21日のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝ファーストレグで、バイエルン・ミュンヘンがホームでリヨンに1―0の最少スコアながら先勝した。

 両チームから1人ずつの退場者を出す荒れ模様の展開となったこの試合。元レキップ紙の記者で、フランス屈指の売れっ子コメンテーターとなっているピエール・メネス氏が試合後、自身のブログで「どう始めたらいい?」と困惑しながら書き出すほど、奇妙な一戦だった。

 序盤は相手に探りを入れるような硬さが見えたものの、双方が持ち味を発揮し、まずまずの内容だった。未成年買春疑惑の渦中に立たされたリベリ(バイエルン)も、それをまったく忘れているかのようなスピーディーな切り込みを見せた。

 試合前は下がり気味でカウンター狙いで行くと予想されたリヨンも、中盤にマクーンでなく、リーグ前節で好調だったエデルソンを起用し、攻撃性を重視したアグレッシブさが見えた。

 しかし前半36分、試合に転機が訪れる。汚名返上をかけて気合いが入りすぎたのか、リベリがリサンドロ(リヨン)に対して危険なタックルを見舞い一発退場。それまで押し気味だったバイエルンがはやくも数的不利に立たされる。

 後半開始早々、中継局のTF1にベンチでインタビューを受けたリヨンのピュエル監督は、「こういう(相手に退場者が出た)状況では、審判がバランスを考えて、こちらにカードを出しやすくなる。ファウルに気をつけなくてはいけない」と語っていた。

 ところが5分にも満たない間にトゥララン(リヨン)が2枚のイエローカードを受け(51分、54分)、たちまち10人対10人のイーブンになってしまう。メネス氏も「ふだんは冷静なトゥラランがなぜ? まったく理解不能」と言葉を失っている。一枚目のイエローカードによる次戦出場停止で、頭に血がのぼったのかも知れないが、チームの中心選手として「いちばんやっていはいけないミス」を犯してしまった。

 守備の柱を失ったリヨンは、ハーフタイムの監督の指示の重さを噛みしめたのか、ファウルをおそれ一気に消極的になった。一方、いったんはオリッチを下げてティモシュクを入れるなど守りに入ったファン・ハール監督は、一気に攻撃をたたみかける戦術へと切り替える。

 防戦一方のリヨンに対し、およそ7割というボール支配率で虎視眈々とゴールを狙うバイエルンに先制のチャンスが開けるのは時間の問題だった。リヨンが同点に追いつけなかったのも当然の帰結。メネス氏は「非常に悪い試合運び。何とも後味が悪い」とリヨンを責めてブログを結んでいる。

 数字的には、ホームでセカンドレグを迎えるリヨンが完全に不利になったわけではない。しかしこの日の試合内容を見るかぎりでは、バイエルンの優位は明らかだ。センターバックの控えがいないリヨンにとっては何よりトゥラランの出場停止が痛い。ピュエル監督もレキップ紙に「持ち直せるか心配」と正直な胸の内を表している。

 リヨンの選手たちは試合後、口々に「言い訳にはならない」と語ったが、アイスランド火山噴火の影響による飛行機の欠航で、この4日間におよそ2000キロを陸路で移動するという異常な状況にあったのもたしか。6日後の次戦に備えて、体力を回復し、戦術も含めて完全に頭を切り替えることが重要だ。