昨年、霞ヶ浦が甲子園出場を決めた。今年は常総学院が注目されているが、夏へ向けて戦力の状況はどうなのか?またベスト8まで勝ち進んだチームやベスト8以外のチームでも見逃せないチーム・選手を紹介していきたい。

優勝の常総学院は各選手が成長 快進撃を見せた石岡一の主力選手は?左から高崎 大幹(石岡一)、有村 恒汰(常総学院)

 優勝した常総学院は、準々決勝で藤代に15安打の猛攻を仕掛け3投手の継投で8対2と快勝すると、準決勝は水戸商に2対1で競り勝ち、4年連続19度目の関東大会出場を決めた。さらに決勝では石岡一に4対3で逆転サヨナラ勝ちし、3年連続13度目の優勝を果たした。

 今大会は1年秋から背番号1を守り続けてきたエース左腕の鈴木 昭汰が肘痛を理由にベンチメンバーを外れた。代わりに背番号1を担った右サイドの倉田 希はサイド特有の横滑りするスライダーを駆使し、3試合21回で被安打18、防御率2.14と優勝に大きく貢献した。

 左腕の伊藤 龍は中継ぎで全5試合に登板。アンダースローとサイドスローとオーバースローを巧みに操る投球で打者を翻弄し、6回を防御率0.00。右腕・樫村 雄大は2試合に先発し、力強いストレートと縦系の変化球で15回を防御率0.00と打者を寄せ付けなかった。

 打者で特に目立ったのは上位を打つ有村 恒汰と陶山 勇軌だ。有村は今大会当たりに当たった。24打数12安打のうち、二塁打が6、三塁打が2、本塁打が1。長打率1.083と驚異的な数字で勝利の突破口を開いた。陶山は有村とは対照的に全9本が単打であったが打率.429をマークした。常総学院はセンバツと今大会で捕手のパスボールが多かったので、この点は夏までに修正しておきたい。

 準優勝の石岡一は、準決勝で昨夏優勝の霞ヶ浦を延長12回5対4で下し、春秋を通じて初の関東大会出場を決めた。石岡一はエース右腕・高崎 大幹が全5試合に登板。最速140キロ弱のストレートと腕のよく触れるスライダーは精度よく低めにコントロールされ、37回を被安打26、防御率0.97と抜群の安定感を誇った。打線では2番の濱田 虎太郎や3番の飛田 直樹の勝負強さがひときわ目立った。また1年生ながら中軸を任される深作 瑠偉は打席での迷いがなく思い切りの良いスイングで今後が楽しみな存在だ。

[page_break:4強〜8強の状況]4強〜8強の状況飯村 将太(霞ヶ浦)

 4強には昨夏の覇者・霞ヶ浦と、水戸商が残った。霞ヶ浦は準決勝で石岡一に延長12回で敗れた。投手陣は、先発を任される根本 将汰や遠藤 敦志が良い形でつなぎ、抑え役に回ったエース右腕・飯村 将太が終盤の舵取りを担うパターンはこの夏も基本となりそうだ。打撃陣は中軸の佐野 如一が2本塁打、根本 薫にも1年夏以来の3割越えと好調だったので、夏まで維持したい。

 根本 将汰は投手、右翼手、一塁手とめまぐるしくポジションをチェンジし、打順は1番もしくは中軸の重責を担った。打席に専念させられればより結果を残せると思うが、こればかりはチーム事情なので仕方ない。ショートの小川 翔平は怪我でベンチ外となったが夏には間に合うか。

 水戸商は準決勝で常総学院に1対2と惜敗を喫した。エース右腕・瀧 功聖はコントロール良く外角のスライダー中心に組み立てるまとまりのある投手。打撃では4番を務めチームを牽引する。水戸商の夏の勝ち上がりは投打の要である瀧にかかっている。瀧の女房役・5番捕手の野本 浩喜は肘にキネシオテープを巻いていたので万全ではなさそうだが、それでも二塁送球タイムは1.90秒台前半とまずまず。遊撃手で主将の山藤 研太には肩も足も地区トップレベル。夏には打撃の開花に期待したい。

 8強には取手松陽、藤代、土浦日大、常磐大高が残った。取手松陽は準々決勝で石岡一と7回まで互角の投手戦を繰り広げたが、終盤に失点し、打線は高崎 大幹を捉え切れず0対4と敗退した。取手松陽はエースで4番の古田島 成龍の力が投打で突出している。特に打者として、県大会3試合で日立一・鈴木 彩斗、東洋大牛久・有馬 海人、石岡一・高崎 大幹と、並み居る右の好投手から毎試合ヒットを放ち通算12打数7安打と結果を残した。

 背番号3ながら1番捕手を務める松本 胤紀も古田島に負けない高い身体能力を持つ楽しみな存在。遊撃手の石田 雄大との俊足コンビは相手にとって脅威だ。

 藤代は常総学院の3投手の前に7安打、2対8で敗れた。打撃の目玉の存在は、3番で左打ちの立松 由宇と4番で右打ちの立松 峻(双子)だ。両者ともにもの凄いスイングで、一振りで形勢を逆転できる。反面、球威のある投手がおらず、強打の相手とロースコアの接戦に持ち込むことは難しいため、打ち勝つしかない状況にある。

[page_break:土浦日大、常磐大高の躍進も見逃せない]土浦日大、常磐大高の躍進も見逃せない左から平野 龍翔(常盤大高)、関根 一沙 (土浦日大)

 土浦日大は小菅 勲監督が就任してすぐの大会でいきなりの8強入り。背番号1の蓮見 航平が直前の練習試合で芳しい結果を残せず、地区予選で背番号18の富田 卓(1年)を主戦起用したがこれが見事にハマった。富田は準々決勝の霞ヶ浦戦でも先発し、7回まで2失点と粘投を見せ昨秋の覇者を相手に試合を優位に運んだ。8回裏に逆転され涙をのんだものの、試合を作る能力が高く今後も注目すべき投手である。打撃では3番・関根 一沙の対応力に光るものがある。

 常磐大高は昨年4月から海老澤 芳雄監督が指揮を執るようになり、今回10年ぶりに春の県大会勝利を収め、創部以来初の春8強入りを果たした。準々決勝では水戸商に1対2と惜敗したが、エース右腕・平野 龍翔は3試合19回1/2で6失点と、安定感のある投球で8強入りの原動力となった。打撃は田崎 誠也や山田 起熙ら2年生が中軸を担う。

 以上が春のベスト8に残ったチームだ。昨年同様のシード数の場合は、さらに秋に4強入りを果たした日立一と太田一を加えて全部で10チームがシード校となる。

 後編では、ベスト8以外で注目すべきチームは夏へ向けて注目したい選手たちを紹介していく。

(文・伊達 康)

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