メカニカルで低背なキーボードを衝動買いしたら、20年近く使ったキーボードから乗り換えていいと思った件
テンキーレスのノーマル配列でメカニカルスイッチというのは数多くありますが、薄くて浅めのキーストロークとなればレア。こんなキーボードを見つけてしまったため、衝動買いしました。PCを長年使っている人であれば、多かれ少なかれ、キーボードに一家言あるのが普通です。自分の場合は20年近く、「FKB1420」というシリーズの製品を使ってきました。これはキーピッチ15mm、キーストローク1.5mm、ノーマルなキー配置と配列、テンキー装備という、かなり特殊な製品です。

手をほとんど動かさずにEscやBackSpaceが押せるため、原稿を書くのに非常に便利で、気づくと他のキーボードが使えなくなっていました。作りは安いメンブレンと変わらないのですが、適度なクリック感があることと、キーの引っかかりがほぼなく、素直に押せることから打鍵感がよく、かなり快適に使えていました。

▲最初に使い始めたのは、Windowsキーがない時代。フルキーボードをそのまま小さくしただけというトコロに惚れ込みました。古いので、一部黄変しちゃってます。

最初の3枚はどれも素晴らしいものだったのですが、4枚目は微妙にキーのブレが大きいのか、たまに引っかかるような感触があることに気づきました。さらに、クリック感が少し弱くなってるようで、グニャっとした感触にも違和感が。4枚目とはいえ購入時期は10年以上も違うので、素材が変わっているのかもしれません。そのうち慣れるだろうとしばらく使っていたのですが......。結局、この違和感が更に大きくなっただけで、ちっとも慣れませんでした。

新しいロットなら違和感がなくなるかもという淡い期待で買い直そうかとも考えましたが、実はこのキーボード、1万円くらいするので気軽に買えません。これで打鍵感が戻ってなかったら泣くに泣けない。それなら、思い切って新しいキーボードを探したほうがいいのではないだろうかということで、しばらく前から良さそうなものがないか、ちょこちょこ探していました。

ですが、そもそもキーピッチ15mmという製品がありません。近い製品といえばノートPCのキーボードに似たミニキーボードがありますが、キーによってサイズがバラバラなうえ、配置も配列も変なものばかり。普通のフルキーボードを小さくしただけでいいのに......。ミニキーボードもいくつか試してみましたが、カーソルキーを多用する自分にとって、キーが詰め込まれているキーボードは結局使い物になりませんでした。

偶然見つけたキーボードを衝動買いしてみた


その後、「理想のキーボードがなければ作ればいいじゃないか」という、斜め方向の結論に達しました。パンタグラフはイチから自作しないとダメそうなので却下。作るならメカニカルスイッチを使ったものだろうということまでは決めたのですが、定番のCherry MXスイッチはサイズが大きく、キーピッチを小さくできません。また、長年浅いキーストロークの製品を使ってきた身としては、MXのストロークは深すぎます。

実はCherryのスイッチにはMLという、少し小さめでストロークが浅い製品もあるのです。このスイッチを採用したキーボードもあるのは知ってたのですが、いわゆるミニキーボードで配置が特殊。これは欲しいものではありません。



▲左がMLで、右がMX。MLは小さくて背が低いのが特徴。ミニキーボードで使えるサイズです。詳しいデータはこちらからどうぞ。



▲Cherry純正のMLスイッチを使ったミニキーボード「G84-4100」。これでもメカニカルキーボードだということには驚きますが、キーの配置がなあ......。

とはいえ、作るとすればMLだなと考え、まずはスイッチだけでも取り寄せようと探してみたのですが、取り扱いが終わってたり、送料が高かったりで少数の購入は難しいことに。それなら互換スイッチを探すまでとAliExpressを物色。MXの互換を作ってる「Kailh」で検索してみたところ、スイッチは見つからなかったのですが、なんと完成品のキーボード「HV-KB390L」を見つけました。メーカーの製品ページを見ると、キーピッチは狭くないですが、しっかり高さが低いことがアピールされてるじゃないですか。



▲製品写真を見る限りでは、ただのテンキーレスの小型キーボードと同じように見えます。しかし横から見ると......。



▲メカニカルキーボードなのにこの薄さ。スイッチだけでなくキートップも薄いため、キーボードそのものの背が低くなっています。

こうなると俄然この製品が気になってきます。しかし、AliExpressで80ドルという結構なお値段なので勇気が必要。迷いつつもなんとなくAmazonで検索してみたら、なんかフツーに売ってるんですよ。しかも都合がいいことに、通常7999円がセール中で6799円。AliExpressで買うより安い。そんなわけでカートに入れてポチるまで、1分もかかりませんでした。

