まるで、漫画から飛び出てきたような格闘家だ。キックボクシング50年の歴史のなかで、史上最強の天才と称されている那須川天心(18)が、リング上で披露するのは「トリケラトプス拳」。大人気漫画『グラップラー刃牙』の主人公・範馬刃牙(はんまばき)が、強敵と戦うときに構えるポーズだ。

「格闘漫画を読みながら、今度この技をやってみようって考えてます。僕も刃牙のようにイメージトレーニングをしますが、相手は5倍ぐらい強いってイメージで戦います。実際に戦ったときに、こんなもんかって思えたほうが気持ち的に楽なんで。もちろんイメトレ中でも、ほぼやられません。負けるのはイヤですからね(笑)」

 天才キックボクサーの原点は、5歳から始めた空手。父親の弘幸さんが、礼儀を学ばせるために道場に通わせた。

「空手はやりたくなくて、どうやって逃げ出そうかと考えてた(笑)。小学6年のときにテレビで観たK-1に引き込まれました。入場から何から何まで全部カッコよかったし、魔裟斗さんに憧れて、僕もこういう舞台で活躍したいって思いました」

 アマチュアで105戦99勝5敗1分の成績を引っさげ、中学卒業後に「RISE」でプロデビュー。1R58秒KOという圧巻の勝利を飾り、わずか6戦めにして、最年少16歳で王者に輝いた。まさに「神童」である。

「神童っていう意味がよくわからない(笑)。でも、響きがいいですよね。強いだけの選手ではなくて、誰からも好かれる、人として尊敬される選手になりたいですね」

 そう話す無敵の王者も、リングを降りればごく普通の高校生。

「じつはすっごいビビリ屋。この前も友達と富士急ハイランドに行って、お化け屋敷に2時間も並んだのに、怖くて入口で引き返しちゃいました(笑)。好きな科目は家庭科。手先が器用なんで、編み物とかミシンとか得意ですよ。彼女? いないです。でも、今年のバレンタインデーにもらったチョコは、今まででいちばん多かったです」 

 4月16日には「RIZIN」に参戦し、1Rわずか1分7秒でTKO勝ち。3連勝を飾ったばかり。勝負メシは「しゃぶしゃぶ」と話すが、それ以上にうなぎの肝には目がない。

「中学生のころ、うなぎを食べに行ったときにサービスで出してもらったんですが、最初はへんな形だからちょっととなって。でも食べたら、すっごい美味しくて衝撃的だった。あとは、なめろう、白子、あん肝が好物。お酒のつまみばっかりだって言われます(笑)」

 嗜好はオヤジでも最強の18歳。次戦でも秒殺必至だ。

(週刊FLASH 2017年4月25日号)