アベノミクス相場は、いよいよ「最終局面」か
大義なき選挙でも「勝ちは勝ち」となるのか。問題は選挙後のマーケットだ(2014年の衆院総選挙にて 撮影:尾形文繁)
「大義」がなくても、選挙は権力を懸けた政権の勝負
9月20日ごろから「解散風」が吹き荒れて止まらなくなった。臨時国会は9月28日(木)に召集されるが、このままだと10月22日(日)投票で総選挙が行われる可能性が極めて大きい。臨時国会の冒頭に、施政方針演説も行わずに解散する予定だと報じられている。
「解散があるならこの日程であり、選挙の準備が必要だ」という話は8月中旬にある野党議員さんから聞いていたので、個人的に違和感はないのだが、たった1カ月の間に情勢は一変した。
8月中は、森友学園問題、加計学園問題、稲田朋美前防衛相の辞任など、「安倍晋三首相の資質」が問題視されるような事柄に注目が集まり、内閣支持率が低下。小池百合子東京都知事周辺の勢力の国政参入の可能性に注目が集まり、解散すると、与党は相当に議席を減らす可能性があるのではないかというムードがあった。
ところが、9月に入って、民進党が代表選後の人事でつまずき、小池氏に近い新党設立の動きが案外鈍く、おそらくは北朝鮮のミサイルも後押しとなって、安倍内閣の支持率が持ち直してきた。
もともと、小池新党が批判票の本格的受け皿となることを警戒して早めの解散が予想されていたところに加えて、最大野党の民進党ががたがたの状況で、野党側の弱体化を見て、ここをチャンスとばかりに解散を決めたように見える。
政策として何を問う解散なのか、解散の「大義」がないとの批判の声もあるが、選挙は権力を懸けた政権の勝負であり、勝てそうなときに勝負することが悪いとはいえない。現状の野党では、大義がないことの批判の受け皿にすらなれそうにない。今後、解散が決まると、当落予想が出てくるだろうが、現在の情勢では、与党は大きくは負けそうにない。
マーケットも、安倍首相にとって好都合に動いている。
9月20日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会。FRB=米連邦準備制度理事会の「金融政策決定会合」)では、年内利上げの見通しが維持された。10月からのFRBの保有資産縮小開始(保有する国債等を減らす)といった金融引き締め方向のニュアンスが為替市場ではドル高をもたらし、他方、今後の利上げスピードはかなりゆっくりではないかとの見方が優勢だ。その結果、米国の株価はNYダウで最高値を連日更新、日経平均も再び2万円台に乗せている。筆者は、FRBのジャネット・イエレン議長の顔がフクロウに似ていると思えて仕方がないのだが、タカ(金融引き締め派)でもハト(金融緩和派)でもない、両方の顔の使い分けが今のところうまくいっている。
投資家にとっては、解散総選挙がマーケットにどう影響するかが気になるところだが、仮に、「少々議席を減らすとしても与党の勝ち」という予想を前提とすると、8月の時点で恐れていた、安倍内閣退陣で来年の日銀総裁人事が不透明化する、マーケットが最も懸念する事態は避けられそうだ。
不気味な東証REIT指数の下落は何を意味するのか
ただし、この場合、選挙で与党が勝ったときが、市場にとって「世界が最も明るく見える瞬間」になるのではないだろうか。
その後に具体的な悪材料はいまだ見えないものの、長年続いた「アベノミクス相場」が選挙の前後に一段落をつける可能性が小さくないように思える。
筆者には、年初の水準から約10%も下げている東証REIT指数の動きが不気味に見える。不動産市場では、外国人投資家を含む機敏な投資家は、すでにポジション縮小に向けて静かに動いているのではなかろうか。
もっとも、筆者は、大規模なバブル崩壊のような事態を懸念しているのではない。株式市場でいう「調整」(株式関係者は、株価は上がるのが正常だとの期待を込めて、下げ局面を「調整」と呼ぶ習わしだ)が遠からずあるのではないかと心配しているにすぎない。
リスク資産を持ちすぎているのでなければ、長期で資産形成を目指している投資家は、動くに及ばない。
それにしても、来るべき総選挙の「争点」が見えにくい。
安倍政権の半ば官報ともいうべき読売新聞の報道を読むと、与党側は、消費税の増税分を財政再建に充てるのではなく、教育費・育児支援などに使う、「増税分の使途変更」を前面に出そうとしているらしい。
一方、前原誠司新代表が率いる民進党も、消費税率を引き上げることを前提として、これを社会保障的な支出の拡大に充てることを主張しており、はっきり言って両者の区別は難しい。有権者としては、気乗りのしない、「食えない選挙」だ。
消費税率2%の増税分は約5兆円になるが、これが財政再建に回ると総需要の減少につながるので、デフレ脱却のためには、何らかの支出拡大が行われて需要がサポートされることが望ましい。それが、教育や介護に回るのであっても支出が十分拡大されるのなら、増税の悪影響は相殺される理屈ではある。
しかし、増税が直ちに消費者に響き、一方、さまざまな支出の決定と実行が官僚組織に任されて時間的に遅れることや、財務省による予算の削り込みなどがあることを考えると、「消費増税分を財政再建に充てない」という政治家の声の信頼度には、相当に大きな「割引」が必要だろう。
「リカレント教育」が中途半端にならないためには?
