足首の不安感をサポートする
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
競技を長く続ければ続けるほど、ケガをした経験は増えるのではないかと思います。特に足首を捻挫(ねんざ)したことのある選手はとても多く、ケガをした後のリハビリやトレーニングが不十分であると、ケガから復帰してプレーを続けていても不安感があったり、関節のゆるみを感じたりすると思います。今回は足首のケガを経験した後、普段の練習でできるコンディショニングについてお話をしたいと思います。
足関節捻挫は野球に限らずスポーツ全般において、最も多いケガの一つです。捻挫とは文字通り「捻る(ひねる)」「挫く(くじく)」ことであり、着地のときや、切り返し動作のとき、また接触プレー(相手選手やベース等)などによって受傷します。捻挫には大きく分けて二種類あり、足部を内側にひねってしまう(足裏が内側に向く)内反(ないはん)捻挫と、足部を外側にひねってしまう(足裏が外側に向く)外反(がいはん)捻挫があります。
足関節の構造上、内反捻挫が約9割を占めるといわれており、その多くは外側くるぶし周囲の靭帯などを痛めるものです。反対に外反捻挫では内側くるぶし周囲の靭帯などを痛めます。また捻挫の重症例では足部の骨折を伴うものもあります。
受傷した直後に適切な応急処置(RICE処置)を行い、腫れを最小限にとどめるようにして患部を安静にさせておくことが、競技復帰を早めることにつながりますが、「試合中に受傷してそのままプレーを続けてしまった」とか「軽い捻挫程度と判断してRICE処置を行わず、時間が経って腫れてきてしまった」といった場合、後々までその後遺症に悩まされることになります。捻挫程度で…と思わずに痛みや腫れ、運動痛などがある場合はまず応急処置を優先させるようにしましょう。
可動域と筋力を回復する患部を安静に保ち数日経つと、痛みなどの炎症症状は軽減することが多いのですが、「痛みがなくなったからプレーに復帰できる」とあせって練習復帰をしてしまうと、また同じ動作で捻挫を繰り返しやすくなります。まずは痛めた足関節が本来の機能を取り戻すためのリハビリテーションやトレーニングを行うようにしましょう。まずは左右を比較しながら関節の可動域(本来動かすことのできる関節の角度範囲)が同じレベルに戻るまで痛みのない範囲で動かすようにします。
足指のグーパーや、足を浮かせた状態からつま先で円や8の字、アルファベットを描く動作、足指でタオルをたぐり寄せるタオルギャザーなどのトレーニングが関節可動域の回復に役立ちます。
関節の動く範囲が正常になったところで、次は筋力を強化します。内反捻挫の場合、足の外側を支える腓骨筋(ひこつきん)を強化することで足の裏が内側に向きやすくなることを予防することができます。チューブなどを使って足を中心から外に開く動作を行い、外側の腓骨筋群の強化を行います。
またつま先を上に持ち上げて脛の前部の筋肉も鍛えるようにするとよいでしょう。筋力レベルにおいても左右差がなくなったところで、初めて実践的な動きを行っていくようにしましょう。特にケガを受傷した時と同じ状況で不安なく動けるようになるまで、足首のトレーニングはしっかりと行うようにしましょう。
[page_break:不安が残るときに試してみたいテーピング]不安が残るときに試してみたいテーピング小指から親指にかけてテーピングを巻くようにする
受傷後、どうしても足首に不安が残るという場合、足の接地が外側に偏っていないかどうかをチェックしましょう。よく拇指球に体重をのせるイメージといわれますが、実際の動作では全体的に小指側に体重がかかってしまい、足の裏全体でしっかり地面をとらえられていない可能性があります。また外側に体重がかかるということは、ちょっとした着地動作などでも足の裏が内側を向いてしまい、内反捻挫を起こしやすいと考えられます。
立った姿勢で拇指球を中心として足の裏全体が使えているかを確認しましょう。また伸縮性のあるテーピングを用いて、拇指球に体重が乗りやすくなるようにガイドすることも出来ます。小指から親指にかけてテンション(テープの張力)をかけ、拇指球を地面に押しつけるようにテープを一周巻きます。これだけでも拇指球に力が入りやすくなりますよ。テープの張力を逆にしてしまうと捻挫をしやすくなってしまうので注意しましょう。
足裏から膝下外側にかけて腓骨筋サポートのテーピング
また筋肉の走行に沿って貼るタイプのテーピングが準備できるときは、腓骨筋に沿って貼ってみるようにしましょう。腓骨筋は足裏から膝下にかけてついている筋肉ですので、足の外側面に沿って貼るようにすると、足裏が内側に向きにくくなり、内反捻挫の予防になります。テーピングでサポートしているところを筋力強化すること(腓骨筋のトレーニング)でも捻挫の再発は防ぐことが出来ます。
捻挫を繰り返さないようにするためにも、まずは足首周辺部の筋力強化と安定性を取り戻すようにし、必要に応じてテーピングなども利用してみましょう。思った以上に不安感が解消されるかもしれません。一方でテーピングに頼りすぎないためにも足関節を中心として、自分で出来るトレーニングやコンディショニングなどを継続して行うようにしましょう。
●捻挫は「ひねる」「くじく」。最も多いケガの一つ。●足裏が内側を向く内反捻挫がおよそ9割を占める●受傷後の応急処置が適切でない場合、長期にわたって痛みや不安感が残りやすい●足首のリハビリ順序は関節可動域の回復、筋力強化、実践的な動きへ●拇指球に体重がかかりやすいように小指から親指にかけて巻くテーピングが有効●足の外側の筋肉である腓骨筋をサポートする巻き方もよい
(文=西村 典子)
次回コラム公開は6月30日を予定しております。
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