「ジョジョの奇妙な冒険」性悪スタンドを倒す、たったひとつの冴えたやりかた
ジョジョ世界でこんな死に方は嫌だ!ベスト5
せっかくスタンドが発現したのに「背中に取り憑いて耳元で囁くだけ」というパバを引いた上に、本人にそれを制御する力がなく、露伴先生に災厄を宅配させられたあげく殺された乙雅三。畳の上で死ぬ人が少ないジョジョシリーズの中でも、こんな死に方は嫌だ!ベスト(ワースト?)5を選りすぐってみました。
●怪人ドゥービー
第一部にてディオの配下として出てきたゾンビで、体内に色んな種類の蛇を飼っている。猛毒の蛇をジョナサンに噛みつかせて「ルン!ルン!ルン!」とテンション高めだったが、ジョナサンの波紋により蛇の血液を狂わされ、自分の蛇に喰い殺された。
第三部にて、ジョースター一行に差し向けられた刺客の一人。ミクロサイズのスタンド「ラバーズ(恋人)」のスタンド使いで、ターゲットの体内に潜り込み、脳内で「肉の芽」を増殖させることで殺す。本編ではジョセフに取り憑いて人質として、手出しができない承太郎の財布を奪ったり、ブリッジさせて腰掛けたりとやりたい放題。そのツケを支払わされて、最後は3ページに渡る最長のオラオララッシュ……。ラバーズに脳を食い破られたエンヤ婆も悲惨だったが。
●柱の男を調査したドイツ軍兵士
第二部で「柱の男」達が眠るローマの遺跡に派遣された人たち。すでに柱の男達は目覚めており、ワムウによって腕と腕がつなぎ合わされ、まとめて吸収されて完食。そしてジョセフやシーザー達を案内した若き兵士・マルクがワムウとすれ違うと、その右半身は消え去っていた。「ドイツに帰ったら結婚するんス僕たち……」という死亡フラグを猛スピードで回収したマルクが成仏しますように。
●ウィルソン・フィリップス上院議員(2週前にチョイ触れましたが)
DIO様に出会ってしまった可哀想な政治家。軽トラで逃亡したジョセフ達に追いつくために、歯をへし折られて無理やり運転手に。夕暮れの渋滞に立ち往生していると、DIO様の「歩道が広いではないか……行け」というご命令に従い、歩行者達をガンガン轢き殺した。そこまでしたのに、ジョセフ達の軽トラに投げつけられる飛び道具という末路。まぁ生き延びていたとしても、政治家生命は終わってましたね。
●カーズ
究極生物になってジョセフを追い詰めたが、エイジャの赤石+波紋エネルギーで火山を噴火させてしまい、宇宙空間までふっ飛ばされた。そこで全身から空気を噴出させて地球に戻ろうとしたが、空気がすぐに凍って軌道が変えられず、鉱物と生物の中間の生命体となり永遠に宇宙をさまよっている。そのうちカーズは考えるのをやめた……ということで厳密には死んでいないが、死ぬよりも悲惨だ。
康一くんに信じてもらえない露伴先生
7月15日(木)はまだ終わらない。3つの事件が一日にまとめられたことで、エニグマから解放されたばかりの康一くんは、すぐに露伴先生の電話を受けて出動する忙しさだ。
「こっちだよ康一くん。君の助けが欲しいんだ。敵スタンドに攻撃されている」
スタンドが背中に取り憑いているとは言いながら、その背中を見せられない苦しさ。「証拠」を見せたとたんに自分も死に、康一くんも攻撃されてしまうのだから。
「先生はいつだって僕をからかうじゃないですか」とふだんの行いがたたって、信用してもらえない露伴先生。もう一つの「証拠」=乙雅三の死体がある2階に上がってもらうため、「階段でブリッジ」のエクソシストポーズ再びだ。
しかし、乙の死体は生気を吸い取られ、小さなミイラになっていた。康一くんは「へーすごいな。でも今はふざけてる場合じゃないんですよ」とつれない反応。露伴先生、どんだけ今までからかってきたんですか。
「待ってくれ康一君!クソッタレ仗助とか億泰じゃ絶対僕をバカにして信じないだろうから君を呼んだんだ!信じてくれ!康一君!友達だろ〜!!」
でも友達と思われてませんでした。康一くん、今日はお疲れでもあり、心の余裕がないのも祟ったのだろう。ドアをバタンと閉められ、「落ち込まないで。ね。こういうのってガックリくるけどさ〜」とチープ・トリックに励まされる露伴先生。
