出生異常・学習障害・視力障害などの原因に、法律で禁止されないのが不思議なイトコ婚の実態
いとこ同士の結婚、いわゆる「イトコ婚」というと、昔の王侯貴族に限った話だと思う人もいるかもしれませんが、イトコ婚が法律により禁止されていない日本では、比較的最近の著名人でも作家の故色川武大(阿佐田哲也)氏と孝子夫人や菅直人首相と伸子夫人など、イトコ婚をしている人は意外とたくさんいるようです。
ほかの国でのイトコ婚の扱いを見てみると、アメリカでは州によりイトコ婚が禁止されている州(25州)とそうでない州がありますが、イギリスでは特に禁止されていないとのこと。しかし西側諸国ではどちらかというとタブーとして見られる傾向があり、逆にイスラム圏など、イトコ婚がむしろ好ましく見られる地域もあるそうです。近年になってパキスタン人などの移民のコミュニティでイトコ婚が増加傾向にあるイギリスでは、年間700人ものイトコ婚による子どもが遺伝子疾患を持って生まれてくるというショッキングな実態が判明しています。
パキスタン系イギリス人は、半数以上がいとこ同士で結婚し、パキスタン人の子どもが遺伝子疾患を持って生まれてくる確率は一般集団の10倍も高いとのこと。
イトコ婚にまつわるリスクには、生まれてくる子どもの幼児死亡率や、出生異常(先天性欠損症)・学習障害・視覚障害・聴覚障害・代謝異常などの確率が高まることなどが挙げられます。また、イトコ婚で生まれた子どもが大人になると、不妊であったり流産をするリスクが一般に比べ高く、5歳の誕生日までに1/3の子どもが亡くなるそうです。
チャンネル4のドキュメンタリー番組「Dispatches」の調査では、イギリスで行われた70以上の研究でイトコ婚のリスクが証明され、毎年700人ものパキスタン系イギリス人の子どもが遺伝子疾患を持って生まれてくるにもかかわらず、人々がこの危険を無視しているという実態が浮き彫りになりました。
労働党のKeighley地区選出のAnn Cryer元国会議員は、この問題に光を当てようとしたため、さまざまな抵抗を受けたそうです。
「これは公衆衛生上の問題であり、肥満や薬物依存、アルコールといったほかの問題と同様に、国民の関心を高め、議論することによって取り組むべき問題なのです。しかし、なぜか、イトコ婚については『デリケートな問題なので触れるべきでない』と言われてしまいます」とAnn Cryer元国会議員は語ります。「おかしなことです。解決策を見つけるためには、まず話し合うべきなのですから」
調査により、過去30年間にイギリスでのイトコ婚の数は劇的に増えていることが明らかになっています。この増加に貢献しているのは主にパキスタン系イギリス人同士のイトコ婚ですが、人口の1/4近くがいとこ同士で結婚するというバングラデシュ系や、中東や東アフリカ出身者のコミュニティーのいくつかでもイトコ婚が多く見られるそうです。
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