5月20日、ハッサン・ヌダムとのWBAミドル級王座決定戦に臨むことが決まった村田諒太。

 ミドル級は、ヘビー級と並んでボクシングの歴史を担ってきた。それは、この階級から「拳聖」シュガー・レイ・ロビンソンやオスカー・デ・ラ・ホーヤなど、時代を代表する名王者を輩出してきたことが物語っている。

 それだけに、日本人にとってはつねに高い壁でもあった。これまで、ミドル級で世界挑戦した日本人選手はわずか4人。うち、世界王者となったのは、1995年の竹原慎二のみ。そして、2人めの戴冠を狙うのが村田である。

 彼を迎え撃つ、いまのミドル級も名王者揃いだ。4団体(WBA、WBC、WBO、IBF)のうち3つの王者に君臨し、「パウンド・フォー・パウンド」の呼び声高いゲンナジー・ゴロフキンが実力で頂点に立ち、人気抜群のサウル・アルバレスが虎視眈々と王座奪回を狙うなど、もっともレベルが高く、華のある階級といわれている。

「体重が72.575kgまでのミドル級は、欧米人の体格にもっとも適した階級。またヘビー級(90.719kg以上)ほどは体重のない選手が、体を絞ってミドル級に来るケースも多い。だからこそアジア人のスターが生まれにくい。全階級を通じて最激戦区といわれています」(スポーツライター・渋谷淳氏)

 過去に16人の日本人王者(暫定王者含む)が誕生したフライ級など、軽い階級では10戦未満での世界初挑戦もあるが、ミドル級ではそうはいかない。WBAミドル級では、これまでに33人の世界王者が誕生しているが、ほとんどが20戦から30戦を経験した後だった。

 ファイトマネーも破格。アルバレスは1試合5億5000万円の大金を手にする。ゴロフキンも1試合2億円はくだらない。かつてゴロフキンとのタイトルマッチに挑戦し、3ラウンドTKO負けを喫した石田順裕氏(41)が語る。

「アメリカではミドル級の人気が高く、有名ボクサーも数多く所属しています。それゆえ、大金を要するんです。フライ級などの軽い階級だと2000万〜3000万円程度ですむところ、ミドル級だと1億円近くかかりますからね」

 村田も高騰する金額の影響を受けた。

「当初はビリー・ジョー・ソーンダースとの世界戦を目指していた。しかし、相手が要求する破格のファイトマネーで折り合いがつかず、今回のマッチメイクとなった」(ボクシング関係者)

 その世界戦、勝機はあるのか。

「13戦めでの挑戦は、4団体で最速。相手はそれほどパンチもないし、村田がプレッシャーをかけつづければ十分チャンスはあります」(渋谷氏)

 石田氏も村田を推す。

「じつはヌダムとスパーリングをやったことがあるんですが、そのときの印象はミドル級にしては180cmと小柄で、実力もたいしたことなかった」

 ロンドン五輪では日本人には不可能といわれたミドル級で金。プロでも、再び偉業に挑む。

(週刊FLASH 2017年4月25日号)