都民32万の署名を否決した都議会のあきれた言い分

写真拡大





原発稼働を問う住民投票条例案が都議会によって否決


民意がないがしろにされていいのだろうか。


「みんなで決めよう『原発』国民投票」と言う団体が原発稼働の是非を問うための住民投票条例を東京都に請求していたが、同条例案は都議会総務委員会によって否決された。



都民から32万筆もの署名が集まった意味は何か。それは、単に原発の再稼働を阻止するためのものではない。福島第1原発の事故が発生するまで、多くの人が原発に対して思考を停止していた。ならば、住民投票をきっかけにして、原発について学習し、議論し、稼働の是非をじっくり考えよう。それが、32万筆の署名の意味だといえる。



反対した自民党と公明党の意見が笑える(いずれも都議会の会派)。6月19日付の東京新聞によれば、自民は「電気を頼る東京が、立地地域の存立に甚大な影響を与える判断をするのは慎むべきだ」「多岐にわたる課題の最適な解決策を編み出すには、国民的討議を経て、国が全体を俯瞰(ふかん)したエネルギー戦略を構えることが最も重要だ」と述べる。



他県に電気を頼っているから、原発に対する関心が薄かったのではないか。その教訓として、電力を頼る側と頼られる側が『原発』を媒介にしつつ、電力の未来図を考えていこうというのが同条例案の目的のひとつだと言える。また、国のエネルギー戦略がもはや信用できないからこそ、地方の声を積み重ね、戦略の舵取りを国民自身で行おうという話になったのである。


政党が決まって持ち出す「国のエネルギー戦略」


他方、公明は「都民投票は原発稼働の是非を二者択一するもので、多様な都民の意思が正しく反映されない」「原発稼働は国のエネルギー戦略など多様で複合的に考慮すべきだ」などとした上で、免罪符のごとく「原発に依存しない社会を目指し、新しい原発着工を認めないなどして次世代に安全安心を引き継ぐ」などと述べている。



こういうのを話のすり替えと言う。要は二択を否定しているわけだが、そもそも総務委員会で同条例案を可決するか否決するかという議論が二択なのだから。自分らは二択がオッケーで、都民の二択にダメ出しをしても、説得力は皆無であろう。そして、公明も自民と同じく「国のエネルギー戦略」を持ち出す。さらに、同条例を否定した上で、コメントの末尾で脱原発をほのめかしている。



では、同条例案は6月20日の都議会本会議でも否決されるのであろうか。2012年6月18日付のMSN産経ニュースは、「都議会本会議で可決の可能性も否定できず」としている。一方、6月19日付の東京新聞は、「反対が過半数を占め否決される見通し」と記す。ぎりぎりのところで、都民32万人の民意をくみ上げるのか。それとも、切り捨てるのか。本会議の動向に注目したい。





(谷川 茂)