西武から帆足をFAで獲得したソフトバンクは、人的補償を西武が求めてくる場合に備え。28人のプロテクト選手を西武に通達した。西武はこの28人を除外したソフトバンクの選手の中から1名を指名することができる。ほしい選手がなければ、金銭補償の上積みをソフトバンクにもとめることができる。

現役唯一の三冠王、松中信彦がこの28人枠から外れていたことが明るみになった。多村仁志も外れたとの報がある。

松中信彦のデータはこちら

エース級の3人が抜け、遊撃の川崎も抜けたソフトバンクは、戦力的に大きな危機を迎えているが、こと外野手に限っては内川の加入に加え、長谷川、福田の成長によってベテランの居場所がなくなっている。松中、多村の出場機会は今年、かなり減ると予想されていた。

思い切った施策ではある。1997年からホークス一筋。三冠王も獲得し、MVP2度、ベストナイン5度。ソフトバンクのみならず球界の至宝と言っても良い選手だ。またあと269安打で2000本安打。2000本安打まではプレーさせるというのが、これまでのNPB的な考え方だろう。戦力的に急落した金本をだらだらと優遇する阪神タイガースには、こんな真似は出来ないだろう。

しかし、私はソフトバンクのこの決断を是としたい。選手は実績ではなく、現有戦力で評価すべきである。実績に対しては十分に敬意を払う必要はあるが、それはあくまで金銭や待遇面そして称賛の言葉であるべきで、出場機会やポジションであってはならない。力が落ちれば後進に道を譲る。これが原則だ。

松中はさすがに気落ちしていたようだ。フランチャイズプレイヤーとして選手生活を全うするのは、野球選手のひとつの「夢」だ。気持ちはわかるが、悪いことばかりではない。西武は中村剛也という大砲がいる。また中島裕之も帰ってくるが、ソフトバンクに対抗するには長距離打者がもう1枚ほしいところだ。外野も栗山は盤石だが、他の二つは秋山、坂田、熊代、高山、佐藤らがしのぎを削っている。松中はこの中へ入って存在感を示すことも可能だ。

大選手が選手晩年に移籍してもうひと花咲かせるケースは少なからずある。松中は、気を取り直して、新たなチャンスを与えられたと思えば良いと思う。