ところで、政府は「人生100年時代構想会議」なるものを立ち上げて、長寿時代への対応をテーマにしようとしている。9月11日(月)には、話題作『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)著者であるリンダ・グラットン氏などを委員に招いて第1回の会合を開いた。同会議のホームページで、グラットン氏のプレゼンテーション資料を見ると、2007年に生まれた日本人の平均寿命は107歳になるのではないかという試算が載っていた。
長寿化自体は結構なことだし、個人も社会もそのための準備が必要だ。政府関係者の資料を見ると、キーワードは「リカレント教育」らしい。社会人なども対象とした生涯学習のことを指すが、社会人向けの大学・大学院の充実など、高等教育の拡大に力を入れようとしているように見える。
教育投資の費用対効果でいうと、幼少期の教育のほうが、高等教育よりも費用対効果が高いという意見が一般的であり、優先度にはやや疑問があるが、教育に費用をかけるのは社会としてはいいことだろう。
ただ、今の大学の教師や教育内容をそのままに、社会人向けに間口を広げても、公費補助付きのカルチャーセンターのような中途半端なものが出来上がりそうだ。消費税の増税分が、そのようなものに使われるのだとすると、少々冴えない展開である。法科大学院の多くが廃校に向かう中、司法試験予備校が気を吐いているように、教育も補助金付きではない、民間の活力に任せたらいいのではないかと思う次第だ。
天高く馬肥ゆる秋。秋競馬が徐々に本格化してきた。
この週末は東西でいいメンバーの重賞が行われる。特に、一口馬主サークルのキャロットクラブの会員は、そわそわしている方が多いのではないか。東の中山競馬場オールカマーにはルージュバック、ステファノス、西の阪神競馬場の神戸新聞杯には今年のダービー馬レイデオロと、いずれも同クラブの所有馬が出走。どれも有力な勝ち馬候補である。
オールカマーの本命はステファノスで
さて当欄の予想では、東の「産経賞オールカマー」(9月24日、中山競馬場11R、G2)を取り上げよう。
2014年の富士ステークス(G3)勝ち以来、なかなか勝ちきれないステファノスだが、今回はチャンスではないか。地力は十分あり、春の大阪杯(G1)では、あのキタサンブラックに惜敗の2着だった。多頭数で馬群をさばけるかどうかの問題はあるが、共にお手馬のルージュバックとの選択で、こちらを選んだ戸崎圭太騎手を素直に信用することにしよう。
対抗は、長距離の実績が豊富なアルバートを採る。休養明けもよく走る。
ルージュバックは、エリザベス女王杯(11月12日、京都競馬場11R、G1)が狙いだと思われるが、「元天才少女」であり、驚異的な瞬発力を発揮することがあるので、単穴からは落とせない。
連下には、かんべえ先生(吉崎達彦さん)が「中山ではステイゴールド産駒」とおっしゃっていることでもあり、マイネルミラノとツクバアズマオーを選んだ。両馬とも馬券に絡む力は十分持っている。