Facebookの人工知能・M、実は「人力」?

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フェイスブックの人工知能パーソナルアシスタント「M」は、実は多くの部分を人間が受け答えしているのではないかとするレポートを、あるソフトウェアエンジニアが発表した。

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フェイスブックは2015年8月、ベイエリアの一部ユーザーに対して、人工知能(AI)を利用したパーソナルアシスタントサーヴィス「M」の試験提供を始めた(日本語版記事)。同社データベースにある膨大なデータを利用して、有益な情報を提供するというサーヴィスだが、その受け答えについては、実はかなりの部分が人工知能だけではなく、人の手によって行われているのではないか。そういう疑惑が最近、提示されている。

あるソフトウェアエンジニアは、この疑惑を確かめるため、「逆チューリング・テスト」(人間かどうかを確かめるためのテスト)を行った様子を説明している。

フェイスブックはMを、アップルの「Siri」やマイクロソフトの「Cortana」より高度な理解力をもつパーソナルアシスタントだと宣伝している。ただし、Mは、AIだけで動いているのではなく、一部人間の支援を受けているという但し書きも付いている。米BitGo社のソフトウェアエンジニア、アリク・ソスマンは、MがAIで動いている割合は、フェイスブックが宣伝するよりずっと少ないはずだと主張している。

「Mの機能は、他の競合AIと比べてはるかに優れている」とソスマン氏は言う。「AIによっては、複数の場所の天候をユーザーに教えるのに四苦八苦することがあるが、Mの場合は、行く先々のすべての場所の予報を伝えてくれる上に、入りやすいガソリンスタンドの候補や渋滞情報、目的地にある美味しいお店や楽しいエンターテインメントの候補を教えてくれる」

さらにソスマン氏は、「Mと会話すると、Mは、自分がMessengerのなかにいるAIであることを強調する」と続ける。「けれども、返事が瞬時に返ってこないことや、Mが複雑な質問に無制限に対応できるという事実は、そうではない(AIではない)可能性を示唆している」

ソスマン氏は、自身の説を証明するために数多くの質問をしたが、これらの質問は従来のチューリング・テストより「はるかに難しい」ものにしたと、ソスマン氏は述べている。なぜなら、「人間がAIのふりをするほうが、AIが人間のふりをするよりはるかに簡単」だからだ。

ソスマン氏のレポートによると、同氏はMに対し、「他のどのAIもうまく対処できなかった」複雑な質問を投げかけてみた。例えば、道順を尋ねてから、その質問を少しだけ変更するといったことだ。Mはソスマン氏のリクエストに応えることができたが、人間が急いで入力しようとしたかのような入力ミスなど、いくつかのエラーがあった。これは、Mの裏に人間がいることの証明だとソスマン氏は考えている。

また、Mは、情報を得るために必要があれば店舗に電話をしてくれることがわかったので、ソスマン氏はMに対して、自分の電話番号を店舗だと偽って、電話をかけさせてみた(店舗以外は電話をかけられないと言われたため)。受話器の向こうでは、明らかに人間の女性の声が聞こえてきたという。

「これでわかった。Mは人間が動かしているという明らかな証拠を手に入れたのだ」とソスマン氏は書いている。「次の疑問は、これ(M)が人間によってのみ動作しているのか、少なくとも多少はAIベースのコンポーネントが裏で動いているのかということだ」

フェイスブックは、MがAIによって動作していると強調しながらも、Mは人間によって訓練され、監視されていると述べている。ソスマン氏がヒューマンエラーを見つけたのは、このためかもしれない。

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