ヤマト運輸が全但バスの路線バス内に設置した荷台スペースの様子(写真: ヤマト運輸の発表資料より)

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 9月に行われる国土交通省の規制緩和通達により、「貨客混載」が日本に導入される。路線バスの重量制限を撤廃して荷物を運べるようにし、またこちらは地域限定だが、タクシーが乗客なしで荷物だけ運ぶこともできるようになる。日本経済新聞などが報じた。

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 国土交通省は、これまでバスやタクシーは旅客、トラックは貨物、という具合に、それぞれの役割を厳格に分離していた。旅客運送の安全を確保する、という考えによるものであった。

 しかし、政府の規制改革推進会議から規制緩和が要請され、またヤマト運輸からも地方の宅配ビジネスの可能性を広げたいとの要望があったことなどを受け、打ち続く運送・物流業界の人手不足に対応し、サービスの効率化を許容する方針に改める。

 ちなみに、現在の法律では、バスは350キロ以内の荷物しか配送することができない。この重量制限は、完全に撤廃される見通し。従って、バスの中に積載スペースを設け、荷物を運ぶことができるようになる。

 なお、ヤマト運輸は、地方自治体や企業と連携した「プロジェクトG」の一環として、路線バスの一部座席を荷台スペースとして使用し荷物の宅配を行う「客貨混載」を、地方のバス会社と共に2015年よりすでに開始している。2015年6月に岩手県の岩手県北バスから取り組みをスタートし、その後、同年8月に宮崎県の宮崎交通、2016年9月に北海道の名士バス・士別軌道・十勝バス、2016年10月に熊本県の産交バス、今年6月には兵庫県の全但バスと取り組みを開始。このヤマト運輸による「客貨混載」は、コプロダクツ大賞(2016)で「環境大臣賞」も受賞している。

 タクシー、ならびに貸切バスについては、これまで、貨物の運送は認められていなかった。これを、過疎地に限定して容認する。具体的な「過疎地」の目安は、ここでは、過去25年間での人口減少が2割以上、というものになる。過疎地の交通インフラ機能の低下を食い止めることが狙いだ。

 なお逆に、トラック業者が、旅客自動車運送事業の認可を得、旅客を乗せることも、過疎地においては可能となる。

 また、過疎地の要件は発着のいずれか一方において満たされていればよく、走行距離の制約はない。料金については企業に一任されている。

 総合的には、日本全体での交通インフラ網の再整備が期待できる。