筆者は“家電ライター”という仕事柄もあって、そこそこ高級なドライヤーを使用しています。とはいえ、よく聞かれるのが「お手頃でよいドライヤーってどれ?」というもの。たしかに、世の中には2,000円以下のノンブランドドライヤーもあります。いきなり、その10倍以上の価格となると、購入に二の足を踏んでしまうかもしれません。

普及価格帯のドライヤーで評価が高いといえば、パナソニックの「イオニティ」シリーズでしょう。大風量で、髪によいというイオン発生機能を搭載し、なんといってもパナソニック製という安心感があります。そのなかでも、ドライヤー人気ランキングでつねに上位にあがっている「EH-NE67」は、価格.com最安値価格が4,460円(4月10日現在)と、5,000円以下。値段の差はどれほどのものか。さっそく、その実力を使ってチェックしてみました。

シンプルで機能的なデザイン

EH-NE67を最初に見た感想は「あれ? 意外と高級そう」というもの。低価格ドライヤーといえば、最低限の機能を備えたシンプルなものが多いものです。しかし、EH-NE67はメインの吹き出し口上部に2つのサブ吹き出し口を搭載する独特な形状。これは、メイン吹き出し口からは送風し、上部サブ吹き出し口からはマイナスイオンを吹き出すためだそう。独立したイオン吹き出しノズルを搭載することで、マイナスイオンが髪に行きわたりやすいのだとか。

さらに、速乾ノズルには、外部と内部に別形状をした2重ノズルを採用。デザインも白とゴールドの高級感あるツートンカラーで、低価格帯ドライヤーとは思えない凝った造りになっています。

高級感があるツートンデザイン。サイズは、21.2(幅)×9.2(奥行)×22.5(高さ)cm。重量は約530g。低価格帯ながら消費電力1,200Wというパワーもポイント

操作はSET(弱)、DRY(中)、TURBO(強)の風がでるスライドスイッチと、温風・冷風の切り替えができるボタンで行います

温風などを力強く吹き出すメイン送風口と、上部左右にあるマイナスイオンを吹き出す送風口の、3つの送風口があります

独自形状の速乾ノズル。中央ノズルから強風、外側から弱風を吹き出すことで、乾燥速度が上がる仕組みだという

ハンドル裏には「イオンチャージパネル」搭載。ここを握って髪のマイナス帯電を逃がすことで、マイナスイオンが付着しやすくなるらしい

ハンドルは折りたたむことが可能なので、コンパクトに収納できます

ハンドルは折りたたむことが可能なので、コンパクトに収納できます

ちなみに、パナソニックといえば家庭用高級ドライヤーの定番ともいえる「ナノケア」シリーズを発売しています。このナノケアで使用できるイオンは「ナノイー」。同社によると、ナノイーは一般的なマイナスイオンの約1,000倍の水分に包まれているため、より長寿命かつ髪によいのだそう。

残念ながら、今回試用したEH-NE67はナノイーではなく一般的なマイナスイオンを吹き出します。また、ナノケアに搭載されている「スカルプモード」などのヘアケア機能も搭載していません。とはいえ、ナノケアシリーズといえば15,000円以上する高級機なので、このあたりの機能差は当然といえるでしょう。ただ、1つ気になったのが、ナノケアでは手でパカッと外せた背面の吸気口フィルターが、EH-NE67ではネジ止めされていること。ホコリがつきにくい設計にはなっているということですが、フィルターだけ外して水洗いできないのは残念です。

吸気口側のフィルターはネジ止めされていて外れません。説明書には「ティッシュなどで汚れをふき取る」とありますが、フィルターには凸凹があるので少々拭きにくい

ドライヤーは風が命! 気になる風量は?

