【全文掲載】決まった人材が回るだけのJリーグ “開拓”の意志を見せるのはどのクラブ?
■Jリーグの活性化は果たされるのか
ストーブリーグについてかわされる言説もいくつかに集約されているようで、浦和の広島化、ゴールキーパー玉突き人事にJクラブのサポーターあるいは国内サッカーファンの興味が向いていることがわかる。
いっぽう、問題点として挙げられているのは、決まった人材をぐるぐる廻し合っているだけということと、ビッグクラブでさえ契約切れの選手をゼロ円移籍で獲得する手法で補強しているということ。
いずれにしても、いよいよJリーグがシュリンクしてきた感を漂わせる話題ばかりだ。
活性化のためには下のカテゴリーから選手を発掘したり、外国からいままで日本市場にいなかった選手を連れてくる「開拓」の努力が必要だ。マルキーニョスを買うばかりでなくマルキーニョスを連れてくるクラブがないと、円環状の人事異動が止まってしまう(そう考えるとマルキーニョスとエヂムンドを連れてきた2001年の東京ヴェルディは偉かった)。
天皇杯に優勝した横浜F・マリノスはJFLのSAGAWA SHIGA FCから奈良輪雄太を連れてきて、小林祐三とドゥトラでサイドバックの先発が間に合っている状況でも、サイドバック、サイドハーフで起用した。J1優勝のサンフレッチェ広島はJ2の水戸ホーリーホックから塩谷司をピックアップして全国区になるまで使いつづけた。ベンチを含めて18人中ひとりでもこういうことをやっていかないと鮮度を保てない。
開拓者としてパッと思いつくのはやはりアルビレックス新潟だろう。獲られたらすぐに獲る。レンタルバックのかたちでファジアーノ岡山帰りの川又堅碁がブレイクしたパターンもあるが、エジミウソン、マルシオ リシャルデス、レオ シルバを日本に連れてきて、東口順昭をプロにしたのは新潟だ。
■新規開拓の歩みを止めないFC東京
東口をガンバ大阪に獲られた(中学生まではガンバにいたので出戻りと言えなくもないが……)新潟は、京都サンガF.C.からカターレ富山に期限付き移籍をしていた守田達弥を完全移籍で獲得した。眼の付けどころがいい。守田はロンドン五輪をめざすU-22日本代表では権田修一、安藤駿介とポジションを争った人材。体格に恵まれ、しかもイケメン。出すほうの京都もオ スンフンのあとに杉本大地が控えていてゴールキーパーの層に問題はない。
J2からJ1だから守田本人にとってはステージを上げるいい機会だ。競争のなかで頭角をあらわせば本物。この辺りのマネジメントが新潟はほんとうに冴えている。
新顔という意味ではFC東京が意外にがんばっている。過去にもルーカス、ケリー、ジャーンと、J初体験の優良ブラジル人を揃えた時期があったが、このオフにはシャルケ04に在籍したこともあるエドゥーを引っ張ってきた。そのほかに獲得が噂されている外国籍選手も日本でのプレーは初となる。
なにより新監督がマッシモ・フィッカデンティだ。日本代表ではアルベルト・ザッケローニが監督を務めているが、Jでは初のイタリア人監督。欧州からの人材獲得が容易ではないなか、かぎられたコネクションからなんとか新しい血を入れた経緯もザックのそれを思い起こさせる。
ランコ ポポヴィッチ前監督がセレッソ大阪、大熊清前テクニカルダイレクター(※12月いっぱいで東京から離籍)が大宮アルディージャの新監督となった結果、城福浩監督率いるヴァンフォーレ甲府を合わせて、新シーズンは元東京の監督が同時に三人も指揮を執ることになるが、これも東京が開拓し、人材を廻す最初の一手を打っているからだ。
国内で実績のある選手を集めて勝つビッグクラブもいいが、優勝を果たせずとも新規開拓をしつづけるクラブがあってもいい。少なくとも東京は、その歩みを止めるつもりはないようだ。
■著者プロフィール
後藤勝
東京都出身。ゲーム雑誌、サブカル雑誌への執筆を経て、2001年ごろからサッカーを中心に活動。FC東京関連や、昭和期のサッカー関係者へのインタビュー、JFLや地域リーグなど下位ディビジョンの取材に定評がある。著書に「トーキョーワッショイ」(双葉社)がある。
2012年10月から、FC東京の取材に特化した有料マガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」をスタートしている。
