月収4千万円だったヒロシがカラオケ喫茶をオープン「芸人以外、一発屋は働くことも許されないとですか?」
「ヒロシです」で始まる自虐ネタでブレイクし、ピーク時にはなんと月収4千万円もあったというピン芸人のヒロシが、芸暦21年を迎えた今年の6月中旬、東京・中野坂上に「カフェ&カラオケ喫茶 ヒロシのお店」をオープンした。
ところが、おめでたいことなのに、お店のコースターには早速「ヒロシです。仕事もないので、店をはじめたとです」と自虐ネタが書いてあるとか。そこで、実際のところはどうなのだろうかと現地で直撃取材!
−まず、お店をオープンしようと思ったキッカケを聞かせてもらえますか?
ヒロシ 実は元々、ライブハウスがやりたかったんですよね。バンドとか自分のライブができるように70、80人のキャパを想定していたんですけど、結局1年間、物件を探し続けましたが諦めました。
−いい場所がなかったんですか?
ヒロシ いや、あったんですけど、なかなか安全に借りることができない物件ばっかりで。
−どういうことですか?
ヒロシ 契約書が明らかにおかしいんですよ。そんな契約は結べるわけないだろっていうのがほとんどで。いろんな物件を見ましたが、人脈がないと安全に参入できないのかなっていう感想を持ちました。
−そもそも人脈ないんですか! ちなみに下見ではどんなことが?
ヒロシ 元々は秋葉原でやりたくて、激戦区なのに偶然、1Fのワンフロアーが空いていて。そこを借りて元が取れるかどうかを図面引いたり、いろいろとシミュレーションして「よし!借りよう!」って気持ちでもう一回見にいったら、いきなり電話ではなんにも言ってなかったのに「2Fも込みで2フロアー借りてくれ」って。最終的には「一棟まるまる借りてくれ」っていうところまで膨れ上がりましたよ。バカなと思って。
−よくわからない世界ですね。確かに危ない。
ヒロシ 初めのワンフロアーは撒き餌だったんでしょうね。こっちは条件変わるたびに何度もシミュレーションして本当に大変でしたよ。
−そもそも、なんでライブハウスがやりたかったんですか?
ヒロシ 僕、10代からバンドが好きで、今はやってないですけどバンドがやりたいんですね。でもやってるとスタジオ代、ライブ代など、結構お金がかかるので、極端に言えば、自分でやればタダじゃないですか。それでライブハウスをやろうと。あと、もちろん漠然とお店をやりたいという憧れもありましたけど。
−ちなみに、どんな音楽を?
ヒロシ 初めはビジュアル系で、2年前までやっていたバンドはパンクです。「MARMALADE」って名前で、パンクの世界で有名にしてやろうと思って、ツアーも組んだりして。趣味ながら本格的にやっていたんですけどね。
−そんな時代があったんですね。担当はボーカル?
ヒロシ ベースです。現在は最高にカッコいいと思ってますが、昔はモテたくてやっているのに照明も当たらない…余りもんがやる楽器だと思ってました。弾いてと言われて、披露しても「うーん」って言われる地味な楽器ですよ。
−ベースあるあるですね(笑)。本題に戻りますが、現在の場所(東京・中野坂上)に至った経緯は?
ヒロシ 元々、事務所兼ライブハウスにしようとしてて、ライブハウス用の物件を探していた時にこれまで使っていた事務所を解約したんですね。つまり事務所がない状態で2、3ヵ月ほど過ごして、そろそろ物件を見つけなきゃってことで一番安いところを検索したらここだったというわけ。
−じゃあ、初めは事務所用だったんですね。
ヒロシ そう。そしたら、この物件が元々、カラオケ喫茶でカラオケOKだったんですよ。それなら、事務所兼カラオケ喫茶にしようかということになりまして…。
−でも、わざわざ手を出す必要が? 減ったとはいえ、現在でも仕事をされてますし。ピーク時の月収から推測するに貯蓄は充分、金銭的に不自由してるわけでもないような…。
ヒロシ お金がなくなったから店を始めたみたいなストーリーの方が面白いと思うのですが、理由はヒマだったからです。やることないんですもん。
−ヒマ!?
ヒロシ 落ち目になると、ヒマを持て余すんですよ。そうするとなんでもいいから働きたいという欲が出てくるんです。でも働きたいと思った時に、世間に顔は知られているワケで、例えば、コンビニバイトでレジやってたとして、必ずお客さんに「ヒロシです」ってやってくれって言われ、人と絡まずにはいられない状態が続くわけです。すると時給1千円では割に合わない。疲労感がすごいんですよ!
