好テンポの投手戦は終盤にもつれて延長戦、最後は昭和が粘り勝ち

先発した1年生左腕の青山学院・小池君

 朝から雨という天候だったが、日程は予定通り消化されていった。いつしか雨も上がり、5回頃には日も差してくるくらいに天候も落ち着いてきた。そんな天気とは逆に、好テンポで進んでいった投手戦は、終盤にお互いに堪えあい、粘り合いという我慢の仕合いとなって、追いつき追い越して、また追いつかれてという展開で延長にもつれ込んだ。

 そして、延長10回に一死満塁のピンチを最終的には1〜2〜3というこれ以上はないという形の併殺でしのいだ都立昭和。11回の攻撃では途中出場で6番に入っていた本木君の安打とバントで好機を作ると、8番井上君がセンターへ二塁打してこれが決勝点となった。

 一次予選でも、強豪安田学園に競り勝つなど、接戦で勝負強さを示してきた都立昭和。とはいえ練習環境は、3か年越しの学校改修事業の中にあって、グラウンドはほとんど使用できない状態で、わずかなコンクリートのスペースでシャドウをやったりということがほとんどで、週一回か二回使用できる昭島市民球場での練習で調整してきた。そうした中で、森 勇二監督は、「チームとしては2010年秋の都大会でベスト4に進出できたときと同じくらいに手ごたえを感じられるチームに仕上がっていると思います」と言うように、このチームに対する思いは強い。

 また青山学院は現在1、2年生で15人という少人数で日々の練習をこなしているのだが、青山学院も決して恵まれた環境ではない。表参道のキャンパスはほとんど猫の額ほどのスペースでしか練習ができない。それでも、安藤 寧徳監督は、「ウチは素材能力でやっているという野球ではありませんから、人数も少ないしグラウンドもないし、選手の素質もないという中で、それでも野球はどうするのかということを教えているつもりですから、能力だけの野球ではないということで、結果を出したいんです。だから、もっと上に残っていきたいんです」と、熱い思いで指導をしている。

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制球が持ち味の昭和・田舎君

 試合は初回に、青山学院が犠飛で先制する。追いかける都立昭和は、5回に安打の1番寺園君を菅野君が左越二塁打で帰して追いつく。しかし、青山学院もすぐに、その裏に無安打だが四死球と失策で再びリードを奪った。そして、このリードを1年生左腕の小池君が巧みに相手打者に打たせながら上手にかわしていた。

 また、都立昭和の田舎(いなか)君も制球力を持ち味として、丁寧な投球で要所を締めいていた。こうして、投手戦は終盤を迎えたのだが、8回に無死二三塁を抑えた都立昭和は、もう後のない9回に一死後四球を得て、これで若干リズムの崩れた小池君を攻めて、井上君が内野安打して、送球がそれる間に同点。さらに、一三塁で9番富樫君が中犠飛を放って都立昭和は逆転した。

 それでも、青山学院も粘り、2四球で二死一三塁として1番中島君が気持ちのこもった中前打を放って追いついた。試合は、俄然慌ただしくなり始めたのだが、そこは田舎君が冷静に抑えた。

 延長に入って、青山学院は代打を出した都合もあって小池君がマウンドを降りたのだが、リリーフのマウンドには左翼手として守っていた中山君が立った。10回は無難に3人で抑えたのだが、その裏にサヨナラ機を逃して11回に、ついに決勝点を奪われた。

 粘りを信条としているという都立昭和は、「田舎があれだけ制球に苦しむということは珍しいんですよ。やはり、(ブルペンもなくなった状態で)投げ込み不足も影響しているのかもしれませんね」と言いつつも、「それでも9回以降の戦いでの粘りは、ウチらしい試合運びでした。これは、褒めてあげてもいいです」と、森監督は最後は満足げだった。

 一方青山学院は、「8回のノーアウト二三塁での0は痛かったですね。ちょっと打たされてしまったかなというところもあったんですけれども…。あそこで点が入っていたら、おそらく9回もなかったと思うんですよね」と、安藤監督は悔いていた。

(文=手束 仁)

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