われた上半期決算説明会の席上、プレナスの一條眞理執行役員は「マーケットを見極めるなど出店の精度を上げようとして、動きだしが遅れてしまった。利益を出せる立地に出店することが重要」と、立地選別の厳格化を強調していた。だが、ある社内関係者は「当初計画が過大だった」と、そもそもの見通しが甘かったことを認める。

プレナスは2020年にほっともっとの店舗数を3000店舗(現状約2700店舗)にする中期計画を掲げている。今期の出店動向に加え、「毎年50店前後の退店が自然に出てくる」(一條執行役員)ことを考慮すると、計画達成はハードルが高いように見える。

この出店計画の遅れは、成長戦略の根幹が揺らぐことを意味する。プレナスは約80億円を投資し、埼玉県北葛飾郡に建物面積約8500平方メートルもの大型工場を建設中。物流センターを併設し、ほっともっとなどの商材を生産・供給する戦略工場で、2018年12月のフル稼働を目指す。2017年8月には、顧客データと店頭の購買データを分析できるシステム「ID-POS」をほっともっと全店に導入するなど、店舗への投資も進めてきた。

競争が激化する中食市場

こうした新工場や店頭システムへの投資をテコに、製販一体となったサプライチェーンマネジメントを構築し、「製造小売りチェーン」への転換を図る構えだ。ただ、この中期構想は、あくまでも積極出店によるスケールメリットの発現を前提としたものだ。


ほっともっとと同じグループの定食店「やよい軒」も苦戦が続いている(編集部撮影)

プレナスは足元の業績も降下している。今2018年2月期は増収増益を見込んでいたが、1月12日に通期計画の下方修正を発表。売上高1466億円(前期比4%増)、営業利益54億円(前期比24%減)と、一転して減益となる見通しだ。

ほっともっとに加え、同じグループの定食店「やよい軒」の既存店売上高も前期割れする公算が大きい。コメなど食材の価格高騰や人件費上昇も響く。

新店計画の遅れや業績悪化の背景には、競争の激化がある。弁当などの中食市場が拡大する中で、コンビニやスーパー、ドラッグストアなどは「持ち帰り需要」を狙った商材を拡充している。「高級商材を扱っている中食企業ならば差別化を図れるが、プレナスの弁当の価格帯だと、コンビニとまともにバッティングする」と、競合の中食チェーンの幹部は語る。

状況は厳しさを増しているにもかかわらず、「プレナスはコンビニなど他社の動きを注視していなかった」(前出の社内関係者)との指摘もある。新勢力の台頭といった外部環境の変化を再吟味し、早期に店舗戦略を練り直す必要がありそうだ。