ストーブリーグについてかわされる言説もいくつかに集約されているようで、浦和の広島化、ゴールキーパー玉突き人事にJクラブのサポーターあるいは国内サッカーファンの興味が向いていることがわかる。
いっぽう、問題点として挙げられているのは、決まった人材をぐるぐる廻し合っているだけということと、ビッグクラブでさえ契約切れの選手をゼロ円移籍で獲得する手法で補強しているということ。
活性化のためには下のカテゴリーから選手を発掘したり、外国からいままで日本市場にいなかった選手を連れてくる「開拓」の努力が必要だ。マルキーニョスを買うばかりでなくマルキーニョスを連れてくるクラブがないと、円環状の人事異動が止まってしまう(そう考えるとマルキーニョスとエヂムンドを連れてきた2001年の東京ヴェルディは偉かった)。
天皇杯に優勝した横浜F・マリノスはJFLのSAGAWA SHIGA FCから奈良輪雄太を連れてきて、小林祐三とドゥトラでサイドバックの先発が間に合っている状況でも、サイドバック、サイドハーフで起用した。J1優勝のサンフレッチェ広島はJ2の水戸ホーリーホックから塩谷司をピックアップして全国区になるまで使いつづけた。ベンチを含めて18人中ひとりでもこういうことをやっていかないと鮮度を保てない。
開拓者としてパッと思いつくのはやはりアルビレックス新潟だろう。獲られたらすぐに獲る。レンタルバックのかたちでファジアーノ岡山帰りの川又堅碁がブレイクしたパターンもあるが、エジミウソン、マルシオ リシャルデス、レオ シルバを日本に連れてきて、東口順昭をプロにしたのは新潟だ。
■新規開拓の歩みを止めないFC東京
東口をガンバ大阪に獲られた(中学生まではガンバにいたので出戻りと言えなくもないが……)新潟は、京都サンガF.C.からカターレ富山に期限付き移籍をしていた守田達弥を完全移籍で獲得した。眼の付けどころがいい。守田はロンドン五輪をめざすU-22日本代表では権田修一、安藤駿介とポジションを争った人材。体格に恵まれ、しかもイケメン。出すほうの京都もオ スンフンのあとに杉本大地が控えていてゴールキーパーの層に問題はない。
J2からJ1だから守田本人にとってはステージを上げるいい機会だ。競争のなかで頭角をあらわせば本物。この辺りのマネジメントが新潟はほんとうに冴えている。
新顔という意味ではFC東京が意外にがんばっている。過去にもルーカス、ケリー、ジャーンと、J初体験の優良ブラジル人を揃えた時期があったが、このオフにはシャルケ04に在籍したこともあるエドゥーを引っ張ってきた。そのほかに獲得が噂されている外国籍選手も日本でのプレーは初となる。
なにより新監督がマッシモ・フィッカデンティだ。日本代表ではアルベルト・ザッケローニが監督を務めているが、Jでは初のイタリア人監督。欧州からの人材獲得が容易ではないなか、かぎられたコネクションからなんとか新しい血を入れた経緯もザックのそれを思い起こさせる。
ランコ ポポヴィッチ前監督がセレッソ大阪、大熊清前テクニカルダイレクター(※12月いっぱいで東京から離籍)が大宮アルディージャの新監督となった結果、城福浩監督率いるヴァンフォーレ甲府を合わせて、新シーズンは元東京の監督が同時に三人も指揮を執ることになるが、これも東京が開拓し、人材を廻す最初の一手を打っているからだ。
国内で実績のある選手を集めて勝つビッグクラブもいいが、優勝を果たせずとも新規開拓をしつづけるクラブがあってもいい。少なくとも東京は、その歩みを止めるつもりはないようだ。
■著者プロフィール
後藤勝
東京都出身。ゲーム雑誌、サブカル雑誌への執筆を経て、2001年ごろからサッカーを中心に活動。FC東京関連や、昭和期のサッカー関係者へのインタビュー、JFLや地域リーグなど下位ディビジョンの取材に定評がある。著書に「トーキョーワッショイ」(双葉社)がある。
2012年10月から、FC東京の取材に特化した有料マガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」をスタートしている。
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