格差社会の底辺は、夢を見ることさえ許されないのか「僕のヒーローアカデミア」2話
『週刊少年ジャンプ』連載中の堀越耕平による人気マンガのアニメ化『僕のヒーローアカデミア』(以後『ヒロアカ』)。第1話はじっくりとタメを効かせたスタートだったが、先週放送の第2話からはいよいよ熱く燃える展開に突入! あらためて振り返ってみたい。
世界人口の8割が、一種の超能力である“個性”を持つ社会。そこでは、個性を活かして悪人を取り締まるヒーローが職業として認められていた。
緑谷出久(いずく)はヒーローに熱烈に憧れる14歳の少年。しかし、彼には他のみんなが持っているような個性がなかった。つまり、“無個性”である。
平和の象徴とも呼ばれるNo.1ヒーロー、オールマイトに出会った出久は、必死の思いで「個性がなくてもヒーローはできますか!?」と問いかけるが、オールマイトの返事はシビアだった。
「プロはいつだって命がけだよ。個性(ちから)がなくても成り立つとは、とてもじゃないけど口にできないね」
無敵と思われたオールマイトだが、ヴィラン(敵)との激闘で肉体を蝕まれていた。ヒーローとして活動できるのは1日3時間が限界。ヒーローが厳しい仕事だと知り抜いているからこそ、いい加減なことを言うことはできなかったのだ。
ずっとヒーローになることを夢見ていた。でも、ヒーローになれないという現実から目を背けていただけだった。憧れのヒーローに現実を見ろと言われ、出久は打ちひしがれる。
その頃、オールマイトが倒したと思ったヘドロ型のヴィランが再び現れる。ヴィランは、出久の幼馴染で、強力な個性の持ち主である爆豪勝己の体を取り込んでいた。ヘドロと爆炎のマッチングに、集まったヒーローたちも手も足も出ない。
ヒーローになる夢を諦めようとしていた出久だったが、苦しんでいる勝己の姿を見て、思わず助けようと駆け出してしまう。自分には何もないのに。自分は何者でもないのに。
出久の行動に心動かされたオールマイトは、命懸けの必殺技を放ってヘドロ型ヴィランを撃退。そして――礼と訂正、そして提案のため、出久の前に現れる。
「トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ。『考えるより先に体が動いていた』と」
泣きじゃくる出久に、オールマイトはこの物語のメインテーマである力強い言葉を与える。出久が、ずっと言ってほしかった言葉だ。
「君は、ヒーローになれる」
原作に忠実なれど、ポイント、ポイントで細かな描写を行っているのは第1話と同じ。ヘドロ型のヴィランを詰めたペットボトルを爆豪が蹴るカットもわかりやすく描かれている。また、ヒーローたちによる人命救助や、オールマイトが必殺技を放ったとき、巨大女ヒロインのMt.レディがさりげなく一般市民を守っているところなど、細かな部分がフォローされているのもうれしい。
第2話のテーマは、「夢と現実の相克」だ。幼い頃からヒーローになるという夢を抱き続けてきた出久。だが、出久は“無個性”という現実に直面し続けてきた。あらゆる人からヒーローになるのは難しいと言われ、「ヒーローになれるかな?」と母に問えば、母は泣いて謝った。
「ガキのまま夢見心地のバカはよ… 見てて腹が立つ!」(爆豪)
「夢見ることは悪いことじゃない。だが、相応の現実も見なくてはな、少年」(オールマイト)
4歳にして「人は、生まれながらに平等じゃない」と知った出久は、いわば“個性”の格差社会の中で最底辺に位置する存在だった。
何も持っていない者は、夢を見ることも許されないのか?