いわゆるMX互換スイッチを使ったメカニカルキーボードが3000円くらいからあることを考えると、結構高いんですけどね。そこは気づかないフリ&勢いで。

タッチが軽めで音が小さい「HV-KB390L」が思っていた以上にイイ


ということで、ようやく本題です。まずはざっくりとタッチ感の感想から。MXの青軸と比べ軽めですが、押していくと途中からスッと奥に入り込む感触は結構似ています。カチャカチャという音はあるものの、MXの青軸は厳しいと感じる自分でもこっちは大丈夫なので、そこそこ小さめではないでしょうか。とはいえ、近くの人には聞こえると思いますので、会社で使うときは気にしたほうがいいでしょう。

ストロークが3mmと浅く、MXのストロークの深さに違和感のある自分としてはかなり快適です。また、純粋にキーボードの背が低いのがいいですね。パームレストがなくてもキーが高く感じないので、打鍵しやすいです。



▲手元には茶軸のスイッチしかなかったので、これと横から比較。スイッチ自体の背が低いというのがよくわかると思います。



▲キートップを付けたところで比較。HV-HB390Lのキートップが明らかに薄いので、キーボードの背が低くなります。そして打ちやすい。



▲キーを押してみたところ。こんな感じで、約3mmのストロークとなります。ちょっと浅めです。

キーボードの天板はアルミのようで、多少ひねったところでびくともしない堅牢さがあります。底面はプラスチック。折りたたみの足がついていて高さを調整できるのは、一般的なキーボードと同じです。



▲足を立てるとちゃんとゴムの部分が接地するようになってます。安物キーボードみたいにずるずる滑りません。

ゲーミングキーボードということで、ツールを使うとキーの入れ替え、マクロ作成、ライトアップのパターン変更、レスポンスタイムやUSBレポートレートの変更など、結構なカスタマイズができます。



▲ライトアップのパターンは「Effect」で選択可能。押したキーから周囲へと光が広がる「RainDrop」とかあって楽しいです。DIY機能で光らせたいキーの指定もできます。



▲キーをクリックすると設定ウィンドウが表示されるので、Single、もしくはCombineでキーを変更できます。Advanceでは、音楽再生などにも対応。



▲押したキーを記憶して、その順番通りに再現してくれるのがマクロ。ゲームのコマンドや単純作業の半自動化などで活躍してくれます。

ちなみにキーの入れ替えやマクロの割当をした場合、そのキーを使うには「Fn+PrintScreen」でGame Modeをオンにしておく必要があります。オンにするとPrintScreenキーのLEDが光るので、ひと目で区別がつくのがいいところ。オフにするとLEDが消え、キーを変更する前のデフォルトの状態で利用できます。



▲Game Modeをオンにしたところ。これで特殊な設定をしたキーが使えるようになります。

困ったところというか残念なところもあるけど、それはそれとして満足


スイッチそのものにはかなり満足してるのですが、もちろんキーボードのすべてが気に入ってるわけではありません。まずは19mmというキーピッチ。これは覚悟の上でしたが、やはりEscやBackSpace近辺のキーを押すときに手を動かさなくてはならないのは、ちょっと不便です。スイッチの隙間を見ると4mmほど余裕があるので、頑張ればあと2mmほど詰められそう。自作なら17mmピッチにはできそうです。キートップも自作しないとダメなので、難易度は高そうですけどね。

もうひとつは深刻な問題。複数のPCを使うことから「SW-KVM4LU」という切り替え器(KVM)を利用してるのですが、これに対応できないことです。接続してもキーボードが動作しないようで、ライトアップのLEDすら光りませんでした。モバイルバッテリー相手でも同じ挙動なので、どうもPC相手じゃないとキーボード側が動かないようです。

KVMが使えないというのが一番痛いところですが、それ以外は概ね良好。1週間ほどの利用でキーピッチの違いにも慣れてきましたし、カチャカチャという音も耳に心地よくなってきました。先程ちょっとFBK1420シリーズに戻してみましたが、メカニカルスイッチの軽快なタッチに慣れてくるとグニャっとした感触がさらに気になってしまい、微妙な気持ちになりますね。キーピッチはやっぱり狭いほうがうれしいですけど。

ということで多少不満な点はありますが、なんだかんだで20年近く使ってきたキーボードから乗り換えてもいいと思えるくらいには満足しています。メカニカルキーボードは気になってるけど、ストロークの深さがネックになっているという特殊な人がいれば、「HV-KB390L」はどうでしょう。試すにはちょっと高価ですが、もしかすると合うかもしれませんよ。