日本の新幹線が米国を走る日も近い?

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日本のインフラ輸出を支援する官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」が2015年11月下旬、米国テキサス州の高速鉄道事業を進めている現地企業に4000万ドル(約49億円)を出資することを決めた。

計画は日本のJR東海の新幹線システム「N700系」を採用するのが前提となっており、久々の新幹線輸出が現実味を帯びてきた。

ダラスとヒューストン385キロを90分で

この高速鉄道事業はテキサス州のダラス−ヒューストン間(385キロ)を約90分で結ぶ計画で、現地の民間企業のテキサス・セントラル・パートナーズ(TCP)が事業を進めている。2017年には建設工事に着工し、2022年に開業する予定だ。

JOINは海外への高速鉄道や都市鉄道、高速道路、都市開発などのインフラ輸出を後押しする目的で日本政府が2014年10月に設立。政府は閣僚らのトップセールスなども展開し、2010年に約10兆円だった受注額を2020年に約30兆円にする目標を立てている。

JOINによると、テキサス高速鉄道事業の?調査・プロモーション?開発?建設・運営――の3段階のうち、今回決まった出資は?の開発段階に参画するためのもの。出資を認可した石井啓一・国土交通相は「米国での新幹線導入の実現を期待している。他国を含めて新幹線システム導入にも貢献する効果があると考える」と期待を述べた。

総額1兆8000億円の建設費が課題

これまで日本の新幹線の技術が海外に輸出されたのは2007年開業の台湾高速鉄道があるが、その後は、海外の高速鉄道の受注をめぐる国際競争が激しさを増しており、なかなか売り込みに成功していない。

日中が競ったインドネシアでは、事実上の建設費の肩代わりまで提示したとされる中国に競り負けたばかり。今回のテキサス高速鉄道事業は、民間資金での開業を目指して日本の新幹線導入を前提に事業が進んでいるため、政府による競争入札もなく、中国などライバル勢との価格競争に至っていない。

開業さえすれば、新幹線の「ショーケースにもなる」(JOIN)可能性が高く、新興国を中心に高速鉄道の導入を検討している他国にも安全性や正確性なども含めた総合的な性能の高さを示すことができると期待されている。

ただし性能の高さはコスト高にもつながり、建設費は総額150億ドル(約1兆8000億円)に達するとみられ、巨額資金をどう確保していくかが今後の最大の課題になる。そうした中でのJOINの出資は投資家に事業をアピールする側面があり、事業が順調に進めば、JR東海など関係する日本企業も出資する見通しだ。

計画通りに2022年に開業できるか、大きな注目が集まっている。