「この岸辺露伴、こんな屈辱は初めてだ…」
いや仗助とのチンチロリンでもジャンケン小僧との勝負でも屈辱を味わってましたよね。漫画と屈辱だけが友達の露伴先生……。
殺意と比例して伸びる爪の恐ろしさ
川尻浩作=吉良吉影の伸びた爪は、抑えきれない殺人衝動のものさし。よく手入れされた自慢の髪を指でかき上げる女、命拾いしたな。今は選ぶのを抑えてやる。川尻浩作の生活に完全に溶け込むまで……電車の中で我慢する殺人鬼だった。
そこに先週、スピードワゴン財団の資料にリストされていた女性が登場。夜遊びをしたり、親の前でわざと万引きをしたり……とカレシに犯罪自慢をしてるまでは良かった。座ってる吉良の膝にドサッとカバンを置いても素知らぬ顔、ああ「スイッチ」に指をかけている。
「ちょっと。何人のカバン触ってんのよ」
「スリか?痴漢か?すっとぼけてやがる」
膝からカバンをグイっと押しのけた吉良に、逆に難癖をつけるバカップル。それに反応するように、めきめきと伸びる吉良の爪。目に見える勢いで殺人衝動が育つ、静けさゆえの恐ろしさ。
「いって〜なあ。なんだよ、トロトロ電車降りてんなよな!」
「ねぇねぇ見た? ボーリングの爪切り持ってたよ。今どきボーリングの爪切りだって。超ダサァー」
自分からぶつかっておきながら、詫びるどころかまたイチャモン。カバンから転げ出た爪切りを拾う吉良の指は、すごい勢いで爪を伸ばす。殺人鬼スイッチ、入りましたー!
チープ・トリックを倒す、たったひとつの冴えたやりかた
7月15日(木) 17時07分
「杜王グランドホテル……あそこに行くしかない」
まるでチープ・トリックに聞かせるように(承太郎のいる)目的地を言い、歩き始めた露伴先生。居眠りしてる間に電話をかけられ、出前や消防士を呼ばれて危うく背中を見られるところだった……という原作がカットされてる!「火事はどこです火事は?」「知らないよ家政婦紹介所へ行け」それカジ違いや!などギャグも面白かったが、残り5話だしやむなしか。
壁にピッタリ背中を貼り付けて歩き、第一段階はクリアー。道路というのは必ず交差点があり、誰にも背中を見られずに渡れっこないはず。でも、実際に乙雅三は露伴邸まで来た。その方法は……通りすがりのチンピラの背中に貼り付くことだ!
「ちょっと小っ恥ずかしいがこれなら問題なく駅までいけるぞ」
が、乙雅三が渡ってるときはチープ・トリックは邪魔しなかった。「おいそこのバカ、何ボケーェッと歩いてんだよ?(「ヤクでも買いに行くのか?」はカット)」とチンピラを煽る煽る。
チープ・トリックも見落としていた、露伴先生にはヘブンズ・ドアーがあることを。「1分間うしろを振り向けない」と命令を書き込まれたチンピラは、「ポ○チンまで干からびて死ぬのはお前だ!」といった物騒な口喧嘩に冷や汗をかかされる。いかついナリをしてるが、チンピラは純粋に被害者である。
最難関の交差点を突破したものの、ここからが本当の地獄だ……ヘブンズ・ドアーが知能ある動物に対して能力を発揮できるなら、チープトリックだって有効なはず。背中を見せた動物に乗り移って、露伴先生を殺せてしまう。
そう聞くと露伴先生、「猫って嫌いだよな。ガン飛ばすからな」と猫をdisり始めた。おいそこどけ……と追い払おうとすると、犬猫がズラァーッ!と大集合。チープ・トリックの「しゃべる」能力も、動物に対して有効だったのだ。
「お前を憎んでるぜ〜お前が犬と猫を殺すのが好きなやつだと教えたからな」
いや、犬と猫を殺すのが大好きなのは原作者の方だよ!とネット実況でも一斉にツッコミ。ちょうど「猫の恩返し」がテレビ放映された日でもあり、恩返しと倍返しが重なった奇跡に乾杯だ。
いくらヘブンズ・ドアーの動作が速くても、犬猫の数が多すぎる。猫に後ろに回り込まれそうになり、思わず勝った!と叫ぶチープ・トリック。
「3Freeze!動物にゃあ罪はねぇよ。だからみんなどっかいけ」
ヒーローは遅れてやってくる。猫を「重く」して露伴先生を救った男、広瀬康一。エコーズも「言葉」のスタンドだから犬猫としゃべれた説もある。どちらにせよ、露伴先生の救世主だ!
