放送直前「エロマンガ先生」原作者と監督が語った「紗霧の可愛さ」を大切に

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原作小説の累計発行部数は500万部を超え、TVアニメは海外でも大ヒット。
その後のライトノベル、アニメ業界にも大きな影響を与えた「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」
そんな名作「俺の妹」を生みだした小説家・伏見つかさと、イラストレーター・かんざきひろのコンビによる最新作「エロマンガ先生」がついにTVアニメ化。
覆面イラストレーター「エロマンガ先生」こと和泉紗霧(中1)と、現役高校生ライトノベル作家「和泉マサムネ」こと和泉正宗(高1)の兄妹を中心とした業界ラブコメがアニメでも展開する。
第1話の最速放送は、4月8日(土)の深夜。
そこで放送直前、「エロマンガ先生」アニメ化への思いなどを、原作者の伏見つかさと、監督・竹下良平に聞いた。


「エロマンガ先生」がアニメになるとは思ってなかった


──第1話の放送も間近ですが、今の率直な気持ちを教えて下さい。
竹下 すごく楽しみです。本読み(シナリオ打ち合わせ)から参加して、コンテと演出もやっているので、自分から視聴者に対して仕掛けていることがいっぱいあって。どんな反応をするのか、早く知りたくてしょうがない。自分の狙い通りの反応をしてもらえるのは、演出家として一番面白いというか、一番醍醐味を感じられる瞬間ですからね。あと、僕は今回が初監督なので、すべて自分が最終判断をしたものが作品になっているのも、この第1話が初めて。早く観て欲しいです。
伏見 先日、先行上映イベントがあって、僕も第1話を視聴しているので、すでに良いものができているのは分かっているんです。だから、とても安心しています。イベントの前も、心配はしていなかったですけどね。竹下監督たちが「面白い作品を作るぞ」という熱い気持ちを持って、アニメを作ってくださっているのを知っていたので。ただ、アニメを楽しみにしてくれている読者たちがどういう反応をするのかは気になっていたので、イベントの前は少しドキドキもしていました。みんなが本当に楽しそうだったので、今は純粋に楽しみです。アニメ化されるとは、全然思っていなかったんですけどね。
竹下 本当にそう思っていたんですね。
伏見 小説として面白い物を書こうとだけ考えていたので、アニメ化が正式に決まったと聞いた時にも、「え? やるんだ?」という感じでした。アニプレックスの柏田(真一郎)プロデューサーにも、初めてタイトルを教えた時、「このタイトルはちょっと……。何とかならないですか?」と言われていましたし(笑)。他にもたくさんのタイトルを考えたのですが、結局、「これが一番良いよね」という結論になったんですよ。
竹下 先に原作の中でイラストレーターとしての名前が決まっていたんですよね。
伏見 はい。だから、変えるわけにもいかなくて。


タイトルを聞いた時は「18禁の作品なのかな?」と


──竹下監督は、どのような経緯で「エロマンガ先生」の監督を務めることになったのですか?
竹下 以前、(制作スタジオの)A-1 Picturesの方に監督の仕事がやりたいと話したんですね。そうしたら、1年くらい経ったときにA-1 Picturesの五十嵐(守)プロデューサーを紹介してくれて、今回の話が来たんです。申し訳ないのですが、当時は「エロマンガ先生」のことをよく知らなくて。タイトルを聞いた時は「18禁の作品なのかな?」と思いました(笑)。
伏見 あはは(笑)。
竹下 初監督作品が18禁のアニメなのはどうなんだろうと思っていたんです。でも実際には、全然そういう作品では無かったので安心しました。
伏見 僕も、よく引き受けてくださったなと。
竹下 原作を読ませて頂いたら、内容がすごく面白くて、とても良い作品だったので、これはぜひアニメとして作ってみたいと思いました。表紙もおしゃれで、すごくセンスが良かったですし。
伏見 竹下監督だけでなくスタッフ、キャストの皆さんには、「恥ずかしいタイトルなのに参加してくださってありがとう」という気持ちです(笑)。竹下監督に初めてお会いしたのは、顔合わせの脚本会議の時ですが、誠実そうで、すごくちゃんとした人だなと思いました。僕からは「原作者としてアニメの邪魔をしたくない」みたいなことをお伝えしたはず。
竹下 仰っていましたね。僕は緊張していたんですけど、伏見先生はすごく腰の低い方で。お辞儀の角度がすごく深くて、恐縮したのを覚えています(笑)。
伏見 そうでしたか?
竹下 それに、伏見先生が「皆さんの足を引っ張りたくない」と仰ったのは、僕もすごく印象に残っていて。それが自分的にはすごくプレッシャーになったというか。成功させなくてはと強く思いました。というのも、原作を読んで、伏見先生はクリエイターとしてとても尊敬できる方だなと思っていたんです。そんな方が足を引っ張らないようにしようと思うレベルの作品って、どれだけすごいアニメなんだろうって(笑)。
伏見 僕は、本音を申し上げただけなんですけどね(笑)。(担当編集者の)三木さんが僕をいろんなところに関わらせてくれるんですけど。あまり深入りしすぎて邪魔しちゃいけないし、でも協力できるところはしたいし、という気持ちでした。


