中国による「サイバー攻撃」の脅威が、国際社会で大きな関心事になっている。発端となったのは2月12日、アメリカのオバマ大統領の一般教書演説だ。

ここで電力や鉄道など重要インフラのサイバーセキュリティ強化に関する大統領令が発表され、「アメリカの敵はわが国の送電網や金融機関のネットワーク、航空管制システムを妨害しようとしている」と、国家レベルでのサイバー攻撃の危険性をはっきりと述べたのだ。

2月18日にはアメリカのコンピューターセキュリティ会社・マンディアントが、74ページにわたる報告書で中国人民解放軍によるサイバー攻撃の実態を発表。その中で、上海の浦東新区に本拠地を置くサイバー専門部隊「人民解放軍総参謀部第3部第2局61398部隊」の存在が明らかになった。この部隊はサイバー攻撃による海外への妨害工作・情報収集を主任務としているという。

ヒューミント(スパイによる諜報)にしろ、サイバー攻撃にしろ、中国は官民問わず世界中のあらゆる情報をかき集めている。危機管理コンサルタントの志村岳(たけし)氏がこう警告する。

「中国では有名ブランドの家電製品や化粧品、ハンドバッグが発売されると、翌日にはそっくりのコピー商品が店頭に並んでいますが、これを単に中国企業の体質と考えるのは間違いです。それと同じように、国家レベルで各国の最新兵器などの軍事機密や、重大な企業情報などが日々盗まれ、転用されているのです」

もちろん、アメリカもただ手をこまねいて見ているわけではない。FBI(連邦捜査局)やCIA(中央情報局)、DIA(国防情報局)、NSA(国家安全保障局)、OHS(国土安全保障局)などの組織が、それぞれ活発にサイバー犯罪に関する調査や取り締まりを行なっているという。

「さらに、米軍にも2010年5月に正式発足した『サイバー軍』があります。その傘下では、陸・海・空軍、海兵隊の各コマンドでサイバー戦争に従事する将兵が国防総省直轄で動いています」(志村氏)

重要インフラを狙ったサイバー攻撃は甚大な被害をもたらす危険性があるため、アメリカはその予兆が見られる場合、「サイバー先制攻撃」を行なう可能性も公言している。

またアメリカのみならず、EUなどの先進諸国でも、すでにサイバー攻撃、サイバー防衛を念頭に置いた組織を次々と設立している。現代はまさに“サイバー戦争”の時代なのだ。

(取材・文/本誌軍事班[協力/世良光弘] 興山英雄)

■週刊プレイボーイ11号「中国が巻き起こす『世界サイバー戦争』の全貌」より