凛としたカウンターで堪能する卓越した職人技。そんな鮨屋の醍醐味をしっかり備えながら、財布に優しい店が渋谷には多い。

若手からベテランまで、個性豊かな4軒をご紹介。



「酢飯は4種類の米をブレンドしています」L字型に連なるカウンターの中央で、端正な振る舞いで握る相澤博久氏
若き大将がテンポよく供する“噛み締める握り”が秀逸『鮨 あい澤』

宇田川町


六本木『鮨 なかむら』などで研鑽を積み、独立を果たした相澤博久氏。30代という若さながら、15年以上にわたって培った技術が伴い、貫禄すら感じる。

つまみは、品よくまとめながらもその旨さに酒が進む。例えば、鮟肝の繊細さは、口にした瞬間に驚きを隠せないだろう。

握りは「口の中で噛み締めることで、ひとつの味を作り上げたい」と語るように、じっくり味わいたくなる程良い柔らかさ。通いたくなる一軒だ。



丁寧に熱を入れることで、なめらかな口当たりに仕上げられた鮟肝



かすごは、お湯に潜らせ、昆布〆にしている



控えめなツメをまとった煮蛤は、5月初旬頃まで



上品な風味の中トロ。かすご・煮蛤・中トロは、おまかせ(¥15,000)からの一例



カウンターのほかに、4名まで座れる小上がりがある




右から醤油とポン酢で溶いた肝をのせたかわはぎ、鹿児島出水の1本釣りの鯵、愛知産の赤貝
ベテランの店主がもてなす創業20年をむかえる安心感『すし菊地』

神泉


1997年の創業以来、旧山手通り沿いに店を構える一軒。生と茹でた2種類の蟹から始まるおまかせ(¥10,000)は、刺身や焼き物など多彩なつまみが続き、握りは旬の種を中心に10貫。

酢飯は、3種の米をブレンドし、精米したてにこだわる。つまみの盛り合わせで登場するまぐろのやまごぼう巻きなど、昔からのオリジナルも人気。

現在、店主・菊地 浩氏がひとりで切り盛りするため、事前に予約をしてから訪れたい。



定番のまぐろのやまごぼう巻きのほか、シマエビやツブ貝など、おまかせの3皿目で出される盛り合わせ



緩やかなカーブを描くカウンター席



菊地浩氏「長野県の日本酒“高天”とぜひ!」


おまかせ鮨が4,860円のコスパ最強な鮨店が登場!



金目鯛(右)に使うのは、厚みのある大阪の求肥昆布。さより(中)は1日寝かせたもの。まぐろ(左)は、大トロと中トロの中間の程良い脂身
2種の酢飯による握りを洗練されたモダンな空間で『五徳』

神山町


文化村通りに並行する遊歩道に面した洒落た店構え。外観や暖簾をはじめ、五角形の箸まで、随所に店名“五徳”をモチーフにしたデザインがちりばめられている。

つけ場に立つのは、等々力『すし処 會』で修業を重ねた上野純平氏。新米と古米をブレンドした酢飯は、赤酢と米酢の2種を用意し、種によって使い分ける。

おまかせは、4〜5皿のつまみと握り9貫で1万円以内。上品な個室もあり、接待にも打って付けだ。



一度身をほぐして詰め直した毛蟹と煮鮑。おまかせ(¥9,180〜)からの一例



鮨屋には珍しい弁柄の美しい壁



上野純平氏「来年で10年目をむかえます」




炙ることで皮目も美味しくいただけるのどぐろ。旬をむかえたとり貝。浅めに〆た小肌
ロンドン帰りの大将が握るアレンジ自由自在なコース『鮨○×』

円山町


店主・杉浦秀樹氏は、7年間にわたってロンドンでも鮨職人として活躍した人物。店名は、記号なら外国人にも覚えやすいだろうと命名された。

小上がりの粋なカウンターでいただけるコースは、食べ手のわがままを叶えてくれるような選択が可能。

例えば、前菜盛り合わせ、お造り、焼物、鮨のすべてを選べば9,720円だが、お造りなしなら8,100円、鮨のみなら4,860円など、明確にメニューに記されているのも嬉しい。



筍の木の芽焼や蛍烏賊芥子酢味噌、うるいのおひたしなど華やかで手の込んだ前菜盛り合わせ



現代風でスタイリッシュな空間



杉浦秀樹氏「食べたいものを自由にオーダーしてください」