都立武蔵野北vs都立永山
木村君(都立武蔵野北)
スピーディーな試合で、テンポよく進んでいった試合だった。非力で限られた条件でも、一生懸命に練習をしていれば、きちんとした試合ができる。そして、勝てるのだということを示してくれたような都立武蔵野北の試合ぶりだった。
進学校でもある都立武蔵野北は、毎日の練習では午後5時30分には切り上げとなる。グラウンドも決して広いわけではない。そんな環境だが、自分たちでしっかりと練習をこなしていくという姿勢が浸透している。ことに、連係プレーなどはみっちりとこなしている。そんな成果も、この日の試合では十分に発揮することができた。
初回の都立武蔵野北は、一死後に2番・木村君が右中間へ二塁打を放つと、続く石田君も右前打で一、三塁とし、二塁盗塁で二、三塁。二死となってから、5番・根津君の一打が失策を誘って2点を先取。5回にも二死から木村君が四球で出ると、暴投で二塁へ進み、すかさず石田君が中前打で迎え入れた。
7回の得点も、二死から1番中山君が四球で出塁するとすかさず二塁盗塁。さらに捕手のけん制送球ミスもあって、三塁まで進んだ直後、木村君がきっちり帰した。
木村君は、何らかの形でことごとく得点に絡んでおり、この日のラッキーボーイ的存在になった。守っても、都立武蔵野北は本来のエース西尾君がインフルエンザで出場できず、遊撃手も欠いているという状態ではあったが、巧みな継投で都立永山打線を交わした。
都立永山・鷲森君
先発した一井君は身体を深く沈めていく右アンダースローで、制球もよかった。5回を失策絡みの1失点のみに抑えた。「欲を言えば、6回投げてほしかったかなぁというところもありましたが、内容としては悪くなかったです」と、西谷秀晃コーチは欲張りだ。2回には先頭の仁平君に三塁打されたが、その後を丁寧な投球で抑えたのは見事だった。そして、6回からは左サイドスローの鍛治君につないだが、変則気味のフォームで4イニングを1安打のみに抑えて無失点。まさに、投手はスピードや球威だけではなく、制球と配球でも十分に抑えていかせるのだということを示してくれた。
「こういう戦い方しかできませんけれども、素質はなくても練習をきちんとやっているなということは、見てもわかっていただけたと思います」と、千葉智久部長は胸を張った。新2年生、新3年生どちらも14人ずつで女子マネージャー1人という布陣。派手さはなくても、普通の高校生が一生懸命に部活動を励んで頑張っているという雰囲気が伝わってきて清々しいチームだった。
ミスがことごとく失点につながってしまったことが悔やまれる都立永山だった。それでも淡々と投げていた鷲森君、センターからリリーフした島田君ともによく踏ん張ったといえよう。自分たちの“今”の力をお互いに出し合っていった、春季大会の好試合といってもいいであろう。
(取材・写真=手束 仁)
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