中国メディアの北京晨報網は5日、「安倍首相は9年目のジンクスに直面」と題する記事を発表した。日本の時事通信社の論評を引用して紹介した上で、安倍首相に対する批判も多いなど強調。まるで「失脚」を望むような論調となった。大手ポータルサイトの新浪網など、多くのサイトが同記事を転載した。(イメージ写真提供:(C)Mykhaylo Palinchak/123RF.COM)

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 中国メディアの北京晨報網は5日、「安倍首相は9年目のジンクスに直面」と題する記事を発表した。日本の時事通信社の論評を引用して紹介した上で、安倍首相に対する批判も多いなど強調。まるで「失脚」を望むような論調となった。大手ポータルサイトの新浪網など、多くのサイトが同記事を転載した。

 記事は日本の国会が衆参両院制であり、衆議院の権限の方が大きいと指摘。例えば予算案の議決は衆議院単独で可能があるなどと紹介した上で、法案については参議院が否決した場合には、衆議院で改めて3分の2以上の賛成が必要となるなど、ハードルが高くなることにも触れた。

 参議院選については、任期は6年間だが、3年ごとに議員半数が改選されると紹介。そして、1989年以来、政権党の自民党は参議院で9年置きに大敗北をして総裁=首相が退陣していると論じた。1989年の宇野宗佑首相、1998年の橋本龍太郎首相、そして2007年は安倍晋三首相自身だったと論じた。

 記事はさらに、安倍首相が改めて首相に就任してから3年間が経過するが、日本では「大言壮語ばかりで実績が出ていない」との批判が発生していると主張。「安倍首相が最も有利なのは、有権者が安倍首相よりもましな代替え者を見出していないことだ」との意見もあると論じた。

 記事は最後の部分で、日本では野党に対して「軟弱で分裂しており、安倍政権と厳しく対決できない」との声も出ていると紹介。日本の政界における人材のなさを印象づける書き方をした。

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◆解説◆
 中国では政府もメディアも、防衛費の増額や自衛隊などの装備拡充、安保法、さらに憲法改正に対して大きな関心を示している。メディアの報道で目立つのが、安倍政権の前記政策の推進について、日本における反対の声を強調することだ。真意は不明だが、「希望的観測」がにじんでいる可能性もあり、「実際には、“良心的”な日本人が多い」と示唆することで、対日感情を悪化させない配慮があるとも解釈できる。

 いかなるメディアでも「完全に客観的」な報道は困難であり、報道にはどうしても主張や意図が出てしまうと考えてよいが、中国ではとりわけ、当局の宣伝方針に合致する「意図ありき」と思われる報道が多い。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)Mykhaylo Palinchak/123RF.COM)