どの職場にもいる「ADHD社員」との付き合い方
注意欠如・多動性障害を示す「ADHD」という言葉は、ここ数年で広く知られるようになりました。
集中力が続かなかったり、落ち着きがなかったり、片付けができなかったりといった症状が代表的ですが、これは本人だけでなく同僚や家族など周囲の人にとっても大問題です。
もし同僚や家族にADHDの人がいたら、どんな風に接し、どんなケアが有効なのか。
今回は『仕事&生活の「困った!」がなくなる マンガでわかる 私って、ADHD脳!?』(しおざき忍画、大和出版刊)の著者で医学博士の司馬理英子さんにお話をうかがいました。
■全体の5% どの職場にもいるADHDの同僚との付き合い方
――司馬さんが院長をつとめる「司馬クリニック」には、ADHDの傾向がある方がいらっしゃるかと思います。相談事として多いものがありましたら教えていただきたいです。
司馬:「忘れ物」や「集中力が続かないこと」に比べると目に見えやすい症状だからだと思いますが、「片付けられない」という方が圧倒的に多いです。
片付け方がわからないという方も、片付けた状態をキープできないという方もいるのですが、どちらにしても家族にうんざりされていたり、必要なものが見つからなくて探すのに余計な時間を使ってしまったりといった問題を抱えがちです。そして、そんな自分に自分でうんざりしてしまう。
その状態が続けば、余計に周囲の人とのトラブルが増えます。悪循環ができてしまうんです。
――ADHDは特別なものではなく、学校や職場など様々な場所にその傾向がある人はいます。たとえば、職場にADHD傾向のある人がいる場合、同僚としてはどんなケアをしていけばいいでしょうか。
司馬:ADHDは全体の5%ほどなので、30人の部署だとしたら1人か2人はその傾向がある人がいるということは知っておいていただきたいです。
同僚の場合、相手も大人ということで「このくらいのことはわかっているよね」と、あまり細かいことまで言いにくいところがあるのですが、明日が締め切りの企画書や報告書など「普通わかっているよね」と思うようなことも、ADHD傾向のある人は忘れてしまうことが珍しくありません。
なので、普通の大人に対するよりはこまめに、「どうなってる?」とか「ちょっと見せて」とか声かけをしていくのがいいと思いますね。
ADHD傾向のない人からすると「それをこっちに言わせるの?」というところもあるでしょうが、ADHD傾向のある人は、たとえば忘れ物が多かったとしても能力自体が低いわけではないので、相手の能力を生かす意味でも、ケアをしていただきたいと思います。
――同僚としてはADHDであることを自覚させた方がいいのかどうかという問題もあります。
司馬:本人は問題を認識していなくても周りの人が迷惑をかけられている場合もあるので、あまり困るようなら、自覚してもらった方がいいのではないでしょうか。
「君にはこういうところがあって、こういうことで周りの人が困っている」ということをわかってもらうことが必要ですが、それだけで終わるのではなくサポートもしていっていただきたいですね。
――また、自分の息子や娘がADHDだという時にすべきことも教えていただきたいです。
司馬:忘れ物が多かったり、落ち着きがなかったりしても「何回言ったらわかるんだ」というような𠮟り方はせずに、何度も根気強くやるべきことを伝えることです。脳の持つクセのお話ですから、叱ったり叩いたりすることで良くなりはしません。
それよりも、繰り返し忘れ物がないかリマインドしてあげたり、今日は何が必要なのか聞いてみたり、自分でチェックするスキルが伸びていくような育て方をする方が改善の可能性があります。
ADHDの場合、改善したと思ってもまた元に戻ってしまったり、一度獲得したスキルをキープできないこともあるのですが、根気よく取り組んでいただきたいです。
――ADHDという言葉は数年間で急に広く知られるようになりましたが、まちがった情報が伝わってしまっている例はありますか?