紗霧の可愛さやラブコメを引き立てるためのストーリー


──「エロマンガ先生」のアニメ化を待ち望んでいたファンは多かったと思うのですが。アニメ化決定が発表された際、ファンの反応はいかがでしたか?
伏見 ものすごく喜んでくれて。「あ、これはちょっと失敗したら怖いことになるな」って思いました。
竹下 「俺の妹」のファンの方はもちろん「エロマンガ先生」を観ると思いますし、すごく繊細に演出していかないとまずいなと思いました。「俺の妹」のアニメも観ましたが面白くて出来も良かったので、この作品のファンを納得させられるかというプレッシャーもあります。クリエイターとしては、違う作品の監督はみんなライバルなので、それを超えたいという気持ちはあるんですよね。あと、ヒロインの桐乃や黒猫たちがすごく魅力的で、可愛く描かれていたことも強く印象に残りました。だから、「エロマンガ先生」でも、紗霧を可愛く描くことは大事というか、基本中の基本だと思っています。原作に「紗霧の可愛さ」が事細かに描写されていて、文章から絵が想像できるところもすごく多いので。そこは拾っていかないといけないなと。
伏見 小説でも「紗霧の可愛さ」は一番大切にしなければならないもので、ストーリーも、そのために存在しているというか。「紗霧の可愛さやラブコメを引き立てるためのストーリーであるべき」という考え方で作っています。だから、ストーリーが進行していくと、その途中で紗霧の可愛いところが見られるし。ストーリーが一定以上進むと、紗霧との新しいラブコメシチュエーションが作れるようになるんです。もちろん、他のヒロインも魅力的になるように書いていますけどね。それぞれのストーリーが進んだら、新しく面白いラブコメができるという構造は同じです。
竹下 あと僕は、正宗のドラマという部分も大事だと感じていて。それがある事で、女の子たちが可愛いだけでなく、一本芯が通った作品になっていると思うんです。正宗が紗霧と協力して1冊のライトノベルを作るというドラマの筋道は大事にしたいなと考えました。


エルフの初登場シーンは視聴者がビックリするような演出に


──複数のヒロイン&男性主人公という構造の作品では、読者や視聴者から主人公が嫌われてしまうこともあると思うのですが。正宗を魅力的に見せるために意識していることなどはありますか?
伏見 今回の主人公はとにかく一途で、夢があって。真っ直ぐに進んでいくので、そこはぶれないようにしています。そんなぶれない「鉄壁」の主人公を攻略していくヒロインとして(山田)エルフたちがいるんです。主人公が鉄壁であればあるほど、ヒロインが魅力的に映る。そういう良い関係にできればいいなと思っています。
竹下 アニメでも基本的に正宗は、紗霧以外の子に迫られたときは、あまりデレっとせず硬派な感じの態度で接するようにしています。あと、アニメ的表現で頬にタッチを入れるんですけど。紗霧以外の女の子に対しては、それを軽めにして。あまり頬を染めないようにしています。
伏見 今日、アフレコを観ていて思ったんですけど。エルフが正宗に対してガンガンアタックして、正宗の牙城を少しでも崩そうとしていく。そこがすごく良かったです。先ほどの話と被りますが、この作品は紗霧と正宗の関係から作っていったので、「この2人の関係に割って入っていけるようなヒロインが必要だ!」と思って作ったキャラクターがエルフなんです。一番積極的で、うるさくてにぎやかなキャラクターとして作ったので、書くときも、にぎやかにしているときに一番輝くよう、いつも気をつけています。
竹下 僕は原作を読んだ時、エルフは嵐みたいだなと思いました。だから、初登場のシーンは視聴者がビックリするような演出にしているつもりです。作画にもこだわって、インパクトのある映像になっているので、登場を楽しみにしていて欲しいですね。
(丸本大輔)

後編に続く