「風邪をひいたとき、お風呂に入ってはいけない」という意見を聞く一方で、「いや、微熱くらいなら入ってもいい」という意見を耳にする。「二日酔いにはウコンが効くよ」という人もいれば、「いやいや、効かないよ」という人もいる。

ひとつの健康法に関する正反対の意見を聞くたびに、「いったいどっちを信じればいいんだ?」ともやもやしていたところ、話題の健康法について科学的根拠があるかどうかを紹介している書籍があることを知り、手にとってみた。

それが『効く健康法 効かない健康法』だ。


本書を担当したディスカヴァー・トゥエンティワンの藤田編集局長も、世の中で話題になっている健康法の効果について知りたいと思っていた一人。
「私自身が、さまざまな健康法に興味を持って実践したがる"健康法オタク"なので、本当に効果があるのかどうかを知りたいと思っていました。そこで、治療法や薬の効果について科学的根拠に基づいて本を書いていらっしゃる岡田正彦先生に、評判の健康法を検討していただくことにしました」

本書では45の健康法が紹介されており、いずれも「そうそう、この効果が知りたかったんだ」と思うものばかりだった。記事の冒頭で挙げた2つの例も検証されていたので紹介しよう。

●風邪をひいたとき、お風呂に入らないほうがいい。
→効果あり
体が冷え免疫力が下がると症状が悪化するのだが、お風呂に入る前に裸になったときに体が冷えてしまうから。また、熱いお湯につかると体力を消耗してしまうから。

熱が高くなければお風呂に入ってもいいと聞くこともあったが、上記の理由を知っておけばその時の自分の体調に合わせて判断できそうだ。

●ウコンを飲めば二日酔いにならない
→科学的に証明されていない
ウコンを飲んだ人と飲んでいない人を公平に比較したデータはなく、現在科学的には証明されていない。

これはシジミにも同じことが言えるらしい。飲み会の前には何回かお世話になっていたので、「あれは意味がなかったのか」と思うと悲しい気持ちになってしまった……。

個人的に一番驚いたのはこれだ。
●にんにくを食べると体力が回復する
→科学的に証明されていない
にんにくにはビタミンB1やアリインという補酵素が多く含まれているが、それ自体にはカロリーはなく疲労回復にはつながらない。

にんにくがスタミナ食品と考えられるようになったのは、にんにくの香りが食欲を増進させること、また肉などの高カロリー食材と一緒に調理されることが多いからではないかとのことだ。

藤田編集局長が驚いたものは、以下の3つだという。

●脳を働かせるには糖質を取るのがよい?
●脂肪を燃焼させるために、運動は20分以上続けるのがいい?
●ふくらはぎをもめば健康になる?

「『これだけやればすべて大丈夫!』という健康法はないということを知っていただきたいです。忙しい生活の中で、ともすれば健康法に頼りたくなってしまいますが、最終的には、バランスよく食べ、適度に運動し、休養を取るという当たり前ながら難しいことを心がけるしかないのだという著者のメッセージを受け取っていただけたら嬉しいです」(藤田編集局長)

「バランスよく食べ、適度に運動し、休養を取る」ことの難しさを日々実感している方は多いと思うが、だからこそ本書をめくって、自分の生活が偏ってないか振り返っていただきたい。
(上村逸美/boox)