「からかわれてるのかと思ったけど、チョッピリ気になったから戻ってみたら露伴先生…どうも壁を背にしたり、他人の背中で交差点を渡ったり、「ひとりで」やってるんだもの」
小っ恥ずかしい行いは、SOSのサインになっていた。康一くん、背中に敵スタンドがいることをやっと信じてくれた。
「君のそういうところなんだよ…僕が君を尊敬するのは。やっぱり君は親友だった」
「背中にいる敵を取り除けばいいんですね」
あっさり親友発言をスルーして、狙いを定める康一くんのACT3。重くされたチープ・トリックが引き剥がされる……露伴先生の背中を破壊しながら。露伴先生に頼まれ、3Freezeは解除。疲労に加えて背中のダメージ、ぶっ倒れるのが先か精神が参っちまうのが先か。
「どんな最強のスタンドだろうが喋るだけのパワーのない僕を倒すことができないんだよ!」
原作よりも凶悪な面構えで言い放つチープトリック。そして勝ち誇った瞬間こそが敗北の始まりだ。
「どんなスタンドか…いいよ…見せてあげる」
ヘハハと虚ろに笑って、康一くんに背中を見せる露伴先生。とうとう壊れた!でも、おかしいのが通常運転だから、壊れたかどうか分からない!
「ついにまいっちまったか!承太郎の所に行っても無駄だとわかったんで〜!」
「承太郎? 僕は最初からそんな所に向かってないよ。ここへ向かってたんだ。ついに到着できたんで嬉しくってね。つい笑っちゃったよ」
こ…この場所は! このポストは!! 決して振り返ってはいけない小道だーー(第17話参照)!!
露伴先生が考え出したチープ・トリック攻略法、スタンドも月までぶっ飛ぶこの衝撃! 原作の連載当時、「やられたー!」と唸らされたものだ。チープ・トリックはここがどこか分かっていても、自分の能力ゆえに振り向かざるをえない。
「確かにどんなスタンドだろうとお前を取り除こうとすればお前は僕にダメージを返す。
しかしお前だけを掴める者がいたな。振り返ってしまった物だけを引っ張っていく者が!お前の魂だけを連れ去る者が!」
無数の手に連れ去られるチープ・トリックに、わざわざ「地獄に行く」と書いてやる露伴先生の大人気なさ。いや、そうしたい気持ちはわかる。喋る以外何もしないが、承太郎でも取り憑かれたら勝ち目のないスゴいやつだった。
振り返ってはいけない小道は、杉本鈴美さんのいる小道。露伴ちゃんが持っていた写真を見て、川尻浩作と川尻早人の親子、点と点がようやく繋がった!
君の名は(直後に爆殺)
7月15日(木) 18時04分
「ねぇ〜。ミカったらブランドもののイヤリング彼氏に買ってもらったんだって。私にも買ってよ」「今度な〜」
それがバカップルの最期の会話になろうとは。締めかけたドアに手を割り込ませ、押し入ってきた吉良吉影。なんだてめぇは!人の部屋に勝手に入ってきてんじゃ……と言い終わる前に、男は爆殺。一瞬でチリになった原作から、全身が爆発前にボコボコになる好アレンジだ。リア充、爆発させられた!!
