小池百合子都知事

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2020年東京五輪をめぐり、会場問題が決着したかと思いきや、今度は費用負担という新たな問題が持ち上がりました。26日には開催会場を抱える自治体の知事らが小池都知事を訪問し、仮設施設の費用負担について、組織委員会が全額負担するという原則を守るように要請しました。

そもそも東京五輪をめぐる費用については、立候補時点の招致ファイルで明確に誰が負担するかを宣言しています。それは第一に組織委員会であり、組織委員会が賄えないものは開催都市である都が負担し、さらに都が負担しきれないものは最終的に国が保証するとされているのです。

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<招致ファイルに記された財政保証に関する記述>

大会組織委員会予算についての保証

東京2020は大会組織委員会の予算が均衡の取れたものであることを強く確信している。

しかし、万が一、大会組織委員会が資金不足に陥った場合は、IOC
が大会組織委員会に支払った前払金その他の拠出金のIOCに対する
払い戻しを含めて、東京都が補填することを保証する。

また、東京都が補填しきれなかった場合には、最終的に、日本国政府が国内の関係法令に従い、補填する。

東京都は、大会組織委員会予算約3,010億円に対し、非常に大規
模な財政規模(2012年度の予算で11.8兆円)を有しており、万一の大会組織委員会の資金不足に対しても十分に補填することができる。

https://m.tokyo2020.jp/jp/games/plan/data/candidate-entire-1-JP.pdf
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このことはIOCと東京都が結ぶ「開催都市契約」にも記されているはずであり、東京都が財政的に破綻することはまずあり得ないという現実を鑑みれば、最終的には都が全額を負担すべきことは「すでに決まっている」のです。組織委員会の収入はチケット収入やスポンサー収入など、おおよその上限が見えており、1.8兆円という規模の費用を賄うには、当然のこととして東京都の負担が必要となってきます。開催都市であるのですから、これは当然のことです。

しかし、小池都知事のブレーンである都政改革本部は調査報告書において、その当然の責任を「最終的に組織委が破たんするとそのツケは全て都庁が払う仕組み」と、まるではた迷惑な他人事のように表現しています。そして、「東京以外の県の仮設施設費の半分を国に補助させる」ことや、「仮設施設もなるべく後利用策を考え、県費で一部負担させる」ことを画策しているのです。

そのことを端的に表現するのが、小池都知事が最近の会合にてよく使用する「準開催都市」なる言葉。これは本来であれば東京都が負うべき責務を、開催会場を受け入れた各自治体にツケまわしていこうとする発想を暗に示したものです。言ってみれば、他の自治体を「連帯保証人」にするという発想です。

本来であれば東京都が新設すべきであった会場を、その費用をおさえるために既存会場を他自治体から借り受けたというのが、都外への会場移設の枠組みです。「準開催都市」の名のもとに費用負担までセットで押しつけられては、各自治体が「筋が違う」と憤るのは当たり前の話。

「すべて東京都が負担します。ご安心ください」

この一言を小池都知事が発しないことが、遅れを生んでいる最大かつ唯一の原因です。開催都市である東京都のトップが、開催都市の責任を自覚していないことで、各自治体に迷惑をかけているという構造の問題であり、まさしく「無責任」と言うほかない振る舞いなのです。

これから新たに会場を選定するのが困難であるのは、先日の横浜アリーナへのバレー会場変更計画が頓挫したことでも明らかです。代わりの会場を用意できない以上、東京都がこの交渉に勝つ道はありません。どこまで費用負担の話を押し進めても、最終的に各自治体から「やはり会場の提供はお断りします。会場は東京都でご用意ください」と突っぱねられたらオシマイです。

もしも、会場が用意できず五輪が適切に運営できないとなれば、IOCと結んだ「開催都市契約」に基づいて東京五輪の開催は取り消され、生じた損害に対してIOCから賠償請求を起こされるのです。これほど無駄な負担はありません。実りのない「から騒ぎ」にうつつを抜かすのではなく、実務を進めるために何をすべきかを考えるのが都知事の仕事。騒ぐだけなら「評論家」と同じです。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)