現実の前に、跪いていなければいけないのか? いや、そんなことはない。
出久はオールマイトにヒーローの素質を認められた。ヒーローの素質については、以前の記事に書いたとおりだ(本日スタート「僕のヒーローアカデミア」はアメコミ風「アンパンマン」だった)。
ポルノグラフィティの主題歌「THE DAY」の「独り空想に遊ぶ そこで思い描いたことまで恥じるのかい?」という部分も、「夢」という言葉を使っていないが、言っていることは同じだろう。OPアニメでは、この歌詞の部分で出久と爆豪の激突が描かれているが、ライバルの2人の激突という意味以上に、ヒーローになる夢を見る出久と、そんな出久にイラ立つ爆豪の考え方が真っ向から激突しているように見える。
なお、OPアニメの絵コンテは、監督の長崎健司と『血界戦線』で原画を担当してスタッフに「新たなスター誕生」とツイートされた若手アニメーターの伍柏諭が共同で担当している。
「架空(ゆめ)は現実に。言い忘れてたけど、これは僕が最高のヒーローになるまでの物語だ」
どんな人間だって、どんな環境にあったって、夢は見たっていい。夢を捨てきれないのも才能だ。あとは一歩踏み出すか、踏み出さないか。その違いは大きい。
『ヒロアカ』本日放送の第3話「うなれ筋肉」は、出久がオールマイトの指導のもと、雄英高校受験のために必死に努力するお話だ。それではご唱和ください、「Plus Ultra!(さらに向こうへ)」。
(大山くまお)
世界人口の8割が、一種の超能力である“個性”を持つ社会。そこでは、個性を活かして悪人を取り締まるヒーローが職業として認められていた。
平和の象徴とも呼ばれるNo.1ヒーロー、オールマイトに出会った出久は、必死の思いで「個性がなくてもヒーローはできますか!?」と問いかけるが、オールマイトの返事はシビアだった。
「プロはいつだって命がけだよ。個性(ちから)がなくても成り立つとは、とてもじゃないけど口にできないね」
無敵と思われたオールマイトだが、ヴィラン(敵)との激闘で肉体を蝕まれていた。ヒーローとして活動できるのは1日3時間が限界。ヒーローが厳しい仕事だと知り抜いているからこそ、いい加減なことを言うことはできなかったのだ。
ずっとヒーローになることを夢見ていた。でも、ヒーローになれないという現実から目を背けていただけだった。憧れのヒーローに現実を見ろと言われ、出久は打ちひしがれる。
その頃、オールマイトが倒したと思ったヘドロ型のヴィランが再び現れる。ヴィランは、出久の幼馴染で、強力な個性の持ち主である爆豪勝己の体を取り込んでいた。ヘドロと爆炎のマッチングに、集まったヒーローたちも手も足も出ない。
ヒーローになる夢を諦めようとしていた出久だったが、苦しんでいる勝己の姿を見て、思わず助けようと駆け出してしまう。自分には何もないのに。自分は何者でもないのに。
出久の行動に心動かされたオールマイトは、命懸けの必殺技を放ってヘドロ型ヴィランを撃退。そして――礼と訂正、そして提案のため、出久の前に現れる。
「トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ。『考えるより先に体が動いていた』と」
泣きじゃくる出久に、オールマイトはこの物語のメインテーマである力強い言葉を与える。出久が、ずっと言ってほしかった言葉だ。
「君は、ヒーローになれる」
出久は“個性”の格差社会の最底辺
原作に忠実なれど、ポイント、ポイントで細かな描写を行っているのは第1話と同じ。ヘドロ型のヴィランを詰めたペットボトルを爆豪が蹴るカットもわかりやすく描かれている。また、ヒーローたちによる人命救助や、オールマイトが必殺技を放ったとき、巨大女ヒロインのMt.レディがさりげなく一般市民を守っているところなど、細かな部分がフォローされているのもうれしい。
第2話のテーマは、「夢と現実の相克」だ。幼い頃からヒーローになるという夢を抱き続けてきた出久。だが、出久は“無個性”という現実に直面し続けてきた。あらゆる人からヒーローになるのは難しいと言われ、「ヒーローになれるかな?」と母に問えば、母は泣いて謝った。
「ガキのまま夢見心地のバカはよ… 見てて腹が立つ!」(爆豪)
「夢見ることは悪いことじゃない。だが、相応の現実も見なくてはな、少年」(オールマイト)
4歳にして「人は、生まれながらに平等じゃない」と知った出久は、いわば“個性”の格差社会の中で最底辺に位置する存在だった。
何も持っていない者は、夢を見ることも許されないのか?
現実の前に、跪いていなければいけないのか? いや、そんなことはない。
出久はオールマイトにヒーローの素質を認められた。ヒーローの素質については、以前の記事に書いたとおりだ(本日スタート「僕のヒーローアカデミア」はアメコミ風「アンパンマン」だった)。
ポルノグラフィティの主題歌「THE DAY」の「独り空想に遊ぶ そこで思い描いたことまで恥じるのかい?」という部分も、「夢」という言葉を使っていないが、言っていることは同じだろう。OPアニメでは、この歌詞の部分で出久と爆豪の激突が描かれているが、ライバルの2人の激突という意味以上に、ヒーローになる夢を見る出久と、そんな出久にイラ立つ爆豪の考え方が真っ向から激突しているように見える。
なお、OPアニメの絵コンテは、監督の長崎健司と『血界戦線』で原画を担当してスタッフに「新たなスター誕生」とツイートされた若手アニメーターの伍柏諭が共同で担当している。
「架空(ゆめ)は現実に。言い忘れてたけど、これは僕が最高のヒーローになるまでの物語だ」
どんな人間だって、どんな環境にあったって、夢は見たっていい。夢を捨てきれないのも才能だ。あとは一歩踏み出すか、踏み出さないか。その違いは大きい。
『ヒロアカ』本日放送の第3話「うなれ筋肉」は、出久がオールマイトの指導のもと、雄英高校受験のために必死に努力するお話だ。それではご唱和ください、「Plus Ultra!(さらに向こうへ)」。
(大山くまお)