「私は吉良吉影。君の名を聞かせてもらえないか?」
君の名は!大感動巨編どころか大殺りくが繰り広げられて女子はビビりまくり。「ツメ、伸びてるだろ?こんなに伸びてる」と意味不明なアピールまでされてはテンパるしかない。
「自分の爪を伸びるのを止められる人間はいるだろうか? いない。誰もが爪を伸びるのを止めることができないように、もって生まれた性という物は誰も抑えることができない」
もちろん爪とは殺人衝動のこと。吉良にとっては内から湧き上がる生理現象に過ぎない。
「君の名前はと聞いたんだがね」
「彼…私の彼を一体…」
「質問を質問で返すな!疑問文には疑問文で答えろと学校で教えているのか!?私は名前をと聞いているんだ!」
学校教育の是非を問う殺人鬼! 論理的な一貫性にこだわる几帳面さ、殺されるのを待つばかりの弱者をいたぶる吉良の異常性がぎゅっと濃縮された名言だ。
君の名は美那子さん。美しい名を持つ女子にダサい爪切りで爪を切らせるのも処刑プレイの一環だ。助けて…お願い…許して…と号泣する美那子さんに、君を選んだのは「趣味」だという吉良。その趣味、全世界で禁止されてますけどね。
そして彼氏にせがんでいたイヤリングをプレゼント、持ち主の耳付きで。爪切り上手の美那子さんは、より吉良好みになった。言葉をしゃべらない、手だけになって。
手に頬ずりして清々しい気分になった吉良吉影……という一部始終は、すべて駅から尾行していた仮初の息子・川尻早人のハンディカメラに撮られていた。大急ぎでマンションから離れる早人を目撃して、ドアの鍵を締めてなかったことに気づく吉良。このうっかり屋さん、なんで今まで警察に捕まらなかったんでしょうね。
(人間じゃない…パパに化けてるあいつは何なんだ)
いや、個性的すぎるが一応は人間です。そんな自問自答する早人とすれ違った承太郎は、アニメオリジナルの展開。さっきの部屋に入り、帰ってきた形跡と床の端に血痕を確認する承太郎、原作よりも仕事してるぞ! スタンドでドアを開けて指紋を残さない下りは、本当に細やかな作りだ。
スタンド使いを脅すスーパー小学生
7月15日(木)曜 20時36分
そして舞台は川尻家。隼人の動きに勘付いた吉良は部屋を調べるが、カメラはなし。当の隼人はどこかといえば……お風呂回だ!
ビデオテープを誰に見せよう。ママはあいつを信じ切ってる。警察は「人間が吹っ飛んで消滅した」なんて信じるか? そもそも、あんな奴を警察が捕まえられるんだろうか--早人の思考はいちいち的確で、小学生離れしている。だからこそ、「そのうちきっと僕とママは殺される」という絶望にたどり着くしかない。
「お風呂…一緒に入っても…いいかな?早人」
親の顔をして入ってくる殺人鬼、その影がキラークイーンの形に! こんなに怖いお風呂回がかつてあっただろうか。
僕はもう上がるからとエスケープしようとする早人を、「いいじゃないか、親子…なんだから」と壁ドンで止める吉良。後ろに回した手桶の中を見られたら終わりで、逃げ場のない恐ろしさがハンパない。
「僕がバパの背中、流してあげるよ」「それはいい考えだが…でもまずお前の背中からだよ」微笑ましい親子の会話は、殺人鬼と「知りすぎた少年」の火花散る攻防だ。汗をかいてるのはのぼせたのかい? じゃあ震えているのはなぜだ。
その窮地を「くすぐったいんだよパパ。僕がくすぐったがりだってこと昔から知ってるでしょ」と切り抜ける早人。「昔」のことを知らない敵の弱みを突く、冴えたディフェンス!
「ところで…今思い出したんだが今日の夕方仕事の用事で家と逆方向の定禅寺の方へ行ったんだがお前を見かけたよ。ビデオカメラを持って何をしていたんだい!」
本題に斬り込んだ吉良は、早人の反応から「見られた」ことを確信する。しかし、早人のおっ広げられた股間がまるで修正されずに地上波に流れている……小学生はセーフらしい。
(今小僧の髪の毛を1本爆弾に変えた。これでこいつの頭をちょいと爆破すれば風呂で滑って頭をぶつけたかに見える。世間ではよくある事故だ)
爆破スイッチを押そうとした瞬間、「まさか僕も殺すのかい? ビデオで撮っているのに!」とストップを掛ける早人。靴のサイズもサインを練習しているところも、屋根裏の猫のような草も撮った。すべてを収めたテープは、僕に何かあったら誰かが見つけるだろう……巧みにブラフまで操る小学生。
「僕に手を出すな!いいな!」
殺人鬼かつスタンド使い相手に、一般人の子供が形勢逆転! 脅されて吉良もタジタジだ。
「ママにも手を出させない!」
川尻早人、カッコいい!丸出しだけど! 次回からは、いよいよ「最終決戦」の幕開けだ。
(多根清史)