【埼玉展望・後編】上尾、山村学園、聖望学園などの有力校は浦和学院・花咲徳栄を阻むことができるか?
前編では埼玉の二強、花咲徳栄、浦和学院の戦力を紹介しました。後編では、春季県大会ベスト4〜ベスト8、そしてベスト8以外の有力校、選手を紹介します。
上尾、山村学園、聖望学園の有力校の中心選手は?渡部 勝太(上尾)
春季大会ベスト4まで勝ち上がり今夏の大会Bシードで迎える上尾は、何といってもタイプの違う右腕・山下 和音、渡部 勝太、阿部 玄太の三投手の継投が鍵だ。特に140km越え右腕渡部がキーとなる。打線では山口 正悟、増田 陸、大橋 健のクリーンナップを中心に機動力も使え、小技もそつなく使える選手が揃っている。
打線も一冬越え力強さを増し、ベスト4で対戦した浦和学院・榊原 翼に対しても振り負けなかった。後は、経験を含めた場慣れの部分か。浦和学院戦で最終回見せたようなミスは、大舞台での経験の部分が大きい。その部分が克服できれば、元々投手は三枚おり、夏の大会での疲労は最小限にできる布陣であるだけに32年振りの甲子園も現実味を帯びてくる。
山村学園は、佐々木 大輔・日置 勇斗・山本 大貴(たき)など投打にポテンシャルの高い選手を多く擁し、昨秋ベスト8・今春も創部初のベスト4まで進出した。左腕の佐々木は浦和シニア時代からの投手経験も豊富で、スピードこそないが、テンポ良く相手を見て投球ができるクレバーなタイプの左腕だ。問題はベスト4の花咲徳栄戦でも露呈したが、例えば二死一、三塁での攻守での状況判断など細かい部分の詰めの甘さだ。この点を夏までに修正できれば、佐々木、2年生右腕・鵙尾 匠吾、野手では山本、日置も投げられるなど豊富な投手陣を擁するだけに、夏も山学旋風を巻き起こすことは可能であろう。
聖望学園は今春花咲徳栄に敗れベスト8に終わったが、津田 将治、大野 亮太、渡部 陸を軸とした打線は活発でつながりも良く旧チームよりも強力だ。むしろ、問題は投手陣にある。旧チーム松本 龍尭のような大黒柱が今年はいない。岡本 幹成監督は右サイドスローの中川 航に期待を寄せているが、安定感が課題となっている。もし、夏までに彼が一本立ちすることがあれば上位進出も見えてくるであろう。
[page_break:春日部共栄、大宮西、川越東といった近年の上位進出校の活躍も見逃せない]春日部共栄、大宮西、川越東といった近年の上位進出校の活躍も見逃せない鈴木 慎吾(春日部共栄)
昨秋関東大会へ出場した春日部共栄も今春はベスト8に終わった。打線は関谷 将貴、山崎 星夜、濱田 大輔、又吉 一瑳など長打力のある選手達が、基本に忠実にセンター返しを中心にコンパクトに振り抜き、切れ目がない。問題は守備と投手陣だ。ベスト8の山村学園戦では守乱で自滅したような格好になってしまった。
投手陣も大道 温貴、鷹休 翔、鈴木 慎吾、1年生左腕の渡部 太陽など頭数は揃っているが、大道、鷹休、鈴木などオーソドックスな右投手が多く、相手に対策を立てられやすいのが課題か。期待の渡部も素材は一級品だが、まだまだ1年生、経験値や完成度はまだこれからで、今夏に大事な場面で登板する可能性は低い。これまで、勝負所で逃げの投球になることが多かったエース大道の変貌に期待がかかる。
春日部東は投手陣の頭数が豊富で、継投策で乗り切って戦うことになりそうだ。また、西武文理は、地区予選で川越東を破り勢いに乗った。エース堀越 将郎を中心にまとまりある好チームだ。打線では盛田 英紀、福井 夕也、馬場 翔大などに長打があり、機動力も積極的に使ってくる。欲を言えば堀越以外にゲームを任せられる投手が出てくれば上位進出も考えられるのであるが。
ノーシードの中にも、ショート中島 義広を中心としセンターラインが鍛えられている大宮西、1年生左腕宮崎 颯や海崎 雄太など今夏は1年生中心で戦うことになりそうな埼玉栄。藤野 優斗を中心に打線でも川村 駿介、増島 緩人、永田 琢己など長打力のある選手を揃え昨秋ベスト4進出した狭山ヶ丘。エース唐沢 裕貴を中心とした打線も振れている西武台、三上 ケビン、室賀 優斗、中山 雄太など2年生中心の叡明。好投手遠藤 稔擁し1年生にも好素材が入部したふじみ野など多数の上位進出候補のチームがあるが、中でも一番の注目は投打の柱・星野 裕帆を擁し、昨秋ベスト8で浦和学院に延長の末敗れた川越東であろう。
佐々木 大輔(山村学園)
打線は旧チームほどの迫力はないが、野口、青山 陽哉、星野、浪江 龍太郎は長打力があり、何よりも今年のチームは機動力が使える。投手陣も星野、島田 海都が共に140km近い球速を誇り、関谷も球に力がある。ここに2年生左腕の苅部 祥太郎が絡んで来れば上位進出も狙えるであろう。
これらのチームがどこに組み込まれるかにより大会の潮目を変える可能性を秘めている。2強は特にピーキングの面で考えても早い段階では当たりたくないであろう。過去10年以上、春のAシードがそのまま夏決勝のカードになったことはない。つまり必ずどちらかは早期敗退の憂き目にあっている。今年の2強の力は抜けているが、埼玉の夏は長丁場であるだけに順当にはいかないことは述べておきたい。
事実、昨夏の準優勝校はノーシードの白岡である。一戦一戦成長して、波に乗り、浦和学院までも飲み込んだ。埼玉の夏はどこが勝ってもおかしくはない。
(文・南 英博)
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