息子を育てる「元妻の余命宣告」…親権は「祖父母」「再婚した実父」どちらに?
婚姻中、子どもの親権は夫婦双方にありますが、離婚するとどちらか一方のみが親権を持つことになります。では、親権を持った元配偶者が亡くなった場合、子どもの親権はどうなるのでしょうか?
ネット上には、5年前に離婚したという男性が、「13歳の息子を女手一つで育てていた元妻が、がんで余命宣告を受けた」と書き込みをしていました。男性は、「死後、息子の親権はどうなるのでしょうか? 私には新しい妻と子どもがいるのですが・・・。元妻の両親は存命しています」といい、どうやら自分が育てる意思がないようです。
このような場合、妻の死後、残された息子の親権は誰がもつことになるのでしょうか? 中島 宏樹弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 子どもが成人するまでの間、「未成年後見人」を選任するのが一般的
親権を持っていた元配偶者(単独親権者といいます)が亡くなった場合、親権を取得していない側の他方元配偶者に、自動的に親権がわたると思う方もいるかもしれません。しかし、単独親権者が亡くなった場合でも、他方元配偶者に親権が自動的にわたることはないとされています。
一般的には、亡くなった単独親権者の代わりに子どもを育てている人(祖父母など)の申し立てにより、家庭裁判所が「未成年後見人」を選任することになります。
未成年後見人とは、簡単に言うと、「親に代わって子どもの面倒を見る人」です。未成年の子が親権者からの保護を受けられない場合に、親権者に代わって子が成人するまでの生活上の世話や、未成年者の財産の管理をするといった役割も負います。
ご相談者には新しい妻と子がおり、息子さんの面倒を見ることが難しい場合には、存命中の元妻の両親が裁判所に請求し、未成年後見人になることが考えられます。
親族等に適当な人がいない場合には、社会福祉士や、弁護士などの専門家から選任されます。あるいは、遺言で指定することも可能です。遺言書を作成しておけば死後、息子さんの面倒を見る人をスムーズに選任することができます。
ただ、未成年後見人は財産を管理する役割も負うため、「もしお金を横取りされたら・・・」などと不安に思う場合もあるかもしれません。もし、単独の未成年後見人に息子さんの世話を任せることが不安な場合は、未成年後見人を追加で選任したり、未成年後見人がきちんと役目を果たしているかを監督する、「未成年後見人監督人」を選任したりすることもできます。
単独親権者の死後、他方元配偶者が親権者になることを希望する場合は、家庭裁判所に、親権者変更の調停を申し立てる必要があります。
調停では、親権者を変更することが子どもの幸せにつながるか、子どもにとってメリットがあるかどうかなど様々な事情が慎重に考慮されます。
調停にあたって、特にポイントとなるのは次のような事情です。
・子どもの年齢や性別、性格
・これまでの養育環境
・親権変更を申し立てた人の養育意思、養育環境
・子どもの意思
特に子どもの意思は、親権者変更の可否を判断するにあたっての重要なポイントです。年齢が高くなるほど判断力があると見なされ、その子本人の意思が尊重される度合いが大きくなると思われます。
ご相談者が息子さんの面倒を見ることを希望される場合には、速やかに、家庭裁判所へ親権者変更の申し立てを行う必要があります。
【取材協力弁護士】
中島 宏樹(なかじま・ひろき)弁護士
京都弁護士会所属。
京都弁護士会:刑事委員会(裁判員部会)、民暴・非弁取締委員会、法教育委員会、消費者問題委員会
日本弁護士連合会:貧困問題対策本部
NPO法人京都町並み保存協議会代表理事として空き家問題の解決に向けて尽力している
事務所名:弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所
事務所URL:http://www.keihan-towa.com/