また出た。中国書画学会の江栄宇副主席が発表した国連教育科学文化機関(ユネスコ)から贈られたという「100年の文芸巨匠」の終身認定証が偽物だった。中国では慈善活動で有名な実業家、陳光標氏が6月下旬に国連関連組織から授与された賞状(認定証)が偽物だったという騒動が起こったばかりだ。国連は「国連の名を使ったパクリ機構が多数、存在しています」として注意を促した。

 ちなみに江副主席はさまざまな作品が高く評価されている書道家だ。中国では「共和国功勲芸術家人物大辞典」、「中国人物志」などさまざまな書籍で必ずと言ってよいほど紹介される「押しも押されもせぬ一流の芸術家」だ。

 そんな江副主席もコロリとだまされた。授与されたという“終身認定書”を簡易投稿ブログ(微博=ウェイボー、中国版ツイッター)の自らのアカウントで、誇らしげに紹介した。江副主席は“国連国際文化普及センター”の副主席にも任命されたと自己紹介。認定書には「国連事務総長」のサインもあった。ハングルだった。

 中国では、「派手な慈善活動」で有名な陳光標氏が、「国連の名に目がくらみ、“寄付金”として3万ドルもだまし取られた」として話題になったばかりだ。江副主席の“認定証”についてもたちどころに、「本当か?」などとする疑問の声が満ち満ちた。とどめを指したのがユネスコの駐中国機構だった。「偽物に決まっています」と表明した。

 これまでの報道によると、国連本部のある米ニューヨークでは、国連の名を騙(かた)るペテン師がうようよしている。中には、中国人または中国系の人物が代表を務める「ペテンのための専門会社」も存在する。

 「おいしいカモ」は中国人だ。寄付金と引き換えに「国連の名がついた賞状や認定証」を授与できると持ちかける。「カネは払ってもよい。もっと名声がほしい。自分の名声を、もっともっと広めたい」と切に願う中国人が、あっさりと騙される。

 国連は中国向けの簡易投稿ブログ(微博=ウェイボー、中国版ツイッター)の公式アカウントで16日午後10時36分付で、「国連の名を使ったパクリ機構が多数、存在しています」として注意を促した。

 「国連の動き」として、「このところ、“国連”の名を使ったパクリ機構が止めどもなく出現しています」と表明。「国連文化総署」、「国連中国語テレビ局」、「国連平和維持部隊総司令部」など、すべて「存在しない国連関連機構」という。

 ひどいものになると、“ミス国連”コンテスト開催を称する場合もあったと紹介。そして「本物と偽物を、どう見分ければよいのでしょう? 調べてください! 国連の公式サイトにその機構の名がなければ、まずは疑ってください!」と訴えた。

 実に簡単な識別法ではないか。では、どうして“国連詐欺”が多発しているのか。「ペテンの技術」が高すぎるのか。あるいは、「国連の名で表彰」と持ちかけられたとたん、周囲のすべてがバラ色に輝きはじめ、疑いの心ひとひらも、どこかに吹き飛んでしまうのか。それとも「自分だけは大丈夫。だまされるわけはない」と確信しているのか。なんとも「不思議な世情」の国だ。(編集担当:如月隼人)