ヒッグス粒子研究のデータを音楽にライブ変換する『Quantizer』公開。モントルー・ジャズ・フェスティバルから発展

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スイス・ジュネーブにあるCERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC:Large Hadron Colider)では、新しい粒子やその相互作用などを探索するプロジェクトATLAS実験が行われています。この実験で繰り返される陽子の衝突のリアルタイム情報を、音楽に変換するウェブアプリ「Quantizer」が公開されました。Quantizerは、カナダ・ビクトリア大学の学生Juliana CherstonとEwan Hillによるプロジェクトで、ヒッグス粒子を発見しようとするATLAS実験の結果データをリアルタイムに取り込み、自動的に音楽に変換します。

CERNのATLAS-Liveウェブサイトでは、毎秒40万回ともされる陽子衝突実験の結果を視覚化して公開しています。Quantizerではこの実験結果データを取得してノイズフィルターにかけ、可聴周波数帯域へとシフトし「Cosmic」「House」「Suiter Samba」といった各ジャンルの音楽で使う音階へとシフト、マッピングして再生します。

 

 

サイトを眺めつつ音楽を聴いていると、定期的に新たなデータがロードされ、曲調が微妙に変化するのがわかります。ただ、ATLAS実験では1秒間に40万回とも言われる陽子衝突実験を実施していることから、Quantizerではその生データをリアルタイム変換しているというよりは、ATLAS-Liveでグラフィックに変換されるデータを利用して音楽化している模様です。

なお、ATLAS-Liveで画像変換されたデータはQuantizerのサイトでも音楽とともに表示しています。

ちなみにQuantizerは、2015年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのイベントが出発点となっています。モントルー・ジャズ・フェスティバルでは音楽フェスティバルの傍らで各種のセミナーやワークショップが開催されており、2015年には先日死去したプリンスも出演した音楽ステージの裏で、CERNの研究者がアーティストとのコラボ「Sound Sculptures:音の彫刻」を発表していました。このコラボイベントでATLAS実験結果データをライブで音楽に変換したのがきっかけとなっています。

Quantizerのサイトでは当時の音楽データも聴くことが可能です。試しに聞いてみたところ、少しせわしないQuantizerのリアルタイム演奏に比べるとテンポダウンしており、ゆったりとした雰囲気の音楽を楽しむことができます。