13日、カネボウ経営陣を相手取って株主代表訴訟を提起し、東証で記者会見に応じる原告代表の山口さん(左)と代理人の大塚和成弁護士(撮影:常井健一)

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投資ファンド傘下で経営再建中のカネボウの個人株主501人は13日、カネボウの小森哲郎社長ら取締役5人に対し、同社に約425億円の支払いを求める株主代表訴訟を東京地裁に提起した。

 カネボウ取締役会は今年4月、日用品、薬品、食品の主要3事業をアドバンテッジパートナーズ(AP)など投資ファンド3社で共同設立した受け皿会社「カネボウ・トリニティ・ホールディングス(新カネボウ)」に営業譲渡すると決議。その過程で、取締役会は、新カネボウからの支払いを受けるべき譲渡代金425億円の債権を「全く返済能力がない」(原告側)投資ファンド3社の子会社に移し替え、担保として同子会社が保有するカネボウ株を引き受けることを承認する決議を行った。

 原告団では、現在までに譲渡代金425億円がカネボウに支払われず、事業売却で“抜け殻状態”であるカネボウの株式も担保としての価値が見込めないことなどから、取締役会の決議が不良債権化につながり会社に損害を与えたとしている。

 さらに、事業再編を促すためにスクイーズアウト(少数株主排除)を認める産業再生特別措置法など法制度の規定については一定の理解を示す一方、営業譲渡の際に取られた仕組みが「少数株主の利益を犠牲にしてファンド連合を不正に富ませることに経営陣が協力した」として、同法制を悪用したと指摘している。

 個人株主らはこれらの件について今月4日に取締役5人を会社法の特別背任罪にあたるとして東京地検特捜部に刑事告発し、8日付で受理されている。

 同日、東京都中央区の東京証券取引所内で原告側が行った記者会見で、株主代表の山口三尊さんは「金融的な知識に長けた一部の人間が巧緻(こうち)なスキームを駆使したことで、多くの高齢者株主が退職金を失おうとしている」と主張し、個人株主の利益擁護や証券市場の健全化を訴えた。今回提訴した原告が保有するカネボウ株は合計で3%程度。

 カネボウ側は、ライブドア・ニュースの取材に対し「訴状の内容を把握していないので、コメントできない」としている。

 少数株主の権利をめぐっては、焼き肉屋チェーン「牛角」を手掛けるレックス・ホールディングス<2688>がMBO(経営陣による自社買収)・非公開化して経営再建するにあたり、支援要請を受けたAPが行うレックス株のTOB(株式公開買い付け)に対し、一部の個人投資家が反発し、法廷闘争を検討している。

 12日に終了したAPのTOBは、レックスの発行済み株式総数の75%(19万8801株)の応募を受けて成立。今後、レックス筆頭株主のエタニティーインターナショナルが持つ全株式を取得して保有比率は91%になり、来年4月にも上場廃止となる。【了】

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