「劇場版 艦これ」は観るべきか。迷ってる提督の背中を押す

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「劇場版 艦これ」が26日から上映中だ。


今回の劇場版、提督(プレイヤー)で「どうしよっかな」と迷っている人は多いと思う。
その背中を押したい。

ゲームのハラハラ感を思い出す


ボトムズのように、水しぶきをあげながら滑走する艦娘。
砲弾飛び交う中、負傷者をかばいながら、歯を食いしばって陣形を保つ。
ガンガン被弾する。血を流す。艤装はどんどん壊れる。
深海棲艦は、砲撃や魚雷を食らって、ぐちゃぐちゃにはじけ飛ぶ。
戦闘シーンは、TVアニメ版とほぼ別物なくらい進化した。

ゲームの感覚が蘇る。
戦闘中、艦娘が中破・大破した時、提督(プレイヤー)は「進軍」するかどうかを選択する。
大破で進軍すると、轟沈の可能性が出て来る。
沈んだ艦娘は、二度と戻ってこない。

映画版の舞台は、2013年のゲームイベントで、多くのプレイヤーが悲鳴を上げたあのマップ。
特に夜戦が多く、吐きそうな思いでプレイした提督は多いはず。
うかつに進むと轟沈しかねないため、進軍のボタンを押せない。

このヒリヒリした感覚が、映像化された。
劇中で艦娘が被弾したあとの行動を見ていると、肝が冷える。
や、やめろ……○○っ、前に出るな!

「艦これ」アニメを作るのは難しい


2013年、ゲンロンカフェで、さやわか、米光一成、中村桜が「艦これ」について考えるトークショーを行った。
終了後、さやわかを中心に人が集まって議論をしていた。
「艦これをアニメ化するなら、どうすればいいのか?」
出たのは「無難に日常系じゃないか」という結論だった。

ゲームの「艦これ」をアニメにするのは、そのくらい困難だと思われていた。
メインになるであろう、戦闘表現。
そもそも艦娘ってなんなのか。海でどう戦うのか。

ゲームは、ギャルゲー的に艦娘を愛でてもいい。独自の戦略を極めてもいい。史実と比較してもいい。
どうとでも楽しめる自由さが「艦これ」の強み。
だからこそ、公式での世界観を固定してしまうのは、マイナスに作用しかねない。

TVアニメ版では、「艦これ」のあらゆる要素を、ぎゅっと詰め込んだ。
キャラは多く登場し、シリアスもギャグも付加。お祭り的に楽しいアニメだった。カレーも作った。
同時に肉付けしすぎたことで、物語の目指す方向が混沌としてしまい、賛否は大きく分かれた。

ゲームでの、艦娘や世界観のにおわせ方。
TVアニメ版での、見せ方の試行錯誤。
「艦これアーケード」で好評だった、艦娘描写、陣形、戦闘演出。

劇場版ではこれら蓄積したノウハウを活かし、キャラの感情描写と、戦闘の厳しさ表現に注力。
ギャグを全部捨てて、シリアスに羅針盤を回した。

艦娘は何故戦うのか



弾薬がきれ、大破状態の艦娘たち。
艦娘はなぜ戦うのか?
艦娘たちのいる世界の閉塞感は、一体なんなのか?
劇場版は心身ともに限界の彼女たちを描くことで、今まで意図的にぼかし続けていたところに踏み込んだ。

一方で、TVアニメ版のネタは、大幅に削られた(提督の設定など)。
キャラ自体はそこそこ登場する。
でも緊迫感を保つため、セリフやアクションによる自己主張はほとんどない。
舞台挨拶によると、ある声優のアドリブはほとんどカットされたそうだ。

物語上ではほぼ触れられていないが、細々した「艦これ」の設定は絵で表現されているので、情報量は多い。
ゲームのギミック(改二、探照灯、陣形、航空戦、深海棲艦の種類など)探しは、この映画の楽しみ方の1つだ。

艦娘の仕組みなど、艦これ世界の基礎情報は一切解説していないため、完全初見で理解しきるのは、ほぼ無理。
最低限、用語くらいはおさえておくのが吉。
TVアニメ版の続編なので、最初の方は見ておいたほうがベター。とはいえ、あらすじさえわかればなんとかなる。
三川艦隊が好きな人は、悪いこと言わないから、急いで見に行くべし。
個人的MVPは夕立です。

(たまごまご)