サッカーや野球などの試合後、活躍した選手にレポーターがマイクを向けてインタビューしている時に、「そうですね、○○○○○○○○」「そうですね、××××××××」と、やたら「そうですね」が多くて、気になってしまう人は多いのではないでしょうか。

 三浦しをん氏も、最近気になって仕方がない言葉感覚があると、書籍『お友だちからお願いします』のなかで明かしています。それは、「そうなんですね」。

 たとえば、膝に大きな絆創膏を貼った三浦氏が「先日、人混みのまっただなかですっ転んでしまいましてね。いやあ、マヌケでした」と少々の照れを含みつつ説明した場合、三浦氏が期待する相槌は「そうなんですか」「そうですか」「そうですね」です。しかし、ここで、「そうなんですね」なんて言われると、どうも気が抜けるというか、肩すかしを食らうというか、尻の座りが悪くなるそうです。

 「『か』より『ね』のほうが語感が柔らかい。曖昧に、角の立たぬような相槌を、と心がけている意図はわかる。しかし、ズバッと抜き放たれた刀が実は麩菓子であったような、上半身はスーツの上着を着てネクタイを締めているのに、下半身はパンツ一丁に脛丈ソックスを穿いていただけの姿で待ち合わせの場所に現れるような、はなはだこちらの気を殺ぐ相槌で、逆に『馬鹿にしてんのか、こら!』とつかみかかりたくなる」(三浦氏)

 そんな三浦氏は、糸井重里氏監修の『オトナ語の謎。』で「そうなんですね」の解説を見つけたそうです。「そうなんですね」は、実はオトナ語で、会社などで円滑にコミュニケーションをとるために自然発生した言いまわしと紹介されていました。

 それを知った三浦氏は、「そうなんですね」を使う人は、自分に対して円滑な人間関係を築こうとしてくれているのだ、と考えるようになり、つかみかかるのをグッと抑えるようにしているそう。

 とはいえ、会話のテンポを考えると、「そうなんですか」「そうですか」と返ってきた方が、話し手もノってくるような気がします。皆さんも、どうしても許すことのできない他人の言語感覚があるのではないでしょうか。



『お友だちからお願いします』
 著者:三浦 しをん
 出版社:大和書房
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