動画:20年間で自動車の安全性能がどれだけ進歩したか、よく分かる衝突試験映像

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メキシコで製造されていた日産「ツル」が、2017年5月に生産終了となることが発表された。同車は、2019年に施行予定のメキシコの安全基準を満たせないため、製造ラインから外されることになる。日本ではかつて7代目「サニー」として販売されていたため、その姿には見覚えのある方も多いだろう。

しかし、この米国道路安全保険協会(IIHS)が公開した衝突試映像を観ても、キャビンなかほどまで大破した車両がツルだとは分からないかもしれない。同車と2016年型日産「ヴァーサ(日本名:ティーダ)」との衝突実験は、過去20年にどれだけ安全工学が進化したかを示している。古いサニーにどれだけ良い思い出があったとしても、残念ながら安全性の面でひどい時代遅れであることは事実だ。メキシコで今でも新車として売られているこのツルには、我々があって当然だと思っているエアバッグ、ABSなどの装備や現代的なクラッシャブル構造が採用されていないのだ。

2台を40mph(約64km/h)の速度で走らせ、正面から50%オーバーラップさせたこの衝突試験では、ツルはほぼ完全に破壊されており、ドライバーが生還するのは非常に困難だと思われる。対するヴァーサの安全性は期待どおりの結果となっている。

だが悲しいことに、今でも発展途上市場では、旧型車をそのまま継続生産していたり、低価格にするために必要な装備まで意図的に省略したクルマが販売されるのは決して珍しいことではない。以前ご紹介したインド向け車両で行われた衝突試験のビデオを観れば、そのようなクルマはさらに低い速度であっても衝突時に甚大な損傷を受けることが分かる。

熱心なクルマ愛好家が、大昔に生産終了になったクルマを物憂げに思い出し、今も新車で買えればいいのにと願うのはおかしな事ではない。だが、もう作られていないという事実の裏を返せば、そのクルマは現在の新車のようには持ちこたえられないということなのである。



By Antti Kautonen

翻訳:日本映像翻訳アカデミー