ところで、筆者がドライヤーを選択する基準はズバリ「風圧」があるもの。髪は濡れたままだと傷みますが、時間をかけて熱にさらす乾かし方も厳禁。そのため、一番よいのは低温で、そして大風量の風で素早く乾かすことなのです。

ドライヤーは、メーカーによっては風量や風速などが公開されていませんが、現在公表されている家庭用ドライヤーで、一番大風量な製品は2.0立方m/分です。そして、EH-NE67は、なんと1.9立方m/分という大風量。家庭用ドライヤーは、1.2立方m/分あたりの製品から「大風量」と呼ばれたりするので、これだけでもEH-NE67は期待が持てます。ちなみに、イオニティの上位現行機種「ナノケア EH-NA97」は風量1.3立方m/分。なんと、スペック上は上位機種よりずいぶん風量があるのです。

そんなわけで、非常に期待して使用してみたのですが……実際に使用した最初の感想は「なるほど、この位か……」というもの。もちろん、決して風圧が弱いわけではありません。むしろ「一般的な大風量タイプドライヤーのなかでは強め」といったところ。5,000円クラスのドライヤーとしては、かなり優秀です。我が家には5年前に購入した上位モデルナノケアシリーズのEH-NA92(風量1.3立方m/分)がありますが、「これよりはちょっと強いかも?」といったレベルの風量に感じました。

低価格帯ドライヤーにしては、風量はかなりパワフル。筆者の長い剛毛もグイグイ吹き飛ばしてくれます

低価格帯ドライヤーにしては、風量はかなりパワフル。筆者の長い剛毛もグイグイ吹き飛ばしてくれます

EH-NE67と、数年前に購入したナノケアEH-NA92で簡易的ながら風の強さを比較。帽子に風をあて、どこまで動くか確認したところ(それぞれ10回)、イオニティEH-NE67は平均76cm、ナノケアEH-NA92は平均65cm。使った感覚では「ちょっと強いかな」としか思わなかったのですが、風量の違いは意外とはっきり出ました

外から低温の風を当てるので髪が傷みにくい

風の強さ以外でEH-NE67を気に入ったのが、温風が「熱すぎない」こと。ドライヤーの多くは吹き出し口が100℃以上になりますが、我が家で計測したところEH-NE67の温風温度はターボモードの最高時で64℃でした(速乾ノズル使用時)。また、ホットモードで乾かしていても、上部にある二つのマイナスイオン吹き出し口からは冷風も吹き付けます。このため、髪が熱くなりすぎないのです。

髪にとって熱はダメージの元。とくに、濡れた髪の毛はキューティクルが開いてガードが弱っているので、60℃以上の熱でもダメージを受けるそうです。そのため、最近は50〜60℃ほどにしかならない「低温ドライヤー」が各社から発売されています。EH-NE67は、まさに髪にダメージを与えにくい、この「低温ドライヤー」のようなドライヤーでした。

温風時ターボモード時の速乾ノズルぎりぎりの温度を計測すると、温度は最大でも64℃でした

温風時ターボモード時の速乾ノズルぎりぎりの温度を計測すると、温度は最大でも64℃でした

イオン吹き出し口部分からは冷風が吹き付け、髪の温度上昇を抑えます。こちらは温風時ターボモードでも27℃にしかなりませんでした(室温22℃時)

また、前述した我が家のナノケアでは、筆者の髪を乾かすのに平均して8分ほどかかりますが、EH-NE67で数回髪を乾かしたところ、平均約10分ほどでした。EH-NE67は風圧がそこそこあるため、送風温度が低くても乾燥時間が劇的に長くなることはなさそうです。ちなみに、スポーツジムにある備え付けの1000Wのドライヤーで乾かしたところ、なんと乾燥時間は約18分。EH-NE67の優秀さを再認識できました。

髪が高温にならないためか、ブロー後の髪の状態も良好。起き抜けで「うねり」があり広がる筆者の髪も艶のあるストンとストレートになりました

まとめ

スポーツジムや銭湯の脱衣所にあるドライヤーを使って「ぜんぜん髪が乾かない!」とイライラしたことはあるでしょうか。ロングヘアで、剛毛かつ毛量が多い筆者は、外で髪を乾かすたびに、この思いをかみしめていました。

今回は低価格ドライヤーをレビューということで、あのイライラをまた味わうことになるかも……などと思っていました。しかし、予想以上にパワフルな風量にいい意味で裏切られた気分です。1万円以上する「速乾タイプ」ほどの風の勢いは実感できませんでしたが、大風量タイプのドライヤーとしては非常に優秀。価格以上の性能がある製品なので、特にコストパフォーマンスを重視する人は非常に満足できる製品だと感じました。


>> 5,000円で買えるドライヤー「パナソニック イオニティ EH-NE67」が人気の理由 の元記事はこちら