−確かに、一度世間に顔が知られると、それが付きまといますね。
ヒロシ そこで、僕が目をつけたのはラブホテルのシーツ替えの仕事なんですけど、実際、面接に行ったら、ふたり一組でやっているらしくって。もうひとりがすごく嫌なやつだったらどうしよう…とか。バイトをしていることをペラペラ喋られたり、疲れて帰ろうと思っているのに外に出たらそいつの友達が待っていたり…って不安が尽きないですよ。仮にいいやつだったとしても相方が変わる時もありますしね。すると、一発屋は芸人以外で、働くことも許されないんだと思って。
−すべての一発屋芸人さんたちが感じてらっしゃることでしょうね…
ヒロシ そうなってくると、もう働ける場所を自分で作るしかないんですよね。それでお店をやることになったわけです。
−お店の立ち上げはどうでした?
ヒロシ 何もかもがわからないことだらけ。物件を借りてからは大変なことばかりでした。消防法などの手続きや、皿が何皿いるのか、テーブルがいくついるのか、どこが安いのかとか。ちょこちょこ芸人の仕事をしながらですが、オープンまでに2ヵ月くらいかかりましたね。
−客入りは?
ヒロシ 近所の人がちょこちょこお茶を飲みに来てくれますね。おばあちゃんだったり、幼稚園のママ友仲間だったり。土日は遠方に住むファンの方も来てくれていま す。とはいうものの、事務所の機能も兼ねているので、あんまり押し寄せて来られるのも対応できないので。今ぐらいが、ほどよくベストですね。
−オススメ料理なんてのもあるんですか?
ヒロシ 今のところ(取材時点では)、食べ物はカレーしかないんですよ。お客さんに出してもおかしくないレベルにするのに3週間ずっと食べ続けました。カレーは食 べ過ぎても飽きないと思っていたんですけど、もう食べたくないですね。飲食店が大変なのは実際、食べないとダメなところですね。一発でうまくいくわけはな いんでね。今はパスタばっかり食べてますけど、これももう食べたくないですね。本当に大変。
−お店にはステージもありますよね。
ヒロシ ひとまず、今は月一回ほどちょっとしたお笑いライブをします。僕と若手芸人が30分ほどネタをして、その後はカラオケ喫茶へ移行します。後はマイクスタンドも用意しているので、売れたいフォークシンガーに使ってほしい。16人しか入れないないですが、そういった小スペースにあったイベントを打って行きたいですね。
−最後に、芸人としての今後の展望を教えてください!
ヒロシ 今年で43歳なんですけど、お笑いに向いてないと思ってます。もちろん向いている部分はあるんですけど。今の流れから考えると、結局、芸人はTVに出てないとバカにされるんです。だからTVに出たい。でも自分の芸風(自分自身)を極端に曲げてまで出るのはもういいかなって思ってます。
−向いてない部分ってなんですか?
ヒロシ トーク番組で、話題に割って入るのが苦手ですね。小さい頃から親戚の集まりでも入れませんでしたし。いつも初めからいるのに“遅れてきたコンパ”みたいな雰囲気になっちゃうんですよね。あと芸人同士での付き合いが苦手で、現場のみならずプライベートでも仲良くしている芸人の輪に入って行くのが苦手ですね。
−トークバラエティーが苦手なのは辛いですね。プライベートで仲良くしている芸人さんはいないんですか?
ヒロシ それが最近キャンプにハマってまして…。同じキャンプでもいろんな趣向があって、僕がハマっているのはファミリーキャンプじゃなく、ひとりで装備を全部そろえるソロキャンプなんです。
−それって、結局ひとりぼっちじゃないですか!
ヒロシ 単独のキャンパーが一箇所に集まるんでひとりじゃないんですよ。初めてソロキャンプに行った時は本当にひとりぼっちで、すごく淋しくって二度と行かないって思ったんですけど。それからライブで知り合った若手芸人と一緒に行くようになって、今では「焚き火会」っていうのを作ってて、スパローズ・大和くん、バイきんぐ・西村くん、ウエストランド・河本くん、うしろシティの阿諏訪くんらとタイミング合うメンバーで行ってます。気心知れたこのメンバーなら、話に割って入れるんですけど…。
−「アメトーーク」でキャンプ芸人ってやってほしいとこですね(笑)。
ヒロシ 是非やって欲しいですが、そんないい話、僕には来ないでしょうね…。
−悲観的に締めないでください!(笑)
■「カフェ&カラオケ喫茶 ヒロシのお店」
【住所】 東京都中野区中央2-8-5 地下1階
【電話番号】03−3365−0555
【営業時間】(昼)カフェ営業12:00〜18:00(夜)カラオケ喫茶19:00〜23:00<予約制>
【定休日】月曜日【アクセス】大江戸線 / 丸ノ内線 中野坂上駅A2 出口より徒歩1分
【サイト】<ヒロシのお店>http://www.hiroshino-omise.com/
■ヒロシ(ひろし)
1972年2月14日生まれ 熊本県出身 血液型=O型 趣味=キャンプ・釣り・家庭菜園・バンド活動 特技=あるんだったらTV出てるよね。○9月にヒロシの日めくりカレンダー発売予定。最新情報はオフィシャルサイト「ヒロシの部屋」へ。http://hiroshi0214.com/