画像は李氏のFacebookより

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 やまもといちろうです。子供が熱を出したので心配してたら、自分も風邪をもらって地味に熱気味です。なんですか、この季節の変わり目に必ず起きるボンバーマンみたいな現象は。

 ところで、例の麻生太郎財務相の中華開発構想的なAIIBの参加見送りを日本政府として決断した件について、香港フェニックステレビの李女史が大臣質問で投げかけたネタを巡り騒ぎが広がっております。素敵な話です。

 内容としては李女史がFacebookに書いておられるとおりで、別段それが問題だとも認識されないレベルの問題であって、個人的に気になるのは李女史が誰の批判を代弁してAIIB参加見送りを「日本外交の完全敗北」として大臣に質問をぶつけたんだという話でして。

 単純な話、AIIBを軽視するべきではないが、ADBや世銀がある以上、我が国としては主導権を取れない不透明かもしれないAIIBについて様子見するのは別に問題ない話で、いまの日中関係(首脳会談をしたとはいえ)をベースに中国からの抱きつきに呼応する必然性はさほど高くないのも実情です。

 AIIBの状況については、公に中国研究家の津上俊哉さんも論じていて、ほぼ同様の内容の認識をかねてから官邸でも外務省でも財務省でもしていたわけで、そのようにまずまず重要な役割を担うかもしれないAIIBにタイミングよく乗る決断を見送った安倍政権は、安倍政権なりの理屈があってのことだろうと考えられます。

 その内容については、麻生さんが(そこまで記者会見で説明する必要もないんじゃないかというぐらい)建前論を超えた部分を大臣記者会見で喋っています。上記の李女史のFacebookでも書き起こされていますが、内容を見るに、麻生さんらしい話だし、安倍政権としてはそういう考えになるだろうということは良く分かります。

 で、日本外交の完全敗北というロジックがなぜ出てくるのか、俄然興味が湧くわけで、またその話に便乗する形で朝日新聞出版のAERAが、またそのソースをロンダリングする形で時事通信が孫引きするのは何なんだろうと思うわけです。興味津々です。

 冒頭津上さんが解説するとおり中国経済がこの先減速するようであれば、正直AIIBの資金の使途も微妙なことになるかもしれないし、そもそもBRICS銀行といい、アメリカの不甲斐なさというか、ブレトンウッズ体制に穴ぼこが開いててオーナー的に大丈夫か、という気にはなります。

 その意味でも、AIIBが中国外交のファインプレーだったにせよ、現体制の受益者でもある日本がAIIBに乗らないことを指して「日本外交の敗北ですか?」って大臣に聞いちゃうのもどうなんだろうと思います。

 麻生さんのことだから余計なことをいっぱい喋るだろうという策略だったとすれば、それは見事にはまったわけですがw

著者プロフィール

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

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