ヒーローの世界は男が女を助けるのではない「僕のヒーローアカデミア」10話

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「オールマイト……平和の象徴……いないなんて……
子どもを殺せば来るのかな?」


物騒なセリフで始まったのは、日5枠アニメ『僕のヒーローアカデミア』。超人たちの世界で、能力を悪事に使う敵(ヴィラン)と戦うヒーローを目指す少年少女たちの物語だ。アメコミ×学園バトルもの×『週刊少年ジャンプ』(好評連載中)と理解すればよろしい。

先週放送の第10話「未知との遭遇」は、主人公たちが通う学園へヴィランたちが襲いかかる本格バトルエピソード。1クール(全13話)のクライマックスに向けて、今までに登場したキャラクターが躍動するぞ。

ヒーロー養成校の最高峰・雄英高校で行われる「人命救助訓練」。あらゆる事故や災害が想定された巨大な演習場へと向かう、緑谷出久(通称デク)らヒーロー科1-Aの生徒たち。

そこへ現れたのは死柄木弔(しがらき・とむら)率いる敵(ヴィラン)連合! 敵連合の狙いは、“平和の象徴”として超人社会に君臨するNo.1ヒーロー、オールマイトの抹殺。悪への抑止力がなくなれば、社会は再び混乱を始める――という目論見だ。

ところが、教師でもあるオールマイトは諸事情あって授業には出ておらず、そこにいたのは担任のプロヒーロー・イレイザーヘッドと災害救助が得意なヒーロー・13号、そして出久ら1-Aの生徒たちだけだった。「子どもを殺せば(オールマイトが)来るのかな?」というすべての正義に逆行したセリフを吐くことができる凶悪な死柄木と、大挙して現れた敵連合に対して出久たちはどう戦うのか?

魅力爆発、カエルヒロイン



ヴィランの一人、黒霧の“個性”ワープゲートで散り散りにされてしまった生徒たち。出久は、小柄な少女・蛙吹梅雨(あすい・つゆ)と、さらに小柄なスケベ男・峰田実の3人で、海のような「水難ゾーン」へと飛ばされてしまった。

ここで爆発したのが梅雨ちゃんの魅力! つい思ったことを口にしてしまう梅雨ちゃんの“個性”は蛙。舌は20メートルまで伸び、跳躍、壁への貼り付きも思いのままだ。複数のヴィランに命を狙われるというピンチにも動じない冷静沈着さも大きな武器の一つだろう。あと、小柄なわりにはおっぱいも大きいらしい(抱きついた峰田による)。

連載開始当初はそれほど目立つキャラクターではなかったが、内気な出久にも「梅雨ちゃんと呼んで」とフレンドリーに語りかける距離の近さと、照れる出久に「自分のペースでいいのよ」とサポートするさりげない優しさ、ピンチの場面で爆発する身体能力の高さで人気が急上昇。キャラクター人気投票では6位にランクインするほどになった。悠木碧によるケロケロした声も可愛い。

一方、ヴィランの襲撃にうろたえまくっているのが峰田実。“個性”はもぎもぎ。頭からボールのような物体を無限に生み出すことができる。もぎって投げて、相手にくっつけば一日中離れない。個性自体は強力だが、どう考えても対人戦闘には不向き。そして本人が超弱虫。梅雨ちゃんに「本当にヒーロー志望で雄英来たの?」と言われてしまう始末。

そんな2人の個性と自分の個性を組み合わせて、危機を脱出するプランを練り上げたのが出久だ。気弱な少年だったが、もともとピンチには強く、ヒーロー科に入学してからはさらに芯が強くなっている模様。経験は人を強くするんだなぁ。

小さなコマも丁寧に描写する『ヒロアカ』



ここまで10話を使って、コミックス2巻の途中までしか描いていないという丁寧さを発揮しているアニメ『ヒロアカ』。原作の大切なセリフを一つも(!)漏らさない一方、少ないコマで処理されていたキャラクターの複雑な動きや個性をわかりやすく描くことで、少年向きアニメらしいとっつきやすさを生み出している。

なぜ無敵の能力を持つ13号が黒霧に遅れをとってしまったのかもよくわかるし、小さなコマの片隅に描かれていた飯田天哉がクラスメイトの砂藤力道(さとう・りきどう)と麗日お茶子(うららか・おちゃこ)を助けるところ、障子目蔵(しょうじ・めぞう)が瀬呂範太(せろ・はんた)と芦戸三奈(あしど・みな)を庇っているところもしっかり描写されている。男が女を助ける、という定型的な描き方ではなく、できる人ができることをする、というのが『ヒロアカ』の考えるヒーローの定義なのだろう。そういえば、わりと可愛く描かれていた女性ヴィランもイレイザーヘッドに容赦なく蹴り飛ばされていた。ヒーローの世界は男女平等だ。

さて、死柄木をはじめとするヴィランたちの不穏さはまだまだ薄めだが、次回以降どのように発揮されるかが楽しみにしたい。というわけで、本日放送の第11話は「ゲームセット」。ヒーロー科の生徒VS凶悪な敵連合の戦いがヒートアップするはずだ。それではご唱和ください。さらに向こうへ、「Plus Ultra!」。
(大山くまお)