2016年の高校野球を占う【大阪編】「大阪桐蔭、履正社だけではない大阪の有力校たち」
春夏通算甲子園勝利数350は47都道府県トップ。全国屈指の激戦区・大阪には甲子園でも上位を狙える強豪がいくつもひしめいてる。注目度が高い今年の大阪の状況を追ってみた。
大阪を代表する2強 大阪桐蔭・履正社の今年の布陣を紹介中でも毎年大きな注目を集めるのが大阪桐蔭。甲子園通算勝率は8割を超える。昨秋の近畿大会でも優勝を飾り、神宮大会でもベスト4。今年も投打共に選手層は厚い。旧チームから残る中山 遥斗(2年)、永廣 知紀(2年)の二遊間コンビとキャプテンの吉澤 一翔(2年)が上位打線を打ち、強肩強打の捕手・栗林 佑磨(2年)ら下位打線にも長打力のある打者が並ぶ。投手陣も150km/h左腕の高山 優希(2年)を主戦に岩本 悠生(2年)、香川 麗爾(1年)が控える充実の布陣。この戦力にさらに中学時点で140km/h以上を計測した投手や打撃でも評価の高い頼もしい新入生が加わる。チーム内の競争激化は必至だ。
寺島 成輝(履正社)
大阪桐蔭のライバル・履正社の命運は大黒柱が握っている。入学時から注目を集めた寺島 成輝(2年・2016年インタビュー)は、名門で1年夏からベンチ入りを果たし、新チームになると全国トップクラスの先輩右腕2人を押し退けてエース番号を背負う。そして、最高学年になると投手野手の分業制が主流となる中、エースと4番とキャプテンの3重の責任でチームの中心を任される。球威、体格、馬力に優れ今秋ドラフトの1位候補との呼び声高い。
ただしこれまで大阪桐蔭の壁に阻まれ甲子園出場は無し。昨秋は準決勝で対戦し1対2と1点及ばず。3位決定戦でも阪南大高を寺島が1失点に抑えたが、打線も無得点に抑えられるなどチームとしては寺島を援護出来る打力が課題か。4季遠ざかる甲子園へ、全国屈指の大型サウスポーがラストイヤーでのリベンジに燃えている。
近畿大会出場の大阪商大堺、阪南大高、昨夏出場の大阪偕成学園も十分な対抗馬昨秋優勝の大阪商大堺はエース・神田 大雅(2年)の出来が鍵を握る。188cmの長身から投げ下ろすストレートが武器で下級生の頃から期待をかけられていたが、粘り切れない一面もあり全幅の信頼を得るまでには至らなかった。それでもエース番号を背負った昨秋は東海大仰星戦で1失点完投、決勝の大阪桐蔭戦では何度もピンチを作りながら粘りのピッチングで勝利を呼び込むなど成長がうかがえる。
昨秋3位で大阪府高野連から21世紀枠候補に推薦された阪南大高は中河 成(2年)、宮繁 蓮(2年)の2枚看板が守備の要。林 哲平(2年)を中心に据えた打線は一発よりも一死からでもバントで送りワンヒットで二塁から生還する攻撃が持ち味。
[page_break:古豪復活を誓う大体大浪商、関大北陽も見逃せない]神田 大雅 (大阪商大堺)
大阪商大堺も阪南大高もつまらないミスから自滅するということは考えにくい。ポイントはパワーや体格で上回る大型のチームと力比べになった時にどこまで食らいつけるか。大阪商大堺は捕手・宋 智弘(2年)のリードで、阪南大高は基本に忠実な野球で接戦に持ち込みたい。
また、昨秋上位進出を果たせなかった中にも注目校は多い。大阪偕星学園は昨夏の優勝チームだが、秋はちぐはぐな試合運びで敗戦。新チームの始動が遅れた影響がもろに出た。キャプテンの的場 優斗(2年)はマウンドに上がることもあるが、本職は遊撃。点差の開いた試合で3イニングだけマウンドに上がるという起用が出来ればいいが、2番手投手級の活躍を求められるようではチームとしては苦しいかもしれない。ただ元々才能やセンスに溢れたエリート集団ではなく、猛練習によって鍛え上げた叩き上げという言葉がどこよりも似合う雑草集団。一冬越えてレベルアップしたに違いない。
古豪復活を誓う大体大浪商、関大北陽も見逃せない西田 光汰 (大体大浪商)
昨夏準優勝とあと1歩のところで甲子園を逃した大体大浪商はエースの自覚が芽生えた本格派右腕・西田 光汰(2年)が精神的にも成長。旧チーム並みの攻撃力を備えることが出来れば古豪復活の狼煙を上げる年になるかもしれない。
打線に自信を持つのが関大北陽。旧チームから野手陣は主力がほとんど残り、打線の破壊力、スイングの力強さは府内でも屈指。あとは課題の投手陣をどこまで底上げ出来るか。絶対的な大黒柱に頼るということよりも継投でかわす戦いになることが予想される。大阪産大附もストレートで押せる播摩 駿介(2年)を擁し上位進出を狙える力はある。
戦力層の厚みで大阪桐蔭が抜けているのは間違いないが、公立高校でも140km/hオーバーのエースが毎年現れるのが大阪のレベル。加えてシード無しの抽選のため、昨夏の初戦で大阪桐蔭と履正社が激突したように早い段階で強豪同士が潰し合う展開となれば、意外な伏兵が一気に駆け上がることもあり得る。
シード権が懸かっていないため、春の捉え方はチームによって様々。夏を見据えて手の内を隠したり、戦力見極めのためレギュラーやベンチ入り当落線上の選手をスタメンで起用することもある。春に求められるのは夏に最大限のパフォーマンスを発揮出来るように“育てながら勝つ”ことだ。春季大会の時点で夏の戦いの駆け引きはすでに始まっている。
(文・小中 翔太)
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