10月にオープン予定している都内初の有料トイレの模型。左下は喫煙所、左側から女性用トイレ、子供用トイレ、障害者用トイレ、男性トイレのスペースが並ぶ。中央手前に係員のカウンター、その左にコンピューターカウンター、右に液晶スクリーンなどが設置される予定。2日、東京都千代田区の庁舎で。(撮影:佐藤学)

写真拡大

都内で初めての区営有料トイレが、10月に東京都千代田区のJR秋葉原駅にオープンする。快適で清潔な公衆トイレ作りを目指し、区内30カ所の整備に努めてきた千代田区だが、利用者のマナーが向上しない結果を受けて、ひとつの方策として公衆トイレの有料化を考えたもの。係員の常駐化の他に、質の高いサービスと情報コーナーの設置などを目玉にする有料トイレの実施によって、今後のトイレ整備を模索する方向だ。

 千代田区では「臭い・汚い・暗い・怖い・壊れている」と言われる公衆トイレに、センサーを設置したり、BGMを流したりなど年間約5000万円の予算をかけて、様々な努力を続けてきた。一方、03年に実施した公衆トイレの実態調査では、女性利用者は全体の3%に過ぎないことを知らされた現実もあった。

 「365日休まず毎日1─2回の清掃が、各公衆トイレで行われてきたのに……」と同区環境土木部の道路公園課・土本啓介課長は、その無念さを隠さない。改善しないトイレ整備に対して、同区では公衆トイレから半径500メートルで円を描き、新設トイレの必要地域と無駄な地域を設定して、トイレの適正配置に取り掛かった。4カ所の公衆トイレを廃止することと、JR有楽町駅周辺と秋葉原駅周辺に新規設置の必要性が導き出された。

 こうしてトイレ整備の見直しを始めた同区は、利用者が満足できる快適・清潔・安全な空間作りのためには、欧米のように有料化が必要との考えに至った。今回のJR秋葉原駅の有料トイレをモデルケースにしたいと考えている。

 約1億円の建設費用(設計費を含む)を投入した有料トイレは、喫煙所、コンピューター、情報コーナーが隣接され、2人の係員が常駐する。利用時間は午前7時から午後10時まで。トイレは男性、女性、子ども、障害者と4つのエリアに分けられ、男性と女性用エリア入り口は、自動ドアでさえぎられ、100円の使用料を払うとドアが開閉する。幼児と障害者用のトイレは無料。

 土本課長は「お金を払った利用者が快適で、しかも満足するホテルクラスのトイレですよ」と自信たっぷり。女性や子どもの安全を配慮した係員の配置のほかに、高級感のある新素材の壁、タイルなどを敷き詰めた床、ゆったり感あふれるブースなど、目を見張る最新設備だ。女性用スペースは、等身大の鏡を3つ設置し、身支度を整えながら安らぎを感じる空間作りを配慮している。

 子供用のスペースには、ベビーベットや荷台が置かれ、子ども用の小さなサイズの便器、そして、黄色や赤などの原色を使った楽しい雰囲気のカラーリングなどの工夫を凝らしている。また、障害者用では、手すりをはじめ、直腸がんなどで腹部に人工的な排泄(せつ)用の孔を増設した人のための、オストメイト用設備などが備え付けられている。

 秋葉原の有料トイレが成功すれば、有楽町地域の有料トイレ建設の検討も始める予定。さらに、他の自治体にも公衆トイレの有料化に弾みがつくと考えられる。土本課長は「トイレの名前の公募を9月中に始めたい。シンボルや話題性のある名前をつけたいですね」と余裕のある笑顔を見せた。【了】