司馬:まちがった情報というほどでもないのですが、「多動」や「注意力散漫」といった症状に対して、何でもかんでもADHDが原因にされがちなのは気になります。
虐待を受けて育ってきた子どもにADHD症状が出ることがあるということが最近知られはじめたのですが、同じ症状でもADHDなのか虐待なのかで対処は変わってきます。
ただ、もともとADHDが先にあって、その症状が原因で虐待を受けやすいということもあるので、問題は単純ではないのですが。
――最後になりますが、ADHDの方と、そのご家族、同僚など周りにいらっしゃる方々にメッセージをお願いできればと思います。
司馬:もしかしたら自分はADHDかもしれないと思っている方は、医師の診断を受けるのもいいのですが、本を読んだりして、ADHDについて情報を得ることも大切です。
そして、もし診断の結果ADHDだったとしても、日常の困り事についての対処法はいろいろなものがありますし、症状をするために必ずしも病院に通う必要もありません。
知識を得ることで、気持ち的に楽になる部分はあるかと思いますので、まずはADHDを知る取り組みをしていただきたいなと思います。
(新刊JP編集部)
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――司馬さんが院長をつとめる「司馬クリニック」には、ADHDの傾向がある方がいらっしゃるかと思います。相談事として多いものがありましたら教えていただきたいです。
司馬:「忘れ物」や「集中力が続かないこと」に比べると目に見えやすい症状だからだと思いますが、「片付けられない」という方が圧倒的に多いです。
片付け方がわからないという方も、片付けた状態をキープできないという方もいるのですが、どちらにしても家族にうんざりされていたり、必要なものが見つからなくて探すのに余計な時間を使ってしまったりといった問題を抱えがちです。そして、そんな自分に自分でうんざりしてしまう。
その状態が続けば、余計に周囲の人とのトラブルが増えます。悪循環ができてしまうんです。
――ADHDは特別なものではなく、学校や職場など様々な場所にその傾向がある人はいます。たとえば、職場にADHD傾向のある人がいる場合、同僚としてはどんなケアをしていけばいいでしょうか。
司馬:ADHDは全体の5%ほどなので、30人の部署だとしたら1人か2人はその傾向がある人がいるということは知っておいていただきたいです。
同僚の場合、相手も大人ということで「このくらいのことはわかっているよね」と、あまり細かいことまで言いにくいところがあるのですが、明日が締め切りの企画書や報告書など「普通わかっているよね」と思うようなことも、ADHD傾向のある人は忘れてしまうことが珍しくありません。
なので、普通の大人に対するよりはこまめに、「どうなってる?」とか「ちょっと見せて」とか声かけをしていくのがいいと思いますね。
ADHD傾向のない人からすると「それをこっちに言わせるの?」というところもあるでしょうが、ADHD傾向のある人は、たとえば忘れ物が多かったとしても能力自体が低いわけではないので、相手の能力を生かす意味でも、ケアをしていただきたいと思います。
――同僚としてはADHDであることを自覚させた方がいいのかどうかという問題もあります。
司馬:本人は問題を認識していなくても周りの人が迷惑をかけられている場合もあるので、あまり困るようなら、自覚してもらった方がいいのではないでしょうか。
「君にはこういうところがあって、こういうことで周りの人が困っている」ということをわかってもらうことが必要ですが、それだけで終わるのではなくサポートもしていっていただきたいですね。
――また、自分の息子や娘がADHDだという時にすべきことも教えていただきたいです。
司馬:忘れ物が多かったり、落ち着きがなかったりしても「何回言ったらわかるんだ」というような𠮟り方はせずに、何度も根気強くやるべきことを伝えることです。脳の持つクセのお話ですから、叱ったり叩いたりすることで良くなりはしません。
それよりも、繰り返し忘れ物がないかリマインドしてあげたり、今日は何が必要なのか聞いてみたり、自分でチェックするスキルが伸びていくような育て方をする方が改善の可能性があります。
ADHDの場合、改善したと思ってもまた元に戻ってしまったり、一度獲得したスキルをキープできないこともあるのですが、根気よく取り組んでいただきたいです。
――ADHDという言葉は数年間で急に広く知られるようになりましたが、まちがった情報が伝わってしまっている例はありますか?
司馬:まちがった情報というほどでもないのですが、「多動」や「注意力散漫」といった症状に対して、何でもかんでもADHDが原因にされがちなのは気になります。
虐待を受けて育ってきた子どもにADHD症状が出ることがあるということが最近知られはじめたのですが、同じ症状でもADHDなのか虐待なのかで対処は変わってきます。
ただ、もともとADHDが先にあって、その症状が原因で虐待を受けやすいということもあるので、問題は単純ではないのですが。
――最後になりますが、ADHDの方と、そのご家族、同僚など周りにいらっしゃる方々にメッセージをお願いできればと思います。
司馬:もしかしたら自分はADHDかもしれないと思っている方は、医師の診断を受けるのもいいのですが、本を読んだりして、ADHDについて情報を得ることも大切です。
そして、もし診断の結果ADHDだったとしても、日常の困り事についての対処法はいろいろなものがありますし、症状をするために必ずしも病院に通う必要もありません。
知識を得ることで、気持ち的に楽になる部分はあるかと思いますので、まずはADHDを知る取り組みをしていただきたいなと思います。
(新刊JP編集部)
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