川又堅碁(中央)と小林悠(左)(撮影:岸本勉/PICSPORT)

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2015年、川又堅碁は失意の中で東アジアカップの会場、中国・広州のスタジアムを後にした。3試合で135分プレーし、ノーゴール。寄ってくる記者は数人だけ。その中で川又は悔しそうに口にしていた。

「期待に応えられなかったというのが今回だったと思います。もうちょっとやらなければいけなかった。ボールをもらう角度なんかをうまくやって、起点になってから裏に抜けるという、連動した動きをやりたいと思います。もっとパワー付けて、また一からやり直します」

それから2年が経ちE-1選手権に名前が変わった大会の初戦、71分に登場した川又はムードを一変させた。攻守に走り回り、泥臭く身体を張った。すると90+3分、川又の上げたクロスが今野泰幸につながり、井手口陽介のシュートを生んだのだ。2年前の元気のない姿はすっかり消えていた。

川又は2年前、記者たちの前で見せた苦悩を忘れていないと言う。

「落ち着いてプレーできるようになったんじゃない? いろんな面で。あのあと名古屋に帰ってトゥさん(田中マルクス闘莉王)に教えてもらったり、周りの人に球出しをしてもらったり、磐田では名波浩監督やシュン(中村俊輔)さんに教えてもらったり、コーチについてもらったり、そういうのが出ました」

「でも、それがたまたま今日出たのかもしれないです。(課題は)意識してやってたし、多少なりとも今日は出来たけど、やっぱりゴールです。FWはゴールしないと意味ないから」

「もう2年前のあんな悔しい思いをしたくないし。正直、メッチャ悔しかったからね。それから呼ばれない時期も長かったし」

だが、ゴールで目立とうと思うのなら、誰かにクロスを上げてもらって今野がいたポジションを自分が占めておくのが得策だ。

「あれはあれでよかったと思います。あそこにしかスペースがなかったから。クロスも自分のイメージとしては完ぺきやったし、今ちゃん(今野)に合わせたのも完ぺきやったし、そこからゴールが生まれたのもよかったし。ただ、おれのゴールがほしい。それでも、『オレが、オレが』にならないで、チームが勝てるゴールを取りたいです」

川又はそこまで真剣に語ると、最後は「いい感じ(のコメント)でしょ?」と言ってメディアを笑わせ、歩いて行った。川又にとって2年前を振り切った瞬間になったはずだ。

【日本蹴球合同会社/森雅史】