八重山vs興南
同じ島で切磋琢磨してきた八重山商工と八重山高校。2005年の秋季県大会で八重山商工が3位に入り、地元開催となった九州大会への出場を得ると、島ん人パワーが爆発。一気に準優勝を勝ち取り選抜切符を手中に収めた。“八重山から甲子園へ”という、積年の夢とも悲願とも言える聖地で、堂々と行進する八重山商工ナインは初戦で高岡商(富山県)を5対2で下し初勝利をもぎ取ると、翌06年の選手権沖縄大会をも制して春夏連続出場を決めただけでなく、千葉経大附(千葉県)を9対6、松代(長野県)を5対3で破りベスト16入りを果たしたのだった。
だが甲子園まであと少し、というのは八重山商工ではなく実は八重山高校が先であり、1988年の選手権沖縄大会準決勝で豊見城を倒して初の決勝進出(沖縄水産に敗れて結果は準優勝)を決めていた。それだけに八重山高校のOBとしても、母校を甲子園へ!との願いは、天を衝くほどであったに違いない。
その第一歩が、今大会の準決勝を突破しての九州大会出場であったが、並み居る強豪校が集まる大会で勝ち進むためにも、第97回全国高校野球選手権大会でベスト8進出を決めた比屋根 雅也から勝利を得ること。これがさらなる自信を深めることに繋がるのだと、八重山ナインは胸に秘めていたに違いないが、試合序盤は興南ペースで進んでいった。
比屋根のタイムリー二塁打で興南が先制
初回、興南は1番に座った上門 洸輝がレフト前ヒットで出塁すると一死後、ボークで二塁へ。3番具志堅 大輝もレフト前へ運び一・三塁と絶好の先制のチャンスも後続が倒れてしまう。しかし興南は2回、二死一塁から9番比屋根の打球がセンターを襲うタイムリー二塁打となり、1点を奪う。続く3回にも二死二塁として、準決勝で貴重な代打タイムリーを放っている福元 信馬がライト前へ運ぶ。二塁走者が本塁を狙うも、ここは八重山野手陣がきちんと繋いで失点を防いだが、ここまで興南がヒット6本なのに対し、八重山は比屋根の前にノーヒットに抑えられていた。
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クリーンアップで掴んだワンチャンスをものに
押され気味だった八重山だが4回、先頭の3番東盛 隼己がヒットで出塁すると、4番黒島 投真がセンターオーバーの二塁打を放ち二、三塁となる場面も、興南の中継ミスの間に東盛が生還し二人で同点にする。続く新里 光平もレフト前へ運び一、三塁。クリーンアップの3連打で流れが一気に傾いた。続く与那嶺 匡の打球は比屋根 雅也の前へ。だが三塁走者を刺そうと投げた球は痛恨の悪送球となり、黒島に続き新里までもが生還。初優勝へ大きな大きな3点目がボードに刻まれた。
打たせて取る自分のピッチングを貫いた仲山の完投で秋季大会初優勝!
先発の仲山 琉斗は、6回まで興南に毎回安打を許す苦しいピッチングも、本来の打たせて取るスタイルを貫く。準決勝までの4試合で野手陣のエラーが2個という鉄壁の守りも、興南打線のプレッシャーの前に1、2回と連続して出てしまったが、3回の中継を成功させて以降無失策で頂点を極めた。
興南は、比屋根5回以降ヒット1本のみに抑える力投。打線も5、6、8回と二塁まで進める場面を作るなど合計10本のヒットを放ったものの、粘投を続ける仲山の前にあと1本が出なかった。
目標である選抜へ
決勝こそ明暗が分かれた両校に見えるが、筆者は別の楽しみを見つけている。2009年の秋季大会で優勝した興南と準優勝の嘉手納、そして2013年の秋季大会で優勝した美里工と沖縄尚学。この4校に共通するものは、シード校として秋に挑み且つ、決勝まで勝ち上がり九州大会の切符を掴んだこと。即ち新人中央大会で見せつけた力の差を、秋の県大会でもいかんなく発揮したのがこの4校である。そしてこの4校こそ、沖縄県勢初、そして2度目となった全国選抜高校野球大会への2校同時出場校なのだ。
先の新人中央大会で優勝した八重山と準優勝の興南が、第1シード第2シードとして秋に臨み決勝へ進出して雌雄を決した。鹿児島県で行われる第137回九州地区高校野球大会でも、八重山と興南の沖縄旋風に期待したい。
ちばりよー!両校ナイン!
(文=當山 雅通)
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