除染作業を終え、演奏会もスケジュールどおりに開催(写真は、「軽井沢大賀ホール」のホームページ)

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長野県軽井沢町にある音楽ホールと幼稚園の敷地内で、1時間あたり2マイクロシーベルトを超える、比較的高い放射線量が計測された。

芸術の秋で多くの観光客が見込める時期が時期でもあり、事故のあった福島第一原子力発電所から約250キロメートル弱も離れた観光地での計測結果に、ドキッとしている。

「大賀ホール」すでに除染済み

音楽ホール「軽井沢大賀ホール」は、ソニー名誉会長で自らも指揮者、バリトン歌手だった故・大賀典雄氏が軽井沢町に寄贈したコンサートホールで、3年に1度の軽井沢国際オーボエコンクールをはじめ、毎年数々のクラシックコンサートや音楽祭が開かれている。

そんな大賀ホールで2011年10月19日、軽井沢町がホールの屋根から雨水が落ちる11か所の地表5センチ付近を計測したところ、このうち2か所で1時間あたり2.8マイクロシーベルトと1.18マイクロシーベルトの放射線量を計測した。

これを受けて、大賀ホールではさっそく深さ10センチほどの砂利を除去し、泥を洗って新しい玉砂利などを敷いて除染。「当ホールには雨どいがなく、水はけの悪いところに雨水が溜まり、そこ(の放射線量)が高くなったようです。来場の方が心配するとよくないので、すぐに砂利を入れ替えました」という。入れ替え後の放射線量は、0.20マイクロシーベルトと0.10マイクロシーベルトに下がった。

10月22日には「東日本大震災復興支援 イ・ムジチ合奏団」の演奏会が予定されていて、チケットは完売。一時は開催が心配されたが、それを早めの対応で回避した。

じつは町が計測する前日に、佐久市に住む会社員の男性が独自に計測したところ、地上1メートルの位置で毎時0.63マイクロシーベルトという、町が定点で測っている0.04〜0.06マイクロシーベルトを上回る高い放射線量を計測していた。この男性が町に連絡した。

男性は長野県東部を計測して歩いているらしく、大賀ホールは「事前に指摘を受けたことで、早めに(除染作業が)できました」と話す。おかげで、心配されたスケジュールの変更もないという。

6月から小・中学校などで測定

一方、軽井沢幼稚園の敷地内では、通路にある雨どいの排出口付近で毎時2.2マイクロシーベルトが計測された。幼稚園では園庭の一部と排出口付近の通路を立ち入り禁止にし、除染することにしている。

軽井沢町は6月から、軽井沢病院や小・中学校、保育園などの子どもが多く集まる施設を中心に定点測定(地表1メートル付近)を続けているが、10月20日時点で「他の場所では計測されていない」(町教育委員会)としている。

19日の計測も、念を入れて、もう1か所の幼稚園も測定。こちらは高い数値は計測されなかった。

町教育委員会は「(原発から)250キロ弱の距離ではあるが、すぐ隣の群馬県では影響が出ているし、小・中学校などの施設を安心して利用してもらうために、これまで計測してきたし、これからも計測していきます」と話している。

事態が広がる前に早めに対処できたことで、ひとまず胸をなでおろしている。