サークルKサンクスで内部紛争が勃発している。東京都9区と千葉県でコンビニエンスストア「サンクス」を展開するエリアフランチャイザーのシー・ヴイ・エス・ベイエリアに対し、サークルKSが訴訟を提起しているのだ。

 ベイエリアは昨年2月、サークルKSに契約を解消したいとの意向を示した。同時に他チェーンへの参画も示唆したという。しかしサークルKSは、そもそもベイエリアには中途解約権がないことや、競業(サンクス以外のコンビニの運営など、営業上の競争を招く行為)避止義務があることを主張。これらに対する両社の解釈は平行線をたどり、協議が続いていた。

 そんななかの今年4月、ベイエリアは奇策に打って出た。昨年11月に同社が開業したビジネスホテルの1階の物件を、ローソンに賃貸したのだ。賃貸契約ならコンビニの運営にベイエリアはかかわらないため、問題がないとする。しかしサークルKSはこれに憤慨。訴訟にまで発展した。

「サークルKSは、先々の方向性を見出せていない。それを見出せる経営者がいない。他チェーンの後追いばかりしている」(泉澤豊・ベイエリア社長)。ベイエリアの昨年度の既存店売上高は、前年度比6・3%減と苦しい。「競争力がないから売り上げが減り、営業利益率が毎年落ちている。だいたい、流出して困るほど重要な情報などもらったことがない」(同)。

 一方、サークルKSは、ベイエリアの事業拡大はサンクスのシステムやノウハウなどがあってこそ可能だったのであり、“くら替え”はそれらの流出につながるという。

 ベイエリアの店舗の約9割が直営店なのも懸念事項だ。直営店の場合、加盟店には必要な説得がいらず、看板替えが一挙に進んでしまうからだ。ベイエリアの店舗数は127店だが、出店が特定地域に集中しているため、ブランドイメージの毀損や、物流効率の悪化などの損害を招く可能性がある。

 ベイエリアが離脱したとしても、サークルKSの業績に与える影響はそれほど大きくない。ただし、将来への影響は楽観視できない。

「ベイエリアの中途解約が許されたら、サークルKSは崩れる」(コンビニ大手幹部)。サークルKSには、出資比率が19%と低く、同社の影響力の弱いエリアフランチャイザーがまだ6社ある。ベイエリアの“くら替え”が認められ、その後業績が好転すれば、加盟店の説得などの壁があっても心が揺らぐ企業が出る恐れはある。

「サークルKとサンクスが合併してから、コミュニケーションが悪くなった気がする。それに、有利なほうへ流れるのは当然」(エリアフランチャイザー)なのだ。

 ベイエリアとの争いの行方は、もはや当該者間の問題だけにとどまらない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


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