24日、東京農業大学で行われた植物性乳酸菌に関するシンポジウム。(撮影:久保田真理)

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日本の伝統食には、植物性乳酸菌がいっぱい――。植物性乳酸菌が持つ機能や健康について考えるシンポジウム(東京農業大学総合研究所「食育研究部会」主催)が24日、東京都世田谷区の東京農業大学百周年記念講堂で開かれ、専門家らが植物性乳酸菌のよさをアピールした。

 初めに行われた基調講演で、乳酸菌について詳しい同大学の岡田早苗教授は、日本の伝統的な食生活は植物性乳酸菌と深いかかわりを持ち、日本では戦後に広まった動物性乳酸菌を含むヨーグルトの歴史は浅いと説明した。みそ、しょうゆ、つけものほかにも、高知県ではお茶を発酵させた「碁石茶」や長野県にある漬けもの「すんき」など乳酸菌が含まれる食品が多く見られるという。また乳酸菌は、腐敗を防ぐだけでなく、味をよくする、香りをよくする役割があり、「日本酒の場合、アルコールは酵母によって作られるが、香りのよさは乳酸菌による」と話した。

 さらに岡田教授は、乳酸菌が持つ保健的機能性について強調。菌が生きたまま腸管に届き、整腸作用があるほか、発ガン性物質である“コゲ”を吸着して体外に排出する働きなどもあるという。「動物性乳酸菌よりも植物性乳酸菌の方が、保健的機能性の効果が高い。(酪農がさかんな)ヨーロッパなどに向けて、植物性乳酸菌のよさを伝える機会を作りたい」と植物性乳酸菌が持つ可能性に期待を込めてコメントした。

 パネルディスカッションでは、消化器系に詳しい「さいがた病院」の松枝啓院長がプレゼンテーションを行い、腸が正常に働かない「便通異常」者が急増していると報告した。ストレスや肉体労働の減少により、腸が過敏になったり、便秘になる人が多いという。その解決には、善玉細菌である乳酸菌が有効であり、「乳酸菌と同時に食物繊維もとれる植物性乳酸菌を含む食品をとり、水を十分に飲み、汗ばむ程度の運動を30分くらいして“腸内革命”を行って」と会場の人に呼びかけた。

 また同大学内の「食と農」の博物館では、「植物性乳酸菌」展が開催されている。11月5